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4. 大樹 世界の狭間で目が覚める

ここはセリシアとの世界の狭間。


八重が静かに眠っているところから、だいぶ離れた場所に

突然、ひとりの男性が現れた。


男性(大樹(だいき))は眠っていた。

気持ちよさそうに。

しばらくすると、大樹(だいき)の意識が浮上してきた。

目を覚まし、起き上がってまわりをみわたす。


「ここは……どこだ?」

大樹は思わず声を漏らした。


(たしか、自分は死んでしまって、

その後は……。

ここと違うところにさっきはいたような気がするんだが、

よく思い出せない。


気づいたら、ここで寝てた。

見渡す限り、床は雲・雲、どこまでも雲。

上を見上げると、ずっと青空。


肌を撫でるような心地よい風が吹いている。

状況が飲み込めず、周囲を探るように歩き出したそのとき――

まるで“中世ファンタジーの絵画から抜け出してきたような男神”が立っていた。


透き通るように白い肌。

銀色の長髪は風に揺れ、光を受けてきらめく。


足元が見えないほど長い白い衣をまとい、

髪や首元には上品なシルバーアクセサリーが輝いている。


(……すご。イケメンってこういう人のこと言うんだな。人じゃないけど。神だけど。)

(あ、これ、テンプレってやつだな。転生とか転移の物語に出てくるやつか!)

男神は静かに微笑んだ。

その笑顔すら“神の演出”のように美しく、淡い光をまとっている。


「私はセリシアという世界の創造神、セルシオスと申します」

(創造神って言ってたな……神ってみんなこうなのか?すごい神々しい!)

神ってすげーとセルシオス神をついつい見つめてしまう大樹。


「ここは世界の狭間です。あなたをセリシアへ迎えるために来ました」

セルシオス神は胸に手を当て、気品あふれる笑顔を向ける。


(どんなしぐさでも美しい。ほぇ~。神ってすごい!)

「あ、あはは……ありがとう」

セルシオス神は優しげに微笑み返した。

(え?……あ、心の声聞こえてるのか)

「ええ、わかりますよ。神ですからね。ふふっ」

(やっぱりか……。はしゃいで申し訳ない)

「よく来ましたね、大樹さん。あなたは地球で亡くなりました」

(……やっぱり死んだのか)


生前の記憶を探る。

倒壊しそうな店の中で救助していたこと、

休日で人が多かったこと、

友人たちの顔――

ぼんやりと浮かんでくる。


セルシオスは静かに答えた。

「あなたの起点のおかげで、あなた以外は助かりましたよ」


(……あいつら助かったんだな)

友人たちの顔が浮かぶ。


泣きながら「お母さんがー」と抱きついてきた子供と、

その子供と一緒に助けた母親の姿も。

(あの親子も無事だったんだ……よかった)

「そうか……みんなを守れたのか。それならよかった」

胸の奥がじんわり温かくなる。


「教えてくださってありがとうございます。安心できました」

うん。そうセルシオス神はうなずき、本題に入る。


「まずは、なぜここに招かれたか説明しますね」

大樹はぺこりと頭を下げた。

(とりあえず礼儀は大事だ)


セルシオスは軽くうなずき、話を続ける。

「セリシアは地球とは違い、“スキル”という経験を核とする力が存在します。

魔法もあり、文化として発達しています。

人間以外にも獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、精霊、聖獣……多様な種族が暮らしています」

(ファンタジー総出演だな……)

「冒険者となって世界を巡り、魔物と戦う者もいます」

(うん、テンプレだな)

セルシオスは少し表情を曇らせた。


「しかしここ500年ほど、セリシアを育む“オーラ”が衰退しているのです。

世界を育む力であり、魔法の源でもあるオーラが……」

淡い光をまとったまま、静かに続ける。

「オーラが衰退すると、魔物の住む領域に流れる“黒いオーラ”が広がり、

魔物の領域がどんどん拡大してしまうのです」


(500年って……だいぶ長いな。そんなにほっといたのか?)

「ええ、いろいろ手を尽くしていたんですよ。

……手を尽くしていたつもりだったのですが……」


セルシオスは少し肩を落とした。

その姿は相変わらず美しい。

(いや、肩落としてもイケメンはイケメンなんだよな……ずるい)


「大精霊たちにも協力を頼みましたし、

神官たちにも注意喚起を出しましたし……

あとは……その……見守っていました」


(見守ってただけじゃねぇか!)


「……結果、悪化しました」


(悪化しちゃったのかー)


「神はね、創った世界に直接手を出してはいけないんですよっ」

と、セルシオス神は強く主張したものの、

しょんぼりと視線を落とした。


(悪化を食い止めたくてもこれ以上どうにもならなかったってことか)

神々しい光をまとっているのに、なぜか哀愁が漂っている。


***


「そのため、この世界と似た生命力と魔力を多く持つ大樹さんに、

セリシアに流れるオーラの補充と強化剤となっていただきたいのです!」

セルシオスは神らしく両手を広げ、堂々と説明した。


光がふわっと舞い、まるで舞台のスポットライトのようだ。

なんか不穏な話になって気がする……。

(オーラの補充と強化剤?俺の魔力?俺、魔力なんて持っていないが?)


「何か特別なことをする必要はありません。

転生した段階で役目は終了します。


あなたの生命力あふれる魔力がセリシアの大気に溶け込み、

衰えていたオーラを元気にし、黒いオーラも減少していくでしょう。

そうすれば、セリシアは再び生命力溢れる世界になるはずです!」


(黒いオーラ……なんか物騒なワードも出てきたぞ…)


セルシオス神はさらに続ける。

「その後は、あなたが生きたいように生きてください。

どんな職業に就くのも自由ですし、

誰かと出会って結婚するのもよし。

魔法、錬金術、回復術、戦闘技術……

何かにのめり込んで、新たな先駆者を目指すのも良いでしょう!」


素敵な未来を語るように、ゆったりと両手を広げるセルシオス神。

その姿は確かに“神様”らしい。

(……生命力とか魔力とかオーラとか、正直よくわからないけど、

なんか楽しそうに言うなこの神様)

少しだけワクワクしてしまった自分に気づきつつ、

冷静さを取り戻す。


「でも、俺は異世界転生はしなくていいかな。

また、そのうち地球で生まれたいし」

大樹は前世の生活に満足していた。


家族にも友人にも恵まれ、仕事も趣味も“まあまあ”。

特別じゃないけど、それが心地よかった。


(俺はあの日常が好きだった。

変わり映えしないけど、それがよかった。

この先も、そうありたい)


「え?」


セルシオス神は本気で驚いた。

セリシアに迎えると言えば

大概“転生だー!わーい!” と喜ばれると思っていたらしい。


「え、剣と魔法の世界ですよ?

魔法が使えるかもしれませんよ?」

セルシオス神は前のめりで聞いてくる。

その目はキラキラしていて、どこか“期待しすぎ”な感じがある。

(いや、そんなに推されても……)


「いいよ別に、使えなくて。

のんびり安定して生きたいんです。

今度は結婚もしたいし。

今回、彼女いたけど……結婚前に死んじゃったし」


セルシオス神はびくっと震えた。

そして、佇まいを整えて説得モードに入る。


「まぁ、そう言わず……!

あなたほどの人材を得られれば、セリシアはより良い世界になるのです。

あなたが必要なのです!」

説得というより、お願いだった。


セルシオスは前のめりになり、手をぎゅっと握りしめて訴えてくる。

美形なのに、どこか必死で、少し残念感が漂う。

(……押し強いなこの神様)


「なんで俺なんですか。

俺じゃなくても、似たような人間探せばいくらでもいるだろう」


「いえ、いません!

やっと見つけたんです!あなたを!!」


セルシオスはキラキラした目で、ずずいと前のめりになり、

体全体から眩しいほどの光を放ちながら言い切った。


(光らせて神すごいアピールしてもだめだぞー)


その表情はまるで“運命の相手を見つけた人”のようで、

美しいのに、どこかズレていて残念さがにじむ。

(いや、そんなドラマチックに言われても……)

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