表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/34

21. 銀翼のフェンリル 緊急指名依頼!

アレクとヒナとリオンが銀翼のホームに住むようになってから、

あっという間に3ヶ月程が経った。


銀翼のメンバーは、2人が環境に慣れるまでの間、

依頼を控えめにし、

誰かが必ずホームに残るように活動していた。


そのおかげで、アレクとヒナはすっかり銀翼ホームに馴染み、

最近では冒険者ギルドにも一緒に来るようになった。


依頼に向かう銀翼メンバーに向かって

「いってらっしゃい!早く帰ってきてね!」

と元気に手を振る2人は、

ギルドの冒険者たちを毎日のようにほっこりさせていた。


今日の朝も、銀翼メンバー、アレク、ヒナ、リオンで

冒険者ギルドに顔を出すと、


アレクとヒナに手を振る冒険者たちがいた。


もう慣れたもので、アレクもヒナも笑顔で手を振り返す。


「あー銀翼の奴らがうらやましいぜぇ。

俺も依頼で出る時に、元気に『いってらっしゃ!早く帰ってきてね!』って送り出してもらいてー!

そしたら、いつもより頑張れちゃう気がするぜっ!」

冒険者の一人が、拳をぷるぷるさせながら言っている。


「俺なんか、そんなこと言われたら、お土産に”肉の柔らか~い!角うさぎ!も狩ってきちゃうぜ!」


「あれ、素早いからお前に無理なんじゃねえの?」


「そんなことないぜ!前回は”たまたま”だっつーの!」


――そんな、いつもと変わらない朝だった。


ギルドの扉が、

バンッ!

と勢いよく開いた。


受付嬢が青ざめた顔で走ってくる。


「銀翼のフェンリルの皆さん!

至急、ギルドマスターの部屋へお願いします!!」


ただならぬ気配に、

ギルド内の空気が一瞬で張りつめた。


まわりの冒険者は、何があったのかと

情報を求めて同業者達に

”何か知ってるか?”と目で合図し合っていた。


銀翼のメンバーは顔を見合わせ、

アレクとヒナは雰囲気にのまれ、思わずジークの後ろに隠れる。


ギルドマスターの部屋に入ると、

「ギルドマスターはすぐに参りますので、ソファにおかけになってお待ちください」と、

受付嬢はドアを閉めて部屋の隅へ移動する。


すぐに奥の部屋から現れたのは、

がっちりした体格で

白銀の髪を後ろで束ね、

鋭い眼光を持つ壮年の男。


冒険者ギルド・フォレット支部

ギルドマスター――

アルフレッド・ヴァルハイト。


普段は穏やかな笑みを見せる彼だが、

今は眉間に深い皺を刻み、

明らかに緊急事態の顔だった。


「アレクにヒナも、よく来たな」


「うん!きた!」

「きょうも、ギルマス、かっこいい!」


「ありがとうな」

2人の頭を軽く撫でる。


そして、改めて銀翼達に向けて姿勢をただす。


「銀翼のフェンリル。

緊急指名依頼だ」


ジークが前に出る。


「……何があった」


「変異個体が出た。

場所は――辺境の街のすぐ近くだ」


ギルド内がざわめく。


変異個体。

通常の魔物とは違い、

突然変異で凶暴性と力が跳ね上がり、

回復力も異様に高い危険存在。


放置すれば、街が壊滅することもある。


「守備隊では手に負えん。

A級の君たちに頼むしかない状況だ」


アレクがジークの服をぎゅっと掴む。

ヒナはリオンの足にしがみついた。


「……いっちゃうの……?」


「……やだ……こわい……」


ジークはしゃがみ込み、

2人の目線に合わせて優しく頭を撫でる。


「行かなきゃいけない。

でも、すぐ戻る。絶対に戻る。約束だ!」


リオンも2人のそばに寄り、

低く、しかし優しい声で言う。


「我も一緒に行こう。

あのような相手、放ってはおけぬからの」


アレクがリオンの毛をぎゅっと掴む。


「……りおんにいちゃも……」


リオンはそっと尻尾でアレクの頬をなでる。

「大丈夫だ。

必ず帰る。

そなたらを置いていくはずがなかろう」


ギルドマスターが2人の前にしゃがみ、

銀翼達を一度見てから、2人を見て、

穏やかな声で話しかけた。


「アレク、ヒナ。

君たちのことは、私が預かろう。

ギルドは安全だ。


元S級冒険者だった俺がいる。

それに、ここにいる強い冒険者全員が、君たちを守る」


アレクは不安そうに見上げる。


「……まもってくれる……?」

「……ひなも……?」


「もちろんだ。

そういえば、自己紹介をしていなかったな。

私はギルドマスター、アルフレッド・ヴァルハイト。


”街伯”として、そしてこの街の”ギルドマスター”として、

この街と、ここにいる者たちを守るのが私の役目だ。

まかせろ!」


「ギルマスがそう言ってくれるなら安心だ。

助かるよ。」

ジークが軽く頭を下げていう。


受付嬢も優しく微笑む。


「大丈夫だよ。

アレクくんもヒナちゃんも、

ここにいる間は私たちがずっと一緒だからね」


ヒナが小さな声でつぶやく。


「……ひな……まってる……

だから…ぜったい…かえってきて…ね…」


ジークはヒナの手を包み込み、

アレクの頭をそっと撫でた。


「帰ってくる。

家族を置いていくわけないだろ」


銀翼のメンバーもそれぞれ声をかける。


「帰ったら、また抱っこしてあげますね」


「あっという間にやっつけて、

帰ってきたら”光の蝶”のもっと綺麗なやつ作ってやるからな!」


「おいしいおやつ、いっぱい作る……!」


「お前らが待っていてくれるなら、

俺たちは絶対に帰ってくるから、安心して待っていろ。」


アレクは涙をこらえながら、

ぎゅっと拳を握った。


(…これが現実。……行かないでほしい。そばにいてほしい。

いなくならないでほしい。…こわい。

でも……これだけは、がんばって、って言わなきゃ……)


「……うん。いってらっしゃい……!」

アレクは泣くまいと必死でこらえながら言う。


ヒナも震える声で続く。


「……ひな、おうえん…してる……!」

泣き虫のヒナは、涙を一生懸命ぬぐっているが、

涙が後から後からこぼれてきて、裾が涙で濡れていた。


リオンは”しょうのないやつめ”と言わんばかりに、ヒナの頬をペロッとなめた。

次にアレクの頬に自分の頬をすりよせた。


「りおんにい……くしゅぐったい……」

アレクはくすぐったそうに笑った。


銀翼のフェンリルとリオンは、準備を整え、

2人の小さな声を背に受けながら、

緊急討伐の地へと向かっていった。


アレクとヒナは、

ギルドマスターと受付嬢に抱っこしてもらいながら、

その背中が見えなくなるまでずっと見送っていた。


見えなくなると、

一気に心細くなり、ギルドマスターと受付嬢にしがみついて泣き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ