51. 魔の森での戦闘(エルミー編)
今回も戦闘シーンです。苦手な方はスルーしてください。
エルミーは森の中を走っていた。
(森の中は、私にとって、とても落ち着ける場所です。
草花の香り、土の香り、葉の擦れる音、鳥や動物たちの鳴き声。
最近は、街のにぎやかさも好きになってきたが、やはり森にはかないません。
しかし、その森が、最近騒がしいのです。
最近は精霊の数も減っていて……森が苦しんでいるように感じるたび、胸が締めつけられます)
エルミーは、精霊たちに事情を話し、
討伐対象や、若い冒険者を見つけてほしいとお願いする。
精霊たちは、きゃっきゃと喜びながら、「まかせて~!」とやる気満々だ!
風の精霊は「行ってくるねー!!うきゃーー!」と言って、もう飛んで行った。
土の精霊は「まーかーせーてー」と、いいつつ、のんびり私の足元でころんころんと遊んでいる。
(早く行ってほしいのですが……)
エルミーは、エルフと人間のハーフ。
エルフの血が濃いせいか、森の気配がよく分かる。
森との親和性も高いせいか、
精霊との親和性も高い為か、精霊が見え、会話もできる。
力を借りて戦うこともできた。
精霊の力を借りて戦える者は、精霊との親和性が、ある一定値まで高まると、
精霊が契約してくれるという。
(契約精霊って……自分だけの相棒みたいで、ずっと憧れているのです。
私にはまだ、契約精霊はいませんが、いずれは出会いたいものですね)
森の中を見ると、多くの精霊がいる。
(まわりにはこんなに精霊がいるというのに、
一人くらい私の契約精霊になってくれても、
よいのではないかと思うのですが……。
しかしそれは私がまだ未熟だからなのでしょう。
精進しなければ)
そんなことを思いながら森を走っていると、急に精霊の声が聞こえてきた。
「エル!あっちに魔物の群れがいるよ!」
「ありがとう!案内お願い!」
「いいよー!こっち!こっち!」
精霊の後を走ってついて行き、
気配が濃くなってきたので、私は枝へ軽く跳び乗った。
魔物の種類はこの浅い場所でもよく見る魔物だ。
ただ……。群れになっていた。
「アサルトボア。
突進力が強く、群れになると被害が出やすい魔物です。
……数が多いですね。20匹ほどでしょうか。
……3分の1以下には減らしたいですね……」
距離を確認し、弓を構える。
ここからならあの魔物も、私のことを感知できないでしょう。
風の精霊たちが、葉っぱのようにひらひら舞いながら、
エルミーからのお願いを期待して周りを飛び回っていたり、
私の弓にまとわりつきながら『さーいくぞー!突撃だー!』と今か今かと騒いでいる。
「風の精霊よ、力を貸して!」
エルミーが弓を引き絞った瞬間、
風の精霊たちが『待ってました!』とばかりに一斉に動き出す。
「まかせてーっ!」
「いっくぞー!」
「エルの矢、速くするよーっ!」
「あはははははっ!!」
矢にはりついていた風精霊たちが、きらきらと光をまとわせる。
エルミーは息を整え、静かに放つ。
「――風矢・穿通ッ!」
矢が放たれた瞬間、空気が裂ける音が響き、 風の軌跡が一直線に残る。
放たれた矢は、風を裂き、アサルトボアの額へ一直線。
命中した瞬間、風精霊たちが「ひゅんっ!」と加速をかけ、
矢はそのまま二体目のボアの肩まで貫通した。
「やったー!二匹いっぺんに倒したー!」
2人の風の精霊が「いえーい!」と両手を挙げてハイタッチする。
精霊たちが嬉しそうに跳ね回る。
「風矢・連閃ッ! 風矢・連閃ッ!」
高速で複数の矢を連射し、
風の刃をまとった矢が、空へと吸い込まれるように舞い上がる。
風の妖精が空でくるくる踊っている。
すると、次々に矢が重力と風魔法による加速により、
雨のように降り注ぎ、アサルトボアたちは次々と倒れていき、
ふいに進路を変え、魔物に襲い掛かる。
風精霊たちは楽しそうに矢の軌道を補助し、
土の精霊たちは足元で「がんばれー」と跳ねて応援している。
「いっけーっ!」「そこだっ!」「ひゅるるるっ!」
……なぜか精霊たちの掛け声が一番元気だ。
数十秒後――
「……よし、3分の1以下まで減りましたね」
エルミーは弓を下ろし、息を整える。
「精霊のみんな、ありがとう。助かりました」
「えへへー!」「もっとやるー!」「次いこー!」
精霊たちはまだ元気いっぱいだ。
(精霊たちといると、元気が出るな)
エルミーは再び森を走り出す。
突如、風の精霊が肩の上に乗ってきて、
頬をつんつんしながら「こっちこっち!」と指さす。
その先で――
若い冒険者が、
グローウルフの群れに飛びつかれそうになっていた。
(あの牙で噛みつかれたら、若い冒険者ではひとたまりもない)
「どうか間に合って……!」
エルミーは木の上へ跳び乗り、
弓を構え、矢を連続で放つ。
「風矢・連閃ッ!」
矢が連続で地面へ突き刺さり、
若い冒険者とグローウルフの間にいくつもの矢が突き刺さった。
グローウルフたちは驚き、後ろへ飛び退き、周囲を警戒している。
若い冒険者は、いくつもの矢が刺さる音と、
グローウルフが静かになったことで振り返り、誰かが助けてくれたことに気づく。
エルミーは木の上から声をかける。
「大丈夫ですか!
私はA級冒険者パーティー『銀翼のフェンリル』のエルミーです。
加勢しますか?それとも私に任せますか?」
「か、加勢をお願いします!!」
「分かりました。風の精霊、手伝って!」
「はーい!」「いっちゃうよー!」「まかせてー!」
風精霊たちがエルミーの周りに集まり、
髪がふわりと揺れ、光がきらきらと舞う。
エルミーは木から飛び降り、走りながら矢を放つ。
「風矢・連閃ッ!」
「風矢・穿通ッ!」
木の上へ跳び移り、
枝の上から角度を変えて射抜く。
風精霊たちは矢を押し、
土の精霊は足元で「がんばれー!」と跳ねている。
グローウルフたちは次々と倒れ、
最後の一匹が逃げようとした瞬間――
「逃がしませんよ!」
エルミーは、弓を引き絞り、矢を放つ。
「風矢・穿通ッ!」
矢が放たれた瞬間、
空気が裂ける音が森に響き、 風の軌跡を一直線に残しつつ、
グローウルフの背に深く突き刺さり、動きが止まり、崩れ落ちた。
戦闘が終わると、若い冒険者たちは呆然とエルミーを見つめていた。
森の木漏れ日がエルミーに当たり、
風精霊が楽しそうに髪をもて遊んでいる。
見えぬものには、風が髪を遊ばせているように見えた。
髪が光にあたり、きらきらと舞う。
その中性的な容姿、
細身だが、弓を力強く引く時に見られるしなやかな腕の筋肉、
高身長で、穏やかな話し方。
それなのに、戦闘は強くて、何者からも守ってくれそうな安心感。
その姿はまるで――絵画のようだった。
「……すごい……」
「……美しい……」
「精霊魔法なんて初めて見た……。でも精霊は見えなかった……」
「弓が……速すぎて見えなかった……!」
「……素敵……」
一人の冒険者は涙を流しながら、
「助けていただいて……本当に……ありがとうございます……!」
別の冒険者は震える声で、
「弓の……弓の練習、教えてください……!」
エルミーは優しく微笑む。
「皆さんが無事でよかったです。
魔石と死骸は持てるだけ持って帰ってください。
私はまだ依頼遂行中ですので、少しでも収納袋の容量は開けておきたいのです。」
「あ、ありがとうございます!」
「帰り道も危険ですから、回復ポーションを飲んでから帰ってくださいね」
『ありがとうございます!』
冒険者たちは深く頭を下げ、森の入口へと走っていった。
エルミーは再び森を走り出す。
途中、浅い場所にはいないはずの巨大な蜘蛛の魔物を風精霊が発見。
ちなみに土精霊が服の裾にぶら下がって揺れながら喜んでいる。が、気にしない。
「……あなたは、ここにいていい魔物ではありませんよ」
木の上へ跳び、矢を引き絞る。
風精霊たちの中から、一人「今度はぼくがいく!」と意気込んでいる子が出てきて、
矢に触れて力を込めてくれる。
エルミーは矢を放つ。
「風矢・穿通ッ! 風矢・穿通ッ!」
蜘蛛は糸を吐き反撃するが、
エルミーは風精霊の加速でひらりと避ける。
最後に、
「蒼風・断ち矢ッ!」
矢が“蒼い刃”のように変質し、
蜘蛛の魔物の硬い外皮も一撃で切断した。
「やったー!」
「エルすごいー!」
「やっつけたー!」
エルミーは息を整え、森を見渡す。
「……まだまだ、森を守らないといけませんね」
風精霊たちが肩に乗り、
土の精霊が裾からぽとりと落ち、足元でころんと転がる。
「エル、次いこー!」
「まだまだ暴れたりないよー!」
「次も、まかせてー!」
風精霊の一人が勢い余って木にぶつかり、ぽすんと落ちた。
「いたた……でもいくー!」
「慌て過ぎだー」「あはは~!」
エルミーは落ちた風精霊を両手ですくい肩に乗せる。
他の風精霊が引っ張って肩に乗せてあげている。かわいい……。
土の精霊たちは、ポケットに入ってご満悦。
「ふふっ。一緒に行きましょう」
エルミーは精霊たちの力強い言葉と可愛さに微笑み、再び走り出した。
「はい。行きましょう。
森を守るために、人々を守るために――」




