35. 銀翼のフェンリル到着!アレクとヒナとの再会
轟音。
閃光。
大地を揺らすほどの大規模魔法が、変異個体に直撃した。
その後、森の奥から出てきた者たちは、
A級冒険者ギルド”銀翼のフェンリル”と神獣フェンリルのリオンだった!
ジークがまわりの冒険者たちをみて、大声で叫ぶ!
「おまえら!無事か!!」
オルガは吹き飛んだ変異個体の方向を見て、
にやりと笑った。
「おーおー、クロム。あれだけ吹っ飛ばすとはやるじゃねぇか!」
クロムは黒い魔力をまだ纏ったまま、
珍しく楽しそうに肩をすくめる。
「せっかく帰れると思ったのに……邪魔してくれたから。
変異個体って回復が異常だからさ……あれじゃあ足りないだろうな。
“あれ”、試してみようかな……いいよね?あいつなら」
そして、にやりと笑い、何やら楽しそうだ……。
エルミーが眉をひそめる。
「クロム、やるのはいいけど……冒険者を退避させてからにしなさいよ?」
フリードが大笑いする。
「止めないんだ!?じゃあ俺も!俺も吹っ飛ばしていい!?いいよね!!」
銀翼の少年組は、戦場でも相変わらず物騒で元気だ。
周囲の冒険者たちは、
吹き飛んだ変異個体と銀翼の姿を見て歓声を上げた。
「銀翼!いいところに帰ってきた!!
これなら、勝てそうだっ!!」
「うわぁ~~~ん!!
銀翼さんたちが、帰ってきてくれたーーー!!」
「く、黒クロムはじめてみたっ!!ギャップがすげ~~~!!」
「いつもはとても穏やかなのに、いざというときにあんな堂々と力技で助けてくれる!
確かに、あのギャップでドキドキしてきたわーー!!」
ここでも黒クロムのファンがまた増えたのだった。
***
そこに、ギルドマスターが駆け寄ってきた。
「おつかれさん!急いで帰ってきてもらって悪かったな!」
ジークが頷く。
「いや、ギルマスまで討伐に加わってるって聞いて驚いたぜ。
まさか、あんな元凶がいたとはな」
「あぁ、ここ最近、森の様子がおかしかったから警戒はしていたが、
まさか、あんなものが出てくるとは思わなかったぜ。まったく。」
「あと、アレクとヒナのことなんだが……。
元気は元気だ。だがちょっと言いにくいんだが……。」
「なんだ?何かあったか?」
「いや、あったというか、なんというか……。
アレクが回復魔法使いだして……、
あと、ヒナなんだが、黒いオーラをひっぱたいて払っちまいやがった!」
「「「「「「は?」」」」」」
銀翼とリオンは揃って固まった。
「まあ、ヒナは、世界にこわれてきたのだから、
何か力を授けられてきたのかもしれぬな」
リオンがさらっと言った。
「なるほど。前に聞いたやつか。
じゃあ、アレクは神に授かっていた回復スキルを
危機的状況に思い出したということか。」
「そんなにひどい状況になっていたのですか?」
エルミーもアレクやヒナも冒険者ギルドにいる為、
心配でしょうがないらしい。
「あぁ、アレクの顔見知りが大けがして担ぎ込まれてな。
そのショックで回復魔法を思い出したのか、
大泣きしながら治してた。そのうえ、普通の回復魔法じゃなかったがな……。」
オルガが関心しながら言う。
「あいつも頑張ったんだな!あとでいっぱい褒めてやらないとな!!」
「それで、ヒナのことなんだが……。
今は、街の門のところで回復要員をしてもらっている。
だが、ヒナの協力が必要になった。
あっちに吹っ飛んだ変異個体が黒いオーラをまとわせていてな。
ヒナ以外、触れることができねえ。
もうすぐ起き上がってきちまうから、どうにか、また倒して起き上がれねえように拘束して、
その間にヒナには黒いオーラを払ってもらう必要がある。
あの黒いオーラをそのままにしておくわけにいかないしな」
ギルドマスターはぐったりしている。
いろいろな事がありすぎた。本当にありすぎた。
「アレクもヒナもすげーじゃん!!
なぁクロム!今度4人で魔法研修しようぜー!!
面白そうじゃん!!なんか、すごいの出来そうじゃん!!」
わくわくしながらいうフリードは、クロムに話をふる。
「うん…。いいよ。あの子たちなら。僕も楽しみ!」
もうすでに通常モードに戻っているクロム。
まわりに優しい安心、安全なクロムである。
そして、アレクとヒナの魔法研究の参加は決定した。
(フリードやクロムの真似はしないようにしっかり言い聞かせよう)
そっと思うジークだった。
***
簡単に状況確認を終えたジークは、作戦を立てる。
「フリード、エルミー、リオン、俺で遠距離攻撃をする。
クロムは拘束と妨害を頼む!
こいつは変異個体で回復が尋常じゃないから、
どんどん削っていくぞ!!
オルガは、接近専門だから、
アレクとヒナを連れてきてくれ。
魔物を起き上がれないように拘束したら、
急いでヒナに黒いオーラの払ってもらう。
拘束しても長く持たないだろうから、これは時間との勝負だ。
オルガ、頼んだぞ。」
「「「「「了解!!」」」」」
***
あの後すぐに、オルガが全速力で街門へ走る。
相変わらず負傷者が多かったが、
ひと段落して休憩中のようだった。
ヒナがかいがいしくアレクのおでこの汗を拭いている。
「アレクー!!ヒナー!!」
アレクとヒナはオルガの姿を見つけ、ぱっと顔を輝かせた。
「おるが!!」
「おるがぁぁぁ!!」
オルガが無事に帰ってきたことに喜び、
泣きながらよちよち走ってきて、
二人の小さな腕が、オルガの首にぎゅっと回された。
「「わぁぁぁぁ~~~~~ん!!おるがぁー!!
おかえりーーー!!」」
オルガはその様子に微笑みを浮かべ、
二人をそっと抱きしめ、頭をわしゃわしゃ撫でた。
「アレクもヒナも、よく頑張ったな!もう大丈夫だ!
それでな、これからあの黒いオーラを、
またヒナに払ってもらう必要があるんだ。
ヒナ、あの黒いオーラを払えるんだってな!
聞いてびっくりしたぞ。
だから、もう少しだけ、一緒にがんばってくれるか?」
「うん!ヒナ、ぺちんってする!」
ヒナは、元気よくぺちんする手を空に掲げる。
「よし、頼りにしてる!」
オルガはヒナとアレクを抱き上げ、急いで前線へ走る。
「おるが、走るのはやーい!!!」
「しゅごい!」
(通常通りに戻ったな。よかったが、気が抜けるなぁ……)




