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24. 銀翼のフェンリル 魔物殲滅戦1 -オルガとジーク-

今回も戦闘シーンとなります。苦手な方はスルーしてください。

ギルドマスターを困惑の渦に叩き込んだアレクがすやすやお昼寝をしている頃、

銀翼のフェンリルとリオンは、残りの魔物の殲滅作戦に参加していた。


変異個体を討伐した後はすごかった。


砦の守りを固めていた騎士、兵士、冒険者や

ケガで動けないが、戦いを最後まで見届けると戦場に残った者たちの声が

地鳴りのような歓声となって、あたりに響いた。


中には、号泣しながら仲間と力いっぱい抱き合う者、

興奮しながら歓喜の踊りをしている者、

ただ静かに喜びをかみしめている者

様々だ。


しかし、まだ戦いは終わっていない。

今も戦闘を続けている者達がいる。


魔物も相変わらず森の方からやってくる。

なぜ急にこんな状態になったのか、後でギルドが調査するだろうが、

今は悩んでいる時間はない。


せっかく変異個体を倒したのだ。

あとは、魔物が出てこなくなるまで、殲滅する。


ジークは、現状を確認する。

(変異個体を討伐したとはいえ、通常魔物の量が先ほどより増えているようだ。

現在、戦える騎士、兵士、冒険者にも、疲労の色が出てきている。

俺らが来る前から変異個体や複数の通常個体と戦って防衛しているのだから、

こればかりはしょうがない。反対に、よくもっていると思うほどだ。)


方針は固まった。


ジーク仲間に向き直り、方針を伝える。

「これから我らは通常魔物の殲滅作戦に入る。

ただ、騎士や兵士、冒険者達は俺たちが来る前から

変異個体や通常個体と戦闘している。

その分、疲労の色も濃い。


そこで、俺とオルガは

危険な場所を優先して討伐し、相対している彼らを砦まで下がらせる。


砦のところまでいけば、回復師がいる。

まずは、立て直しをさせる。このままでは危ない。


クロムはまず、回復の方を頼む。

回復師も手一杯だろうし、追いついていないだろう。


エルミーは、魔物が森を出てきたところで

弓矢でも魔法でもいい、なるべく多く、討伐してくれ。

こぼれた分は俺たちが片付ける。


フリードは、その他のグループの援護を頼む。

魔法で攻撃して隙をつくれ。

そうすれば、相対しているもの達だけでも討伐しやすくなる。


リオンも遊撃でその他のグループの援護を頼む。

リオンが来たら、士気も高まるだろうからな。」


「「「「「了解っ!」」」」」


「それじゃ、さっさと倒して、泣き虫のちび達を迎えに行こう!

銀翼のフェンリル、いくぞ!!」


「「「「「お~~~~っ!」」」」」


***


銀翼のフェンリルは、それぞれの持ち場へ散っていった。


砦の前方には、まだ魔物の群れが押し寄せている。


森の奥からは、木々が裂けるような音と、

獣の唸り声が絶えず響いていた。


空気そのものが、戦場の熱気で震えている。


兵士や冒険者は、自分の中の恐怖に負けじと

自分を奮い立たせ、恐怖を閉じ込め、剣を構える。


ジークとオルガは、最も危険な前線へ飛び込んだ。

通常の魔物のため、大きさもさほど大きくはない。

種類も、通常の大きさの熊の魔物や、

バスケットボールほどの大きさで、跳躍力が異常に高い一角うさぎ、

突撃力が突出しているボアビースト、

巻かれると厄介なヴァインスネーク、

他にもいろいろ出てきている。


「オルガ、右の群れに行くぞ!

あそこの部隊がやばそうだ」


「任せろォッ!!」


オルガが地面を蹴った瞬間、

風が爆ぜるように巻き起こる。


ナイフに風の魔力が収束し、

刃が淡い翠色の光を帯びた。


「――風刃乱閃(ふうじんらんせん)ッ!!」


ヒュッッッ!!風が躍るかのごとく駆け抜ける。


空気を裂く鋭い音とともに、

オルガのナイフが魔物達の硬い皮膚を次から次へと切り裂く。


ズバッ!スパスパパパパパパー!


「殲滅、気持ちいいぜー!!」


「ギャアアアアッ!!」


魔物達の体が大きくのけぞり、

そのまま地面に次々と音を響かせ、叩きつけられる。


オルガは着地と同時に次の魔物へ跳び、

風を纏ったナイフで連続の刺突を叩き込む。


「ほらほら!こっちだ!!」


その動きはまるで疾風。

魔物たちの巨体が、次々と倒れていく。


そんな風そのもののようなオルガに

静かに迫るものがいた。


サラ……サラ……と葉擦れの音がした。


風もないのに、

一本の木の枝がゆっくり揺れている。


「…おー存在感のあるやつが来るなー」


音がする方に、ニヤリと笑う。


オルガがナイフを逆手に構えた瞬間、

枝に見えた“それ”が、ぬるりと動いた。


細長い蔦のような体。

木の色に擬態した鱗。

赤い目が、じっとオルガを見つめている。


ヴァインスネーク。

目をつけられると厄介な蛇の魔物だ。


「おっと……狙いはオレかっ!

見る目があるなっ!相手してやるよっ!」


次の瞬間――


バッ!!


蛇が木から飛び降り、

地面を滑るようにオルガへ突っ込んできた。

その速さは思っていたよりもずっと速かった


「速っ……!」


オルガが横に跳んだ瞬間、

蛇の体がムチのようにしなり、地面を叩き割った。


ドガァッ!!


土が爆ぜ、木の根が飛び散る。

小石もまわりに飛び、オルガの頬をかすめた。


「いってぇ!おいおい、通常種でこれかよ……!」


蛇はすぐに方向転換し、

オルガの足に巻きつこうと迫る。


シュルルルルッ!!


「そうはいくかよ!!

巻きつかれたら終わりだな……

なら、巻きつかれる前に斬るだけだ!」


オルガが地面を蹴る。

風が巻き起こり、

身体が一気に加速する。


蛇が飛びかかる。

オルガが跳ぶ。


空中で交差する瞬間――


「――風牙一点(ふうがいってん)ッ!!」


翠色の風がナイフに収束し、

蛇の体表を切り裂いた。


ズバァッ!!


「ギィィィィッ!!」


蛇が木に叩きつけられ、

体をくねらせて暴れる。


だが、ヴァインスネークはしぶとい。

回復はしないようだが、耐久力があるタイプのようだ。


今度は地面に潜り出した。

地面の下から、振動が伝わってくる。

緊張の中、耳を澄ませて動向を探る。

だが、まわりも戦場。

仕方ないので、足の振動で居場所を探る。

だが、振動も、まわりの戦闘によるものか、

蛇やろうによる振動なのか判断がつかない。

すると突然、オルガの背後から飛び出してきた。


「後ろかよッ!!」


振り返る暇もなく、

蛇の体がオルガの腕に巻きつく。


ギリギリギリギリッ!!


「っ……くそ、締め付けが強ぇ……!」


骨が軋む音がする。

蛇はさらに体を巻きつけようとする。


「……なら、こっちも奥の手だぁ!」


オルガが息を吸い、

ナイフに風の魔力を集中させる。


風が渦を巻き、

いつもより風の気配が濃くなったところで、

ナイフの色も蒼く変わっていく。

そして、刃が唸りを上げる。


「切り裂けーーっ!!

 ――蒼牙穿(そうがせん)ッ!!」


ズガァァァッ!!ブチッ!


蒼い風の刃が蛇の体を切り裂き、

締め付けが一気に緩む。


「ふ~!きつかったー」


オルガは魔物の体から離れ、

後ろへ跳んで距離を取る。


蛇は体を震わせながらも、

まだ戦意を失っていない。


「ほんと、しぶといな……

 でも、もう終わりだ!」


オルガが低く構え、

風を纏ったナイフを逆手に握る。


蛇が最後の突進を仕掛ける。


オルガも同時に踏み込む。


すれ違いざま――


「――風牙穿(ふうがせん)終断(しゅうだん)ッ!!」


スパァァァァンッ!!


風の軌跡が一閃し、

蛇の体が真っ二つに裂けた。


「ギィ……ッ……」


ヴァインスネークは地面に崩れ落ち、

もがき、そして動かなくなった。


オルガはナイフを軽く振って血を払い、

肩を回す。


「ふぅ……

 通常種でこれなら、変異個体はもっとヤベぇな……

 ま、俺ならどうにでもなるけどな!」


そして、オルガはまたジークの加勢に向かう。


ジークは、

大剣を振るうたびに雷光を撒き散らし、

魔物をまとめて薙ぎ払っていく。


「オルガ、左を任せる!」


「了解だッ!!」


二人の動きは、

まるで長年の戦友そのもの。

呼吸が完全に合っている。


***


森の奥から、

バリバリバリッ……!!

と空気を裂く音が響いた。


空気がピリリとした緊張感を運んでくる。


木々の間を青白い光が走り、

次の瞬間――


ドォンッ!!


巨大な影が地面を踏み砕いて現れた。


雷角獣(サンダースタッグ)

立派な二本の角が雷をまとい、光を放つ。

周囲の空気が常にビリビリと震えている。


雷角獣(サンダースタッグ)の角が空気を裂くたび、

まわりの草が焦げていく。


「……こいつは俺がやる」


ジークが大剣を構え、オルガの前に立つ。


「おいジーク、こいつ雷まとってんぞ!?

 俺も――」


「ダメだ。ここは危険になる。

オルガ、周囲の兵士と冒険者を下げろ」


ジークの声は低く、

しかし絶対の自信と覚悟があった。


「雷は俺の領分だ。任せろ!」


オルガは一瞬だけジークを見つめ、

ニッと笑った。


「……わかったよ。

 死ぬなよ、リーダー!」


「死なない。

ちび達が待っているからな」


「ははっ!そうだな!」


オルガはすぐに周囲へ走り、

兵士たちに叫ぶ。


「ここは危険だ!雷が暴れるぞ!全員、後退しろ!!」


兵士や冒険者たちが慌てて距離を取る。

その間にも、雷角獣(サンダースタッグ)は地面を踏み鳴らし、

角から雷を放電していた。


バチバチバチバチッ!!


ジークの大剣の刃が、雷角獣(サンダースタッグ)の雷に答えるように雷を這わせ、

バチバチ音をたて震える。


「……来い」


雷角獣(サンダースタッグ)が咆哮した。


「グォォォォォォォッ!!」


そして――

雷光とともに突進してきた。


ズガァァァァァンッ!!


ジークは大剣で角を受け止めた。

雷と雷がぶつかり合い、

周囲の空気が爆ぜる。


バチバチバチバチッ!!


まわりに火花が散り、所々が焼けている。


「くっ……!

 力が……強い……!」


雷角獣(サンダースタッグ)は押し込んでくる。

地面が割れ、

ジークの足元にも雷が走る。


だが――

ジークは一歩も引かない。


「……雷対決、いいじゃないか!」


ジークが力を込めると、

大剣に一気に雷が集まり始めた。


雷牙・瞬閃(らいが・しゅんせん)ッ!!」


ジークが一瞬で踏み込み、

雷速(らいそく)の斬撃を叩き込む。


ズバァァッ!!バチバチッ!!


雷角獣(サンダースタッグ)の肩に深い傷が走る。


だが、雷角獣(サンダースタッグ)も負けていない。


「グォォォッ!!」


角から雷撃を放ち、

ジークを吹き飛ばす。


ドガァァァァンッ!!バチバチーーッ!


「ぐっ……!」


ジークは木に叩きつけられたが、すぐに立ち上がる。

体を雷が這うように駆け抜ける。

が、ジークの能力がそれを力へと変える。


「……やるな」


雷角獣(サンダースタッグ)が地面を蹴り、再び突進してくる。


ジークは大剣を構え、低く呟いた。


雷嵐・轟斬(らいらん・ごうざん)


大剣を地面に叩きつける。


ドォォォォォンッ!!


地面から雷柱が立ち上がり、

雷角獣(サンダースタッグ)の突進を止める。


「ギャアアアアッ!!」


雷角獣(サンダースタッグ)が怯んだ瞬間――

ジークは跳んだ。



雷角獣(サンダースタッグ)の角が、

ジークの大剣が、

互いに雷をまとい、空気が震える。


バチバチバチバチッ!!


「……雷を使うなら、

 どっちが上か決めるだけだ」


ジークが大剣を構え、

雷を一点に収束させる。


雷角獣も角に雷を集中させ、

地面を砕きながら突進してくる。


ジークは内心、歓喜に震えていた。

(こんな勝負、なかなか出来るものではない。

雷 対 雷、面白いじゃないか!

お前もそうなんだろう?)


「グォォォォォォッ!!」


「来い……!!」


二つの雷が一直線にぶつかる。


ズガァァァァァァァンッ!!


雷鳴が轟き、

周囲の木々が一斉に倒れる。


ジークの足が地面にめり込み、

雷角獣(サンダースタッグ)の角が大剣を押し返す。


「……まだだッ!!」


ジークが全身の力を込め、

雷をさらに増幅させる。


大剣が青白く輝き、

バチバチと放電し出し、

雷角獣(サンダースタッグ)の角を押し返し始めた。


「グ……グォォォォォッ!!」


雷角獣が苦しげに叫ぶ。


「終わりだ――

 雷刃・終断(らいごう・だんめつ)ッ!!」


ズバァァァァァンッ!!


雷光が一直線に走り、

雷角獣(サンダースタッグ)の身体を縦に裂いた。


雷が爆ぜ、周辺に雷の余波がバチバチと広がり、

巨体が崩れ落ちる。


ジークは今もなお、雷をまとったままバチバチと音を立てて

共に雷をまとっている大剣を肩に担ぎ、

静かに息を吐いた。


「ふ~なかなかの戦闘だった。

だが、……雷は、俺の方が上だったな」


こうして、ジークは他にまだ戦闘している箇所へ走って行った。



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