表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/39

14. ギルドマスター室にて1

――重い扉の向こうで、静寂が落ちる。


ギルドマスターに連れられ、部屋に入る一同。


ギルドの喧騒から離れ、

奥の重厚な扉がゆっくりと閉まる。


ギィ……バタン


途端に、外の騒がしさが嘘のように消えた。

とても緊張を誘う雰囲気だ。


ギルドマスター室は、

見かけによらずとても綺麗に整頓されていた。

壁紙も明るいベージュ。

落ち着きのある部屋だ。


壁一面に地図や、

現在進行中の依頼案件資料が貼られ、

棚には古い魔道書や戦利品が並ぶ、

“歴戦の冒険者の部屋”そのもの。


ギルドマスターは

ゲスト用の長いテーブルの奥にある

一人掛け用のソファに座りこむ。


銀翼達を長テーブルの両脇の長いソファに

座るようにすすめた後、

腕を組んで銀翼のフェンリルを見据えた。


ソファに座れるのは6人。

ジークとオルガは、ギルドマスターに報告メイン。

あとは早い者勝ちで、フリードがアレンを、

エルミーがヒナをひざ抱っこする。


「ずるい……僕もひざ抱っこしたかった…」


ジークとオルガが、

その様子を「しょうがないやつらだな」とばかりに笑い合う。


ギルドマスター

「……さて。

説明してもらおうか」


両肘をテーブルに着け、顎を載せる。

少しにらみつけるように声をかけた。


その視線が、

アレクとヒナ、そしてリオンへ向く。


アレクはフリードに抱っこされたまま、

ぎゅっとフリードの裾を握り、


ヒナはエルミーに横抱っこされたまま、

エルミーにへばりつく。


リオンは2人の近くに立った。


***


ジークは深く息を吸い、

真剣な表情で口を開いた。


「……ギルドマスター。

まず最初に言っておく。

この子たちは、俺たちが勝手に拾ってきたわけじゃない」


「ほう?」


「神獣フェンリル――リオン様からの、

直々の依頼だ」


ギルドマスターの眉が跳ね上がる。


「……神獣、だと?」


「本物だぜ、マスター。

俺らのパーティ名の元になった“伝説のフェンリル”だ。すげぇ強かったぜ!」


「……野営の時、精霊たちも、動物たちも、

たくさんあの子たちに寄ってきていたんです……。

素敵な光景でした……。

リオン様は……本物ですよ……」


「オレ、魔力の質でわかったよ……

あれは……神獣の神聖力だと……」


「聖属性が反応して……

近くにいるだけで心が澄む感じがする……」


ギルドマスターはリオンを見た。


リオンは静かに、

しかし威厳を持って一歩前へ出て、

そっと神聖力を放つ。

体全体から、優しい光があふれ、

毛艶のいい毛をふわっと躍らせながら

体の大きさを元に戻した。


神獣の声は、部屋の空気を変えるほど澄んでいた。


「我は、創造神セルシオス様より依頼を受けて

やってきた」


それは、銀翼も初耳だった。


「我は、黒いオーラの対抗出来うる、

創造神セルシオス様の

愛し子のアレクと、世界の愛し子のヒナの

護衛の為についておる」


「!!創造神様の依頼だとっ!?

…一気に大事な話になったな」


「それは俺たちも初耳です。

それはまことですか!?

こんな小さな子が、あの黒いオーラに……?」


「まことよ。

現に、この子らが下りてきて、変異個体の数はへっておらんか?」


「…たしかに、それは報告がきております。」


「そういうことよ。

ただ、この子らはまだ本当に子供だ。

自分に何ができるかもわかっておらん。

ただ、この子らが希望の光だというのは事実だ。」


あまりの衝撃な話に誰もが無言になる。


「……そのため、私が、この子たちを守ってきた。

だが、人間は、人間の中で暮らしていく方がいい。


人と関わり、人の暖かさを知る必要がある。

生活していく上での常識や、この世界の事も知ってほしい。


その為、変異個体と戦闘中に助けに入ってく、

しかも、あの2人の安全をまず考えてくれた

銀翼のパーティーに託すことにした。

託すといっても我も護衛の為一緒に暮らすが」


その声は、部屋の空気を震わせた。

これは、おとぎ話のような話ではないか。

神獣と一緒に暮らす。

愛し子達に世界のいいところをたくさん見せてやろう。


ここにいる誰もがそう思った。


「そういうことなのか。

銀翼はよくこういう大変な物事に遭遇するな」


「なぜですかね。1人正義感溢れまくっているおっさんがいるからだと思うぜ。」


「何を言っている。オルガだって一緒に頭を突っ込む方だろうが」


「そうだったか?」


「まあ、今回は、言わば神からの依頼とも言える

神獣フェンリル様よりの依頼だ。

それに、この子達は本当に純粋だ。

お互いに必死に助け合っている。

私はその手助けをしたいと思っている。」


「「「「私たちも同意見です。」」」」


「自己紹介がまだだったな。

すまぬ。

私は、神界の園より来た神獣フェンリルの

名を”リオン”という。


この子たちーーーアレクとヒナは

記憶を失っている。

親や子の記憶もない。


ヒナはただただ、アレクを兄と仰ぎ、慕っており、

アレクはそんなヒナを必死で守ろうとしている。


私はそんな2人の兄として、守ろうと決めている」


「……りおんにいちゃ……」


「……りおん…おにいちゃ……」


ギルドマスターは息を呑んだ。


「だから俺たちが引き取ることを決めた。

創造神様や神獣様からの願いだ。

断れるわけがない」


「むしろ光栄すぎるっての!

命をかけて守ってやるよ!」


「子供は守るべきものです……」


「僕、全力で守ってやるぜ……!

そして、一緒に冒険に行くんだ!

世界の大きさを見せてやりたい!」


「僕も…この子達の兄になりたい」


(クロムらしいな。兄かーこれから増えそうだなー)


ギルドマスターはしばらく黙り銀翼を見つめた。

(銀翼が本気で守ろうとしている……

なら、ギルドマスターの俺も腹をくくろう。

フォレットのギルド総出で支えよう)


そして、今度はアレクとヒナを見た。


2人顔を合わせて、は佇まいをなおし、

お互いにうなずく。


「あれく…です。……おせわに……なります……」


「ひな…です。……ひなも……がんばる……」


「…………」


ギルドマスターが固まった。

「健気だ…」


そして――


「……よし。

銀翼のフェンリル。お前たちに託そう。

ギルドも全力で支援しよう」


「「「……!!!ありがたい!!」」」


「神獣の願いを断るほど、俺は愚かじゃない。

それに――」


アレクとヒナを見て、

ふっと優しく笑った。


「……こんな可愛い子たちを放っておけるわけがないだろう」


「「「マスター~~~~!!!!」」」


リオンは静かに頭を下げた。


「感謝する。

この子たちの未来を、共に守ろう。」


「はい。ここの冒険者は荒くれ者が多いですが、

心根は優しいやつばかりです。

銀翼が依頼で遠出するときは、ギルドで預かる。

やつらも、この子達を嬉々として支えてくれることだろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ