20. ジークの目覚め
朝日がまだ昇りきらない薄暗い時間。
ジークは、いつもより妙に“あったかい”感覚で目を覚ました。
「……ん……?
なんだ……いつもより……暖かい……ような…?」
腕辺りに感じる柔らかくて暖かい重み。
胸元に感じる小さな温もり。
まどろみの中、
その感覚に気持ちよさを感じていると、
今度は幼い寝息が聞こえてきた。
ぼんやりと目を開けると――
アレクが腕に抱きつき、
ヒナが胸元に抱き着いて寝ていた。
「………………は?」
状況を理解するまでの3秒
――A級冒険者、完全にフリーズ。
「え……?
な、なんで……?
なんで2人が俺の布団に……?」
アレクが気持ちよさそうに、
俺の腕に抱きついて寝ている。
「すぅ……。すぅ……。あったかい…」
「ん……おにいちゃ…あった…かい…うにゅ~」
ヒナの声が聞こえて、自分の胸元を見ると、
そこには、胸元の服を握りしめて頭を埋めているヒナが寝ている。
「俺、おにいちゃ…じゃ、ねぇ……んだけどな……」
困惑しながらも2人を見つめる。
2人は幸せそうに寝息を立てている。
(……なんだこの幸せ空間……)
「これは…、動けねえ…な…。起こすのも可哀想だ…。どうしようか…」
2人の寝顔が可愛くて、
つい胸元にいるヒナの頭を撫でてしまう……。
が!
(…ちょ……待て……可愛い……
いや!そうじゃない。
あ……暖かい……それも、今は違うだろ!
おっ……、落ち着け、俺……!)
そして、誰か助けを呼ぼうかとドアの方を見ると…
銀翼メンバーたち、
オルガ・エルミー・フリード・クロムが
体を震わせて面白そうに笑いながら、
ずらりと並んで俺たちを眺めていた。
「ジーク……お前……
すっかりパパだな」
呆れながら言うオルガ。
「……ずるいです……」
エルミーが悔しがってる。
「オレのとこにも来てくれねえかな……!」
フリードは、次は自分のところに来てほしいと祈っている。
「天使が……2人も……」
クロムは、ただただ微笑ましそうに見つめている。
リオンも廊下からのっそり入ってきた。
「……2人とも、夜中にトイレに行った後、寝ぼけてこっちにもぐりこんだか。」
「お!お前ら、なんで起こさなかったんだよ!!」
「ジークが幸せそうに”パパ”やってたからな」
「お前ら~~~~!!」
***
ジークはそっと腕を動かそうとする………。
「……うー……」
ぎゅっ!
余計にしがみつかまれた……。
「っ……!!
(アレクっ!かわ……いや違う、落ち着け俺!!)」
今度は少し体を起こそうとしてみる……。
ヒナも、もぞもぞ動き出し、
胸元に顔をうずめてくる。
「……うにゅ~、あったかい……」
「うぐっ……!!無理だ……動けん……可愛い……」
「「「おもしろ~~~~!!!!」」」
***
「ジーク。アレクやヒナが起きるまで寝ていろ。」
「今度寝る前に、少しドアを開けて寝ていれば、
寝ぼけている2人が間違えて入って来て、
くれるでしょうか…」
エルミーは、今度自分のところに入って来てくれようにするには……と、
なにやらぼそぼそと作戦を考えているようだった。
エルミーの事はスルーして話は続く。
「……なるほど……。
そういうことだったか」
リオンに今までの経緯をきく。
「そしてそなたの布団に潜り込み、
安心したように眠った」
「…………」
「つまり――?」
「君は“安心できる大人”として2人に認識されたということだ」
「………………っ!!」
(やべぇ、泣きそう……)
「「「リーダー陥落~~~~!!!!」」」
***
ジークはゆっくりと2人の頭に順に手を置いた。
「……そっか。
安心してくれたのか……。
うれしいじゃないか……」
まだ起こる様子のない2人を見つめる。
「……ん……」
アレクの寝息が規則正しくて、胸が上下している
(気持ちよさそうだ)
「……すき……」
ヒナの小さな手がジークの服をぎゅっと掴んでいる
(ひなは握り癖があるよな。どこにもいかないのに…)
「……俺も好きだぞだよ。アレク、ヒナ……」
(ついつい笑っちまうのはしょうがない事だと思う。だって、嬉しいと思ったんだから)
「「「尊い~~~~!!!!」」」
(ジークパパーーー!!)
リオンがうなずく。
「……良い朝だな」




