13.フォレット支部 冒険者ギルド
ギルドの扉を開けた瞬間、
酒と革の匂い、武器の金属がすれる音と、冒険者たちの笑い声がいきいきと聞こええてきた。
部屋広く、ワンホールにいろいろなコーナーがある感じだ。
真正面には人が並んでいるカウンターがある。
ここは、冒険者登録や、依頼の受託・報告、素材解体依頼をするカウンターのようだ。
女性がカウンターで対応している。
(すげー!素材解体カウンター、魔物が山になってる!
あれ、全部を倒したのか!オレもあれやりたいな−!)
アレクは自分が討伐した魔物を
「解体を頼む」とか言って積み上げる想像をして笑みが溢れる。
「いいな!それ!いつかやってみたい!」
右の壁には、依頼がたくさん貼り付けられており、
所々、ちぎった後が残っていた。
「先にきて、依頼確保しておいたぜ!」
「今日はやりたい依頼がないぜ~」
依頼は早い者勝ちらしい。
左が酒場になっている。
酒場になっている。
肉料理のいい匂いがする。あと、少し酒臭い。
依頼成功を祝う乾杯の声や、新人が先輩に怒鳴られている声、
「おい、こっちだぞー」と、待ち合わせで来た者を呼ぶ声、いろいろ聞こえてくる。
アレクは、昔読んだ異世界転生の小説を思い出して、
一緒だと興奮しだす。
(昔読んだ異世界転生の物語の中にしかなかった”冒険者ギルド”が、今、現実として目の前にある!!
そして、本物の冒険者が、こんなにいっぱいいるーーー!!
すっげーーーーーー!!)
「しゅげー!ぼうけんしゃ…いっぱい!かっこいい!
みんな…つよそう!!しゅげー!かっこいーーーー!!
おねえさんたち…みんな…きれい!!」
アレク、大興奮である。
まわりの冒険者は、
突然入ってきた”銀翼の冒険者”に目をやったところ、
小さい子供がいきなり自分たちを大絶賛するものだから、
照れ笑いしながら者、ガハガハ「そうかそうか!かっこいいか!」と、大喜びする者らが、アレクをあたたかい目でみる。
「なにあの子たち!銀翼が連れてきたって子ね!なんてかわいいの~~~!」
受付嬢はアレクの可愛さに悶えている……。
「アレクも男の子だな!冒険者、かっこいいよなー!憧れちゃうよなー!!」
フリードにも経験がある。
昔、クロムと一緒に魔物に襲われているところをジークに救われた。
それ以来、ジークに憧れ、
「オレらが強くなったらジークのパーティーに入れて!」と直談判して冒険者になった経緯をもつ。
アレクの小さな拳に力が入る!
「うん!すげーかっこい~~~!!」
(((((アレクに、無いはずの“しっぽ”が見えるきがする…。しかも、すごいちぎり飛びそうなくらいにぶんまわっていそうだ……かわいい)))))
「ぼうや、よく来たな!冒険者、かっこいいだろう!!
おまえさんも将来、冒険者になるのか?」
「うん!かっこいいよっ!おじさんもかっこいい!
おれ、ぼうけんしゃに…なるお!」
「ははは…ありがとうよー。でもおれ、まだおじさんって歳じゃないんだがなー」
まわりの冒険者が面白そうに笑っている。
(俺、この雰囲気、好きだな!わくわくする!)
「……こわい……」
そういうと、ヒナがアレクの背中にくっつく。
周囲の冒険者達たちの顔が緩む。
(((か、かわいい……)))
「2人とも、大丈夫だ。
ここにいるこいつらは皆、2人の味方だ。
……そして、俺らは冒険者だから、
これからよく来ることになる場所だ」
アレクはヒナの手をぎゅっと握る。
(はじめが肝心!)
「……ひな、いっしょに…ごあいさつ…しよ……?」
ヒナは小さく頷き、アレクの手を握り返し、横に並んだ。
「……おにいちゃ……いっしょなら……だいじょうぶ……」
2人は顔を見合わせ、
大きく深呼吸をした。
(((((なんだ?2人しようとしている。
面白そうだから、だまって見守ろう!)))))
***
「……ひな、いくよ!」
「……うん!」
2人は手を繋いだまま、
ぎゅっと胸を張って一歩前に出た。
そして――
ギルド中に響くように、2人で声を合わせて……
「「せーの……こんにちはーー!!
これから……おせわに……なります!!」」
その瞬間――
ギルドの空気が止まった。
酒を飲んでいた冒険者はコップを落とし、
受付嬢は書類を抱えたまま固まり、
新人冒険者は鼻血を出し、
ベテラン冒険者は目を潤ませた。
「”せーの”って言った……なにあれ、可愛い!」
「……天使……?」
「手ぇ繋いでる……手ぇ繋いでる……!」
「“おせわになります”って……!
なんだその破壊力……!」
「あれ、すげー頑張ったんだぜ!
こんな荒くれ者の吹き溜まりで、
ちゃんとご挨拶できた。
えらい!えらいよ……う~っ泣けてくる」
ギルド内の冒険者たちが、
“おちた”瞬間だった。
「は、はじゅかしい……っ!!」
「うん……でも…ひな、うれちいっ!!」
「ご挨拶できて偉いな!」とか、
「よろしくなー!」とか、
ギルドの反応にびっくりしたアレクとヒナは、
同時にリオンの後ろへダッシュ。
ぴたっ とリオンの背中に隠れる。
「ひなも、ごあいさつ…できたな…えらいね!」
アレクが優しく、ヒナの頭をよしよしする。
「……はじゅかしかった……!
でも、おにいちゃ…と、いっしょだから…できた!」
リオンは尻尾で2人を包むようにしてねぎらう。
「2人共、よく頑張った。
とても立派だったぞ」
「「「尊い~~~~!!!!」」」
***
その勇気に冒険者達は感動した。
「見たか!?あの勇気!!」
「手を繋いで励まし合ってたぞ!!」
「“おせわになります”って……
俺、今日から真面目に生きる……!」
「銀翼のフェンリル、子供連れてきたってマジか……
いや、あれは連れてきたんじゃない……
守ってるんだ……!」
受付嬢の仕事そっちのけで悶えている。
「可愛すぎて仕事にならないんですけど……!」
「今日は酒が売れるな……!」
ギルド内の酒場のマスターもホクホクである。
ギルド全体が、
“尊さ”という一つの感情で支配された。
***
その時――
ギルドの奥から、
重く威圧感のある足音が響いた。
ドン……ドン……ドン……
足音と同時に、
ギシッ ギシッと
床のきしむ音がする。
ギルドの空気が一瞬だけ張り詰める。
「……おい、銀翼のフェンリル。
ちょっと来い」
「ギルドマスター……!」
ギルドマスターは腕を組み、
アレクとヒナ、そしてリオンを見て眉をひそめた。
「……説明してもらおうか。
お前らがその犬だったか?と子供を連れて帰ってきた理由をな」
「……りおんにいちゃ……?」
「……こわい……」
リオンは2人の前に立ち、
静かにギルドマスターを見つめた。
その瞳は――
神獣の威厳を宿した、神秘的で深い青い色。
「……っ!?
な、なんだこの犬……いや……犬じゃないな……?」
(深い青い瞳……!!!まさかっ!まじかよっ!)
ギルドマスターが握っていた階段の手すりが、圧力をました手の力できしむ音がする。
「マスター、落ち着いてくれ。ちゃんと説明する」
「……よし。ギルドマスター室に来い。全員だ」
「「「「「了解!!!」」」」」
「アレク、ヒナ。大丈夫だ。我がいる」
「……うん……!」
「りおんおにいちゃ……いっしょ……」
「「「「「かわい~~!!!!」」」」」




