表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/39

【閑話】とある冒険者の視点 -銀翼と天使-

俺の名はロガン。

フォレットの街を拠点にして、そこそこ長く冒険者をやってる。

腕っぷしには自信があるし、魔物討伐依頼もよく受けている。

ここはそんな者達のたまり場。

ちょっとしたもめごともいつもの風景だ。


……だが、あの日だけは違った。


あの日、俺は“魔物より手ごわい”存在”を見た。


***


昼過ぎのギルドは、いつも通りの喧騒だった。


冒険者は時間関係なく、いつでも酒をのむ。

酒場の兄ちゃんがジョッキを運び、

新人が先輩に怒鳴られ、

依頼掲示板の前では取り合いの小競り合い。


「今日も平和だな〜」なんて思ってた、その時。


ギルドの扉が開いた。


銀翼のフェンリルが帰ってきたのが見えた。

あのA級パーティーだ。

強いし、人気もある実力者パーティーだ。

あのパーティーに憧れる若い冒険者も多い。

(まあ、目立つわな。


だが――

その後ろにいた“ちっこい影”を見た瞬間、

俺の脳が一瞬止まった。


「……え?」


銀翼の後ろに、

よちよち歩きの子供が二人が

一緒に入ってきた。


しかも、手を繋いでる。


しかも、びっくりして、あちこち見るのに忙しい様子。

めちゃくちゃ可愛い。


冒険者ギルドには、場違いと言ってもいい。


しかも、銀翼の連中が全員デレデレしになってる。


「なんだ……あれ……?」


周りの冒険者もざわつき始めた。


「銀翼が……子供連れてる?」

「いや、拾った?護衛依頼か?どっち?」

「てか、あの犬……なんか光ってねぇか?本当に犬か?」


(そう、長年冒険者をしている俺にはわかる。

銀色の大型犬――あれは、犬じゃねぇ。

あれは絶対犬じゃねぇ。

なんか神々しい。

目が青くて吸い込まれそうだし、毛並みが光ってるし)


でも銀翼は堂々とこう言い切った。


「犬だ!」


(……いや、それ、無理あるだろ)

苦笑してしまう。


そう思ってたら、事件は起きた。


***


子供たちが、ぎくしゃくしながら

ギルドの真ん中に出てきた。


手を繋いで、胸を張って、

小さく深呼吸して――


「「せーの……こんにちはーー!!

これから……おせわに……なります!!」」


ギルドが止まった。


本当に止まった。


酒を飲んでた奴はジョッキを落とし、

受付嬢は書類を抱えたまま固まり、

新人は鼻血を出し、

ベテランは涙ぐみ、

酒場のマスターは「今日は酒が売れる」と呟いた。


俺はというと――

胸を撃ち抜かれ、テーブルに突っ伏す。


「く、胸がくるしい……

な、なんだ……この破壊力……」


あの瞬間、ギルド全体が“尊さ”に支配された。


誰もが同じことを思った。


天使が来た。

こんな荒くれ者の巣窟に来た!

免疫のないものは、すべてやられたっ!


***


その後、子供たちは恥ずかしくなって

銀色の犬(?)の後ろに隠れた。


犬(?)は尻尾で二人を包んで慰めていた。


その光景を見た瞬間、

俺の寿命は確実に伸びた。


「尊い……」


「守りたい……」


「銀翼……羨ましい……」


ギルド中がそんな声で溢れた。


***


そして、とうとうギルドマスターが出てきた。


「……説明してもらおうか」


あの厳ついマスターが、

子供たちを見た瞬間だけ、

ほんの一瞬だけ目を丸くしたのを俺は見逃さなかった。

(あのギルドマスターもそんなところがあるんだな…)


銀翼が応接室に呼ばれ、

子供たちと犬(?)も連れていかれた。


扉が閉まった後、

ギルドはしばらくざわざわしていた。


「銀翼……子供守ってるのか……」


「いや、護衛依頼かもしれないぞ」


「なんか……いいな……」


「俺も真面目に生きようかな……」


「なんか俺、結婚して子供がほしくなってきた」


「まだ恋人もいねぇけどな!まあ、がんばれ!」


「天使……また来ないかな……」


その日、ギルドは仕事にならなかった。


***


後で聞いた話だが、

あの子たちは“アレク”と“ヒナ”というらしい。


銀翼の新しい家族だとか。


……いいな。


俺もいつか、

あんな風に誰かを守れる冒険者になりたい。


そう思わせてくれた日だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ