10. A級冒険者パーティー ”銀翼のフェンリル”
人間の冒険者パーティーが駆けつけ、
大樹と八重を守ってくれたおかげで、
どうにか変異個体の魔物を倒すことができた。
ひと悶着あったものの、
さっそくリオンが冒険者パーティーに話しかける。
「改めて、この2人を助けてくれて感謝する」
「2人とも、こちらへおいで」
促されるまま、大樹と八重が冒険者達の正面に立つ。
大樹は正面に立ったが、八重は大樹のへばりついて、
大樹の後ろからこそっと顔を出している。
(((((かわいい……)))))
「すまない。この子は人見知りなんだ」
「いや。そんな姿も可愛いと思ってな」
「「「「うんうん。」」」」
そして、早速自己紹介からはじまった。
***
メンバー全員、
今の状況にかなり驚いていた。
昔聞いた物語の中の神話の守護獣そのものの姿。
銀色に輝く毛並みは柔らかそうで風に揺れる。
瞳の色は深い青で吸い込まれそうだ。
立ち姿もかっこいい!そんな存在が今、目の前にいる。
冒険者達は、正直興奮してた。
さっきの戦闘もすごくきれいで、圧倒的につよかった。
思い出すだけで高揚して手が震える。
そんな手を押さえて、
自分達の自己紹介をはじめる。
一人の冒険者が一歩前に出る。
「私は、A級冒険者パーティー”銀翼のフェンリル”の
パーティーリーダーをしている、”ジーク”という。
神獣フェンリル様にお会いでき、
一緒に戦えて光栄に思います。
君達2人も無事でよかった。
これからこちらの自己紹介をさせもらいます」
フェンリルと二人の子供がうなずくのを確かめて、
メンバーに次を促す。
次に前にでたのは、
「オルガだ。斥候をしている。
神獣フェンリル様にお会いできて光栄だ。
君達2人に会えたこともうれしく思う。」
「エルミーです。私は弓を使います。
フェンリル様にお会いできてうれしいです。
私はエルフの血が濃く、精霊が騒いでいたので
なにがおこっているのかとても気になっていました。
君達2人にあえて光栄だよ」
「フリードです。
神獣フェンリル様、お会いできて光栄です。
君達2人とも、怖かったろう。よく頑張ったな!」
「クロム…です。
感動してます。神獣フェンリル様に出会えたことに感謝します。
君達怪我がなくてよかった…可愛い……」
その神獣の隣に立つ幼子2人を見て、
息を呑んだ。
「……なんで神獣フェンリル様が……子供と一緒に?」
「この状況であんな小さな子が、よく泣かないで我慢で来たな……すごい子達だぜ」
「……精霊たちが……あんなに寄り添ってるいます……。精霊たちも助けたかったのでしょうね」
少年2人は、怯えさせないように、笑顔でアレク達に手を振っている。
***
リオンは考える。
(私は誇り高き神獣だ。
だが……この子たちは人間だ。
人間の未来すべてを背負えるほど万能ではない。
この子らには、人の世界で、人の温かさに触れてほしい……
この世界の暖かさを感じてほしい。
それが、この子たちの幸せにつながると思っている。)
その為リオンは、
戦闘時から冒険者たちの匂いで、それぞれ魂の在り方や状態を
確認していた。
そして、出た結論は、この者らなら、
どんな危険があったとしても、守り切ってくれるだろうと思う。
男のみのパーティーだからこそ、
大樹にとっては、自分が目指す対象が目の前にいれば、
よい刺激となるだろう。
きっとこの者達らなら、大樹にいろいろ教えてくれるだろう。
八重はにとっては、男所帯でこんなに可愛い幼い八重がいれば
絶対的な保護対象だ。過保護になりそうだが、八重にはちょうど良いだろう。
今後、何に巻き込まれたとしても、
全力で守ってもらえる頼りになる家族になるだろう。
そこまで考えて、リオンはあることを決意したのであった。
***
”銀翼のフェンリル”達(銀翼)が周囲を確認している間、
リオンは幼子2人を木陰へ連れていった。
「……大樹、八重。
これから銀翼の者たちと話す。
だが、転生のことは言えない」
大樹
「なんで……?」
「理解されない。
危険を招く。
だから――“記憶がない”ということにしよう」
八重はリオンの胸元に顔をうずめる。
「てんせいって…なに?」
八重は過去を覚えていないようだった。
それならそれでいい。
「だいじょうぶ…だ。にいちゃが…まもるから」
大樹が八重を抱きしめ、
リオンは優しく微笑んだ。
「わかった!」
大樹はこくりと頷く。
八重
「おにいちゃたちと……いっしょ……なら…いい」
大樹
「うん。ずっといっしょだ」
リオン
「ありがとう。さあ、行こう」
***
「まず、こちらの自己紹介をしよう。
私はもう気づかれているだろうが
神獣フェンリル。
ある事情で子供達を守っている。
この子たちは記憶を失っている。
名前も、家族も、何も覚えていない
なので、名乗れないのは許してくれ」
「「「「「……っ」」」」」
「そんな小さな子が……」
「記憶喪失……か……それは不安だろうな」
「……かわいそうに……」
「怪我はないか?大丈夫か?」
「僕……泣きそう……」
リオンが今度はこちらの番だと
大樹と八重を後ろから軽く押し、促す。
「2人とも。挨拶を」
大樹はよちよちと前に出て、胸を張る。
「……おれ……なまえ……わかんない……
でも……このこ…の、おにいちゃ……です!」
「ちゃんと兄として妹を守って偉いな!」
「かっこいい兄貴だぜ」
「可愛すぎる!!」
「お前、すごいな!」
「尊い……!」
続いて八重。
「おにいちゃ…の、いもうと…です。
おにいちゃ!だいすき…です…」
「「「ぎゃあああああああ!!!!かわいいーーー」」」
「天使…がいる…!」
***
リオンは静かに銀翼のフェンリルへ向き直った。
「……頼みがある」
リオンは先ほどの決意を言葉にする。
「な、なんでも言ってください……!」
「この子たちは、我が守ってきた。
だが――この子らは人間だ。
人間の中で生き、人間の温かさを知るべきだ。
それに、この世界の暖かさを感じてほしい。
それは生活の中や人々の中でいることでしか感じることは出来ないと思っている」
銀翼の5人は息を呑む。
「冒険者としての経験、
人としての生活、
この世界の常識も覚える必要があるのだ」
そして、静かに言った。
「ゆえに……、――この子たちそなたらのもとで預かってほしい」
「……神獣様の……直々の願い……。
我らは武骨な冒険者ですが、我らでよろしいので?」
ジークは一瞬、
昔救うことが出来なかった子を思い出した。
今度こそ、この手で守りたい。そんな感情が一瞬よぎった。
「我はその者のにおいを嗅ぐことで、
その者の魂の在り方や状態が分かる。
それに、先ほどの子供を優先して保護し、
落ち着かせようと心を砕く姿勢。
我はそなたらに託したいと思ったのだ」
「……!!そう言っていただけて気恥ずかしいですが……
了解です!
貴方が大切に思っているこの子達は、
私たちが引き受け、守りましょう!」
「そんなの……断れるわけねぇだろ……!」
スラム育ちのオルガは、幼いころから年下の子供の面倒をよく見ていた。
(両親がいない子も多くいた。親にはなれる自信はないが、兄貴くらいにはなってやれる)
「……私たちが……守ります……!」
エルフにとっては、子供は種族全員で守る対象。
人間の中で育ったエルミーの魂にもその考え方は刻まれていた。
「オレも全力で…守るよっ!」
(おれもあの2人の兄貴になるぜ!いろいろなことを教えてやりたい!)
「僕も……!」
(僕達がこのパーティーの中で年少組みだから、
下に兄弟ができるみたいでうれしいな)
パーティーみんな、
それぞれ自分の物語を持っている。
それは、思い出であったり、境遇によるものだったりと様々だ。
もちろん、それらには、いい思い出もあれば、心の傷となるものもあるだろう。
だからこそ、思うこともあるようだ。
リオンは続けた。
「もちろん、我も一緒に行くぞ。護衛に」
「「「え!?!?」」」
そして、体に神聖力をはわせ、ほのかに体が光ると、体が小さくなり――“大型犬”サイズとなった」
「これで大型犬として行ける!」
「どうだ?」とばかりに誇らしげに胸を張るリオン。
耳が得意げにぴこぴこ動き、尻尾が揺れてる。
(((((やばい、リオン様が可愛すぎる……でも、絶対言えない……)))))
銀翼のフェンリル全員、限界まで抑えながらもだえた。
そして、気になるのはそこだけではない。
「「「「「大型犬~~~~!?!?」」」」」
(((((いやいや、こんな神々しい犬、いないからっ!)))))
リオンは尻尾を揺らしながら言った。
「この姿なら、人間社会でも問題ないだろう?」
(((((いやいや、問題あるだろっ!)))))
「可愛い……
いやいや、神獣様が……大型犬……!?
犬にしては、神々しいのですが……」
「最高かよ……!戦力アップ!」
「……触りたいです……」
「わぁ!もふもふ…!抱きつきてえ…」
「天使が増えた……!」
***
ジークは深く息を吸い、2人の前にしゃがんだ。
「……記憶がないなら、名前が必要だな」
大樹と八重は不安そうに見上げる。
ジークは腕を組み、真剣に悩む。
「強くて、優しくて……
この子たちに似合う名前……」
そして――決めた。
「君は……守る者。
妹を守ろうとする強い心を持っている。
だから……」
「――“アレク”。守護の意味だ」
「……あれく……?
おれ……あれく……!!」
アレクは、名前の由来にも喜び、空高くガッツポーズをする。
「おれ、あれくーーーーー!!」
その瞬間、風がふわりとアレクの髪を揺らした。
誰におめでとう!と祝福したようにアレクは思えて、天に向けて笑った。
「おにいちゃ……あれく……!かっこいい…おなまえ」
「「「「「尊い~~~~!!!!」」」」」
続いて八重の名付け。
「君は……柔らかくて、温かくて、
その笑顔は周りを幸せにする子だ」
「――“ヒナ”。
大切に育てたい、小さな光……という意味だ」
「ひな……!
かわいいなまえ……ありがとぉ……!」
ヒナはもじもじしながら、笑顔を振りまく。
(((((かわいいな~もう!よかったね~)))))
その瞬間、風が今度はふわりとヒナの髪を揺らした。
そのさやしい風にヒナは、あははっ!とくすぐったそうにわらった。
「ひなってなまえ……かわいい……!よかった」
そういって、アレクはヒナの頭を撫でてやる。
「うん!ひな、うれちい!」
そういて、突然ジークに抱き着いた
ジークはぷるぷるしながら、ヒナの頭を撫でてやる。
「「「ぎゃあああああああ!!!!うらやましいぃぃぃーー」」」
***
「神獣様。
アレクとヒナは、俺たち《銀翼のフェンリル》が責任を持って育てます」
「……ありがとう。
君たちに託せれば、私は安心だ」
「任せろ!」
「いっぱい可愛がります……!」
「オレ、魔法でおもちゃ作ろうかな……!」
「僕、毎日お祈りする……!」
「おれ、おにいちゃだから……がんばる……!」
「ひな…うれちい…がんばる……!」
「「「「「これから家族だ~~~~!!!!よろしくなーーー」」」」」
「……よろしく頼む」




