表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/38

25. 銀翼のフェンリル 魔物殲滅戦2 -エルミー-

文字数が多くなったので、今回はエルミーの回です。

戦闘シーンですので、苦手な方はスルーしてください。

エルミーは砦に向かって走った。


砦に向かう途中でも戦闘が行われていた。


(魔物が降る前に、急ぎましょう)


砦に入ると、騎士や兵士が中心に砦を守っていた。

「銀翼のフェンリルの方ですね」


話しかけてきたのは、指揮官と思われる騎士の男。

「はい。そうです。エルミーと申します。」


自己紹介をして、軽く礼をする。


「援軍に駆けつけてくださり、ありがとうございます。

何か手伝いが必要であれば、おっしゃってください」


(指揮官は、ここまで守り続けるのに大変だったことでしょう。

変異個体まで出て、それでも折れず、みなを鼓舞しなければならない。

この指揮官はよくやっている。)


「ここまで皆が頑張ってこれたのは、貴方の気持ちの強さだと思います。」


胸に手を当てて、指揮官に敬意を称する。


すると、指揮官はずっと張りつめていたからか、

ずっと耐えていたからか、こぼれそうな涙を堪えて、

小さな声で「ありがとうございます」と一言こぼした。


「こちらこそ、貴方がたが耐えてくれたおかげで間に合うことができました。

ありがとうございます。

私はこれから、砦の外壁の上から、攻撃を開始します。

あまり近づかないでいただければ助かります。」


挨拶を終え、外壁の上部への階段を上っていく。

兵士たちが何も言わずに敬礼して道を開けてくれる。

なんだか気恥ずかしいが、堂々と開けてくれた道を通り、

砦の外壁の上に立つ。


エルミーは、完全なエルフではないが、エルフの血が濃いため、

美しい容姿を持っている。

長くて明るい黄緑色の髪も陽の光で煌めき、風に揺れ、

その姿は神々しさまで感じる。


その場所だけ”くりぬかれた絵画”のように、

まわりの兵士達には見えた。


エルミーは、人々から遠巻きにされながらも、

外壁の上から見渡してみると、

戦場と化している前方がよく見える。


あちこちで剣のはじかれる音、魔物の咆哮や倒れる音、人の悲鳴、

気合を込める声、様々が聞こえてくる。


ジークとオルガがいるところは、

魔物の死体が多く、

そこから兵士や冒険者が走って砦の方に向かってきている。


「さすがだ」


そして、息を整える。


「さて、私も仕事をしましょうか。」


そういうと、目を閉じ、魔力を集める。


「《遠見》!」


目をカッと開くと、遠くの森の入口までよく見える。


「……来ましたね。三体同時ですか……!」


弓を引き絞ると、矢に光の魔力が集まり、

眩い光が尾を引く。


「《風矢・穿通(ふうし・せんつう)》!!」


バシュッ!バシュッ!バシュッ!


三本の緑の光の矢が一直線に飛び、

森から飛び出した魔物の頭部を正確に貫いた。


「次……!」


彼の矢は、

魔物が姿を見せた瞬間に撃ち抜く。撃ち抜く。さらに撃ち抜く。

まるで未来を読んでいるかのような精度だった。




「……次が来ますね」


エルミーは弓を構えたまま、空を見上げた。


ふと影が頭上をよぎる。

バサッ……バサッ……と重い羽音が響く。


「ひっ!鳥の魔物だ!」

「飛んでくる魔物までいるとは!」


「お前たち!怯えるな!

怯えれば狙われる!武器を構えて目を離すな!」


指揮官が兵士に一喝する。

兵士も、すぐさま体制を整える。

互いが互いを守れるように、1人にはならない。


影が三つ。

空を旋回しながら、こちらへ向かってくる。


空魔鳥(スカイレイヴン)

鋭い嘴と爪を持ち、

上空から急降下して獲物を貫く危険な魔物だ。


風がざわりと揺れた。


(……風精霊が騒いでいますね。

 あれは、空の魔物が攻撃してくる合図です)


エルミーは静かに息を整えた。


空魔鳥(スカイレイヴン)たちは、

風に乗り、高度を変えながら、不規則に飛び

狙いを絞らせないように動いている。


「……ですが、風は嘘をつきません」


エルミーはそっと指を鳴らした。


「《風精霊よ、導きを》」


ふわり、と風が彼の周囲に集まり、

透明な糸のように空へ伸びていく。


(……位置、速度、軌道……全部、見えました)


エルミーは弓を大きく引き絞り、

矢に風の魔力を流し込む。


矢が淡い翠色に輝きだす。


空魔鳥(スカイレイヴン)の一体が、私に狙いを定め、

急降下してきた。


「《風矢・穿通(ふうし・せんつう)》」


バシュッ!!


風を裂く鋭い音とともに、

矢が一直線に飛び、

急降下してきた魔物の胸を貫いた。


「ギャアアッ!!」


魔物は空中でバランスを崩し、

地面へと落ちていく。


「まず、1匹ですね」


その様子をみた残りの二体が

怒りのように鳴き声を上げ、エルミーへ向かって急旋回した。


「ギャオォォォーッ!!」


「……今度は二体同時ですか。

 では、こちらも応えましょう」


エルミーは弓を構え直し、

魔力をさらに集中させる。


風が巻き起こり、

外壁の上で彼のマントが揺れた。


「《風矢・連閃(ふうし・れんせん)》」


バシュッ!バシュッ!


二本の風矢が空へ力強く放たれる。


だが――

空魔鳥(スカイレイヴン)は空中で急旋回し、

矢を避けた。


「……避けましたか。

 さすが空の魔物ですね」


(そうでなくては、面白くありません!)


エルミーは微笑む。


(ですが、避けたということは……

軌道を読めるということです。

頭のいい魔物なのかもしれませんね)


次の瞬間、

エルミーは矢を三本同時に取り出した。


「では、これはどうでしょう」


三本の矢を同時に番え、

魔力を流し込む。


矢が翠色に輝き、

風精霊たちが矢の周囲を舞う。


「《風精霊術・散華(さんげ)》」


バシュッッ!!


三本の矢が空中で弾け、

十数本の風の刃へと分裂した。


「ギャアアアッ!!」


「ギィィィィッ!!」


逃げ場を失った空魔鳥(スカイレイヴン)たちは、

風の刃に貫かれ、

空から落ちていく。


エルミーは弓を下ろし、

静かに息を吐いた。


風が彼の髪を揺らし、

翠色の魔力がふわりと散る。


『ぼくら、頑張ったよ!褒めて褒めて!!』

『さっきの、すごく楽しかった!!』


精霊が自分にしか聞こえないささやきで声をかけてくる。


「精霊のみなさん、力を貸してくれて、ありがとうございます」


エルミーが精霊達に声をかけると、

それが嬉しいらしく、エルミーの髪をふわふわ揺らしてから離れていった。


「……空の魔物は厄介ですが、

 風精霊が味方してくれるなら、

 恐れる必要はありませんね」


『そうだよー』

小さな声が聞こえたような気がした。


外壁の下から、

兵士たちの歓声が上がる。


「す、すごい……!」

「空の魔物を……あんなに簡単に……!」


エルミーは微笑んだ。


「いえ、皆さんが守ってくださっているからこそ、

 私は安心して撃てるのです。

 引き続き、よろしくお願いします」


そう言って、

彼は再び弓を構え、

森の入口から出てくる魔物の殲滅に戻る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ