27. 魔物殲滅戦4 -クロム-
今回、戦闘のシーン+怪我人の治療シーンがあります。苦手な方はスルーしてください。
砦の後方では、
クロムが治療に奔走していた。
軽いケガから、兵士や冒険者として戦線に戻れないほどの重傷まで
様々な負傷者がどんどん運ばれてくる。
軽い負傷者には
「皆さん、動かないでください。《聖環・広癒》」
光の輪が静かに広がり、
負傷者たちの傷が一斉に癒えていく。
「……あったかい……」
「痛みが……消えた……」
「クロムさん……すごい……」
「クロムさん、助かります!ありがとうございます!
まだ、患者さんがいるのですが、大丈夫ですか?」
「はい。まだいけます。」
クロムの魔法は、
戦場の“命の灯”そのものだった。
クロムの性格も穏やかで、近くに来るだけで、
戦場のつらさが和らいでいくようだった。
先ほどから、かなりの患者を診ているクロムを
回復師が心配して声をかけてきた。
「クロムさん、かなりの方の回復をおこなっておりますが、
魔力の方は大丈夫でしょうか?
無理なさらないでくださいね」
「うん。大丈夫。僕、魔力多いから。
でも…、心配してくれて、ありがとう」
心配してくれたのが嬉しくて、
クロムは回復師ににこっと笑って返事をした。
「!!クロム様、私、癒されました……」
「ん?」
(何か、癒されたらしい。よかったよかった。)
***
患者の治療がひと段落した頃だった。
「クロムさん!重傷者を運びます!!」
「うぅーーー!!痛い!!脚が……脚が……!」
担架に乗せられた兵士の脚は、
膝から先が完全に失われていた。
「……大丈夫。すぐに治します!」
(治す……?)
回復師は思う。
欠損を治せるものは貴重だ。
そんな貴重な存在が、こんな危険な戦場に来てくれたというのか?と。
そしてまわりの回復師、患者達は静かに見守る。
クロムはそんな中、静かに膝をつき、
静かに《聖環・再生陣》を展開する。
静かに表れた光の輪が患者を包み、
失われた脚の形がゆっくりと再構築されていく。
周囲の回復師たちが息を呑む。
「す、すごい……!
欠損まで……!」
クロムは集中していた。
額に汗が滲む。
(あと少し……あと少しで……)
その時だった。
――ドォォォォンッ!!
砦の外から、
巨大な影が兵士たちを弾き飛ばしながら突進してきた。
「大型魔物だ!!」
「止めろ!!くそっ、突破された!!」
兵士たちの悲鳴が響く。
大型の魔物は、
血の匂いに反応したのか――
治療中の患者の一団へ一直線に向かってきた。
「ひっ…魔物…!」
「や、やめて……!」
「クロムさん……!」
患者たちが恐怖で震える。
クロムは治療の手を止められない。
だが――
魔物は、
今にも患者たちに飛びかかろうとしていた。
その瞬間、クロムの中で何かが“プツン”と切れた。
ゆっくりと顔を上げる。
その瞳は、
先ほどまでの優しい光ではなかった。
黒い雷が、クロムの周囲に走った。
「……こっちは、忙しいんだよ」
声は低く、冷たく、
怒りを押し殺したような響き。
患者たちが息を呑む。
「く、クロムさん……?」
「く、クロムさんが……黒い……?」
「まっさか~~~」
クロムは立ち上がり、
杖を握りしめた。
「邪魔をするな……ッ!」
バチバチバチバチッ!!
黒雷がクロムの体を包み、
髪が逆立つ。
魔物が咆哮し、突進してくる。
クロムは一歩踏み出し――
「《雷禍・黒嵐》」
ドォォォォォォォォンッ!!
黒い雷の嵐が爆発し、
魔物を中心に巨大な雷柱が立ち上がった。
もちろん、患者に被害が出ないように配慮済だ。
「ギャアアアアアアアッ!!」
魔物の悲鳴が響き、
その巨体が焼き切られていく。
地面が抉れ、
周囲の空気が震えた。
患者たちは恐怖で固まり、
回復師たちは声も出せない。
「あ……。な…なに‥‥今の」
「クロム様が守ってくださった……
あんな大型の魔物を魔法1発で……」
雷が収まった時――
魔物は跡形もなく消えていた。
クロムはゆっくりと息を吐き、
黒雷が消えていく。
「……ふぅ。続き、しますね」
いつもの穏やかな声に戻っていた。
患者たちは震えながらも、
その姿に安心したように涙を流す。
「クロム様……助けてくれて……ありがとうございます……」
「さっきの……すごかった……」
「でも……戻ってきてくれてよかった……」
「いやいや、さっきの黒クロム様も……かっこよかったわ……」」
「ワイルドだったわ……。それにあんなに強いなんて……。」
そう言って、一人倒れた。
いっぷう変わった、ちょい悪クロムファンが出来た瞬間だった。
クロムは優しく微笑んだ。
「大丈夫。僕は、皆さんを守るためにここにいますからね」
その言葉に、
患者たちの表情が一気に和らいだ。
「クロム様。ありがたや」
拝む年配の兵士もいた。
そしてクロムは再び膝をつき、
治療を続けた。
ちなみに、雷禍・黒嵐という魔法を使いましたが、クロム君は、黒魔法持っていません…。
きっと、フリード君との魔法研究の成果です。




