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39. 元凶と特別な2人

コンコンッ!


「失礼します。お茶と”わがし”というものを持ってまいりました」


ギルドマスターが聞き慣れない菓子の名に反応する。


「”わがし”という菓子の分類の『桜餅』というものだそうです。

冒険者が、カウンターに来まして、

ギルドマスターに感謝の言葉と共に、渡してくれと。」


「どんな冒険者だった?」


「さぁ。わかりません。

”わがし”は受付嬢で味見……いえ、毒見をさせていただきました。

とてもよい香りで、おいしかったですよ。

『桜餅』にも、2種類あって、

こちらが”ちょーめーじ”?、で、こちらが”どーもーじ”?というそうです。」


(ちょう)メイジ?獰猛子(どうもうじ)

なんだか物騒な名前だな。

冒険者らしいといえば、らしいか。

菓子の印象とかなり違うがな!

まさか、そのギャップ狙いの名か?」


「それ、違うんじゃないですか?」


「まあいい、いい香りだ。花の塩漬けか?見た目もいいな。

持ってきてくれた冒険者が礼を言いたいが、

何か気づいたことはないか?」


「んー。普通の冒険者でした。

今回の殲滅作戦でギルマスに命を助けていただいたと言っていました」


「そうか、それだけではまったくわからんな。

受付の者達もおいしく食べたようだし。

数もあるから皆でいただこう。」


受付嬢は思わず苦笑いをする。

「え…えへへっ!」


銀翼達もいただくことにする。

「「「「「はい!いただきます!!」」」」」


ジークがうなずく。

「うん、これは…優しい甘みで美味しい。疲れた体に嬉しい甘みだ。」


「だな!これははじめて食べたぜ!うまい!

アレクとヒナ、これ絶対好きだな……。

あとで、ちびたちにも食べさせてやろう!

リオンもちびたちと一緒にくうよな。今、ちびたちにくっつかれて食べれねえだろ」

そう言うと、3人分を分けておいてくれた。


「オルガ、ありがとう。助かる」


エルミーも驚いた顔で食べている。

「これは、豆の自然な甘さがよいですね。花の塩漬けもアクセントになって実によいです。」


フリードもはじめての味に興味津々。

「うわー!これ、もちもちしてる!なんだこれー!

これ、はじめてたべたよ。どこの国のお菓子だろうねー。

その国の他のお菓子も見てみたいねー」


クロムも興味津々で見ている。

「クッキーもいいけど、これは2人に受けそうだ。

でも、あまり食べると虫歯になりそうだから、ここぞという時ようだな。

その冒険者が誰か分かったら作り方を教えてもらおう!」


ギルドマスターも桜餅を食べ、お茶を飲む。

「……甘いものはあまり食べんが、これは……うまいな。

あ……。それに、この『桜餅』には、お茶がとても合うなぁーー」


ふぅ~~~~~~。


それぞれがお茶を飲んで一息つく………。


その余韻を楽しむ、穏やかで静かな時間………。


「い、いかん!!これからまじめな話をするんだった!」

一番はじめに現実に戻ったのはギルマスだった。


受付嬢は和菓子の皿をさっと片づける。

「3人分は、包んでおきますね。では、失礼いたします」と、

ギルドマスター室を出て行った。


***


「まずは、今回の辺境の地と、フォレット近くの森と、

殲滅戦での活躍、本当に助かった。

心より感謝する。」


そういうと、ギルマスは頭を下げた。


「いえ、こちらこそ、アレクとヒナを預かっていただき、

ありがとうございました。

おかげで安心して戦うことができました。」


ギルマスが続ける。

「あの子らは本当によく頑張ってくれたよ。

後でご褒美を上げないとな……。


さて、本題に入ろう。

今回の魔物騒動の原因だが、魔の森の奥の黒いオーラが原因と思われる。


黒いオーラが魔物に取り付き、魔の森の外へ攻撃を仕掛けてきた。

俺はそう考えている。」


ジークは心当たりがあった。

「黒いオーラと変異個体の話は聞いたことがあります。

大まかに2パターンあると。

変異種がさらに変異した個体で、黒いオーラを自ら作り出す魔物と、

黒いオーラに取り付かれて強制的に変異個体になるものがあると。」


「そうだ。今回は後者の方だ。

黒いオーラをつくりだす個体は、森の最奥にいて動かず、

誰にも邪魔されることなく、黒いオーラを作り続けている。


そして、その作り出された黒いオーラは、森そのものを蝕み、

黒いオーラに耐えられた魔物は強化し、耐えられない魔物は生命を奪われる」


クロムは、ふと気になったことがあった。

「前に辺境の街の近くに出た魔物。

あれは、黒い霧をまとっていた……。

斬りかかっても黒い霧は取り付いてこなかった。

その黒い霧と黒いオーラはどう違う?」


オルガが「確かに!!切り付けてもあの時は大丈夫だったな」と手を打つ。


「あれは、通常の魔物が、変異個体に自力でなった時に、一時的に出るものらしい。

変異個体になると、一気に体が変異し、その変異するための力が漏れ出ているものが『黒い霧』とされている。

また、変異個体になって、長い月日が経ち力を付けた変異個体が黒いオーラをつくりだす個体に変化すると考えられている」


オルガは怖い怖いと肩を震わせる。

「あれで変異個体に成りたてだったのかよ。」


眉間にしわをよせたオルガがため息をつく。

「根本の原因に、誰も手を出せないってことか。

森の最奥なんて黒いオーラが充満していそうだ。

触れられない以上、俺たちでも難しい。

あいつは黒いオーラを好き放題作れるってことかよ」


「そういうことだ。

ただ、大量には作れないようだから、そこが救いではある。

このところ、アレクとヒナがこの世界に送られてきたことで、

一時的に黒いオーラの活動が落ち着いたようだったが、

また少しずつ動き出したようだ」


エルミーは森との親和性高い。

森が傷つくのは心が痛いようだ。

「何か、対抗策はないのですか?」


ギルマスがその質問にうなずく。

「今回の問題の一つはそこだ。

現在、大陸の3ヵ国での共通認識は

『黒いオーラには触れられない』

『そのため、森の奥へも行けない』

『対処ができない』

という、状態()()()。」


そこで銀翼は気づいた。

「「「「「だった……か。」」」」」


ギルマスは神妙な顔でうなずく。

「そうだ。ヒナの存在だ。

今まで対処することが出来ずにいた

この状況をひっくり返すことが出来る存在。


あの小さな体には、

世界を変える大きな力があるんだ。」


オルガが思わずつぶやく。

「やべーじゃん……」


「そう。これはここだけで抱えられることではなくなってしまった。

大陸全体に関わることであり、この世界に関わること。


これは、とても慎重に進めなければならない。

下手をすると、ヒナをとりあげられ、ヒナはあの年でこき使われることになる」


静かに聞いていたフリードが口を開く。

「ヒナがオレらの家族だ。誰にもわたさない!

ヒナが行かねばならなくなったら、俺も一緒に行く!!!」


その言葉にジークも頷く。

「フリードの言うとおりだ。

ヒナは俺らの家族だ。絶対に渡さない。

いざというときは、銀翼はヒナを守りつつと共に行動する」


銀翼のパーティーとリオンは

その言葉に皆うなずく。


ギルドマスターはため息を一つつく。

「わかっている……。

そうならない為に、慎重に動くつもりだ。

まずは、ここいらの領主の辺境伯に話をする。


あいつは俺の昔のパーティー仲間だ。

信頼できる。

そいつと相談してみる。


そしてもう一人。

王都のグランドマスターにも話をしなければならん。

彼とは何度も話をしたことがあるが、信頼できる人だ。

うまく動いてくれるだろう」


ジークはギルドマスターの話にうなずく。

「わかった。

その辺は俺らではどうすることもできないから、

ギルマスに任せるよ。

手間をかけて悪いが、よろしく頼む」


「ああ。任せておけ。

だが、一つ間違えるな。

ヒナは、この世界の希望だ。

その力が覚醒したことは、

我々にとって、また世界にとっても喜ばしい事なんだ」


「そうですね。さすが、世界の愛し子ということですね」

エルミーがヒナを見つめながらつぶやいた。


「あとな、アレクの事も、実はこれも大変なことなんだ」


「アレクも?回復魔法の事か?」


「そうだ、しかし、あれはただの回復魔法ではなかった。

欠損をあっという間に修復した。

そう、クロムのようにな。あの年で。


欠損回復が出来る回復師はとても少ない為とても貴重だ。

あの年でそれが出来ると分かると、

攫おうとするものが出てくるかもしれん。


その上、アレクの回復魔法は、金色なんだ。

『金色の光は、ただの回復ではなく“祝福”のように見えた』

という冒険者もいた。


ただの回復魔法とは思えない。

まだ不明だが、何らか別の作用もあるのかもしれん。


それに、これからの黒いオーラとの闘いには、

やはり必要不可欠とされるだろう。


そうなると、兄妹だし、一緒に引き抜こうとするものが出てきかねない。」


フリードは、もうムリとばかりに、頭を抱える。

「だーーーっ!!もう!なんだよ!それならいっそ、内緒にできないのかよーー!」


ギルマスは顔を横に振る。

「それは無理だろう。

大勢の前でどちらも力を使った。

ここの冒険者以外もいただろうし、街の者達もいただろう。

この街の者達ならアレクとヒナを思って口をつぐんでくれるかもしれんが、

しかし、街以外の物や、殲滅作戦で参加したものの中には、

どこかの貴族の手の者が紛れていてもおかしくない。


そこで、『そんな存在はいなかった』と言っても、どこからか話は伝わるだろう。

そして、対処できないうちに、強制的に手を出してくる恐れもある。

ここは、2人を守る上でも、ある程度権力のある協力が必要だってことだ」


フリードがソファにもたれかかる。

「ギルマスにお願いするのが一番いいね」


結局そこに落ち着くことになった。


リオンは一連の話を聞いて思う。

(人間というのは複雑よのぉ。権力、貴族、派閥。

黒いオーラに相対するには、協力体制は必要だとは思うが、

仲間内で取り合いしてもただの時間のムダだとは思わんのかのぉ)


そしてギルマスが話を締める。

「では、2人の事は、こちらで動く。

その間、2人に接触する者がいたら注意してくれ」


ジークがそれに答える。

「わかった。では、よろしく頼む」


そう言って、話が終わると、

フリードが真っ先にアレクを抱き上げ、

一緒に動いたクロムがヒナを抱き上げた。


フリードは、ふにゃっとしているアレクを

優しく抱きなおし、


クロムは、ヒナを確保できたことが嬉しそうで、

起こさないように、そーっと、抱えなおす。


そんな銀翼の年少組の行動を、

銀翼のメンバーが暖かく見つめていた。


戦いの元凶の話をしていたとは思えないほど、

部屋には優しい雰囲気に満ちていた。

4月29日の活動報告に書いた、ギルマスへの桜餅の差し入れミッション。

無事コンプリートしました!

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