38. ただいま、フォレット
変異個体討伐後、
フォレットの街にたどり着いた。
今回の殲滅戦に参加した冒険者たちは
だれもが誇らしげな顔で街に入っていく。
まずは門番たちが出迎えてくれた。
「冒険者たち、お疲れ様!!
たくさんの魔物から
街を守ってくれてありがとうな!!」
「おう!こういうことは冒険者にまかせな!
今回もばっちり殲滅してやったから安心しろ!」
門番の声掛けに、
なんてことなかったように、自慢げに言う冒険者。
「今回、魔物の数がすごかったらしいな!!
変異個体まで出たそうじゃないか!!」
「そうなんだよ!これがよ、倒してもー倒してもー
起き上がってくるゾンビみたいなやつでよっ!!」
「そうそう!
ギルマスが盾役になって変異個体の攻撃を受けて踏ん張ってくれてよ!
あんなギルマスみちゃあ、ついて行くしかないよな!!
あとは冒険者みんなで回復する暇もないくらいタコ殴りよっ!!
で、とどめはジークがズバーッと!!やって、おわりよっ!!」
みんなヒナやアレクのことは言わず、
戦いのすごさ、ギルマスのすごさ、銀翼たちのすごさを
門番に聞かせている。
そんな姿を横にみながら、街門をくぐった。
「ギルマス、銀翼さん、リオンさん、アレクもヒナもおかえり!!」
「「「「「ただいまーーー」」」」」
***
街の中に入ると、街全体が熱を帯び、
街の人達はパレードを見るように、道の両脇に別れて待ち構えていた。
手を振って、『おかえりー!』とか『ありがとー!』とか言ってくれている。
「すごい人だな。何かのパレードに紛れ込んでしまったみたいな気分だ」
ジークは笑いながらつぶやく。
ここは冒険者の街。
街の人達にとって冒険者は街を守ってくれる憧れの職業だ。
小さい子もぴょんぴょん飛びながら手を振ってくれている。
オルガがそれをみて、笑って手を振る。
「なんだありゃ!興奮しすぎだっての!はははっ!!」
そして冒険者たちは種族を気にしない。
一緒に戦えて、支え合い、信頼し合えるならそれでいい。
その為、街の人達も当然一緒で、
エルフでも、ドワーフでも、獣人にだって感謝する。
エルミーもはじめは警戒した。
人間とエルフのハーフで、エルフの血が濃い為、容姿はエルフ寄り。
だが、パーティーはもとより気にしていなかったが、
街の人達が普通に声をかけてくれたのが不思議だった。
ジークに聞いてみると
ここは冒険者の街で、いろいろな事情を抱えて来る者も多いという。
「態度が悪かったり、口が悪かったりするが、
本来は心の傷を知る優しいやつが多いよ。
街の人達も冒険者たちに守ってもらっている意識があるから、
種族なんて関係なく、話もするし、応援してくれるし、感謝もしてくれる。
ここではそういう緊張はしなくて大丈夫だよ」
そう言ってくれたのを、この風景を見て思い出した。
今では、この街が一番落ち着く場所になっている。
周囲には、他の街などで差別をされていたと思われる種族も
笑って手を振って街の人達に応えていた。
もちろん、街にもいろいろな種族の人達が住んでおり、
種別が異なる夫婦もいる。
それが当たり前の街。
アレクは、ファンタジー!!といいながら手を振っている。
オルガは
『ふぁんたじぃ』とはなんだ?と聞くが、
興奮中のアレクの耳には届かなかった。
はやりというべきか、そうだよねーと納得すればいいのか。
パーティー内で一番喜んでいたのはフリードだった。
「わーい!!やぁやぁ!みなさん、ありがとう!!
はいはい。俺もやってやりましたよーー!!どかーーーんとね!!」
とかいいつつ、風魔法を使い、体を人の頭くらいまで浮き、
戦闘の様子を体全体でバタバタさせながら説明していた。
子供たちは大喜びで集まってくる。
フリードの周りだけ、いつのまにか、まるで小さなステージのようになっていた。
「しゅげーー!!まようせいふりーどだーー!!」とか
「まもの、いっぱいたおしたの?」とか
「だいまほう、つったの?」とか
「だいまほうみせてー」とか、
たくさんの質問を投げかけ、騒いでいる。
「見せたいのはやまやまだが、
大魔法がすごすぎて、街がなくなっちゃうかもなーーー!」
「「「「えーー!!!!そんなにすごいのーーーーっ!!!」」」」
完全に子供たちのヒーローと化していた。
クロムはそんなフリードの様子をみて楽しんでいた。
すると、どこからか聞こえてきた。
「クロム様よ!!クロム様がいらしたわ!!」
「今は穏やかでまさに聖天使様よね。」
「きっと戦闘ではちょいわる黒クロム様になって、魔物をひねり倒したのよ!きっと!」
「あ~その雄姿を見たかったわ~~~!」
黒クロムファンたちが、黄色い悲鳴を上げていた。
リオンも今は大型犬の姿に戻って歩いていた。
なんだか久しぶりに帰ってきた気さえする。
(ここのところ、アレクとヒナとの触れ合いが足りない。
パーティーホームに戻ったら、今日は絶対に、アレクとヒナを離さない……。
誰かに持っていかれる前に寝かしつけてやろう……。)
そうしているうちに、
冒険者ギルドに着き、中に入る。
ギルドホールは今、報酬受け渡しで大変混雑していた。
「ギルドマスター室に来てくれ」
ギルドマスターに促されて、2階のギルドマスター室に向かった。
***
ギルドマスター室に入り、
扉が閉めると、外の喧騒が嘘のように静かになった。
「ふぅ。やっと静かに話せる」
ギルドマスターはそう言うと、銀翼達にソファーをすすめる。
落ち着いて話すためにもみんなソファーに座る。
今回、アレクとヒナは、
リオンに飛びついて存分にもふもふし、美しい毛並みに顔を押し付け、すりすりしていた。
「りおんにいちゃん、あったかい!!ぶじでよかった」
「ふえっ!りおん…おにいちゃ…あいたかった!!」
「お前たちも、大変であっただろうに。よく皆をささえ、がんばったな。
話を聞いて、我は兄として誇らしかったぞ」
「「……ふっふえっ……!」」
泣きそうな2人を尻尾でそっと抱きしめる。
2人して、リオンの体に倒れるように乗っかり、「ふふふっ!」と笑い合う。
緊張がほぐれたのか、アレクもヒナもそのまま寝てしまった。
「これでいいか?」
リオンがギルドマスターと銀翼達に声をかける。
それに反応したのはギルドマスター。
「リオン、ありがとう。助かった」
そうして、話し合いが始まった。




