あんたは頼りになるわよ(未来)
「荒野の乙女」は囲まれていた。守りの態勢をとる中からソユンが、その輪の中からふらふらとではなく、ちゃんとした足取りで出ていってしまった。しばらく歩き、彼女達を取り囲む一隊、「炎のドラゴン」のメンバーの前まで来ると向き直って、
「全くお馬鹿さん達だねえ。こんなにあっさり騙されるなんて。私はね、最初からあんたらの仲間でも何でもなかったんだよ。『炎のドラゴン』のメンバーなんだよ。あんたらの情報を流し、おびき寄せるために入り込んでいたのさ。あんたらが、うちのパーティーを馬鹿にしたのが悪いんだよ。」
とせせら笑うように言った。彼女の肩を抱いて、リーダーのフサンが、
「俺を馬鹿にした償いはさせてもらう。年増は年増相応に、若いのはその若さを、楽しませてもらうさ。」
とせせら笑った。それに和してパーティー全員の笑い声がこだました。
「全く、あんたの言ったとおりだね、エスペランサ?」
とドローレス。
「全く分かりやすい女だったわね。」
はエスペランサだった。
「なんだい?最初から知っていたと言うの?まあ、それでもどうにもならないわよね。結局、騙されたのとは変わらないじゃない?」
とソユンはドヤ顔で言い、フサンはニヤニヤと笑っていた。ニアニアは、パーティー全員がそうだった。いや、全員ではなかった。
「そう思う?じゃあ、力づくでやって見なさい。みんな、大丈夫だから。言ったとおりにやれば大丈夫よ。みんな、十分強くなっているんだからね。」
全員、必死な顔で頷くのを見てドローレスは微笑んだ。
「自信だな。勇ましいな。だがよ、人数の差は大きいぞ。」
とフサンは、自分のパーティーの面々を振り返って自分の方が自信満々そうだった。
「じゃあ、行くぜ。もう後悔するなよ。」
待ち構えるエスペランサ以下「荒野の乙女」に「炎のドラゴン」が襲い掛かった。「荒野の乙女」は連携をとる態勢を完璧に取っていたのに対して、「炎のドラゴン」はそれがかなり欠けていた。
「おい、どうした?女1人に手こずっているわね。」
エスペランサは、笑って数人を相手にして、手傷を負わせて、素早くその場を去った。彼女は、他のメンバーが陣形を作って戦っている中、そこから一人離れて、彼女達を助けるように、陽動、危ない所を助け、相手の後方に回って攪乱しまくった。彼女の動きを止めることの出来る者はいなかった。彼女の援護で、「荒野の乙女」は善戦していた。人数の差、ランクの差が圧倒的であるのに、それは驚異的ともいえた。それでも、次第に戦いは膠着状態になりつつあった。このままでは、劣勢になりかけていた、その時だった、変化が起きたのは。
「お前ら、何ぼさっとしているんだ。戦え!」
との声が聞こえて来た。続いて、
「悪いけどさ。俺、こんなことは賛成しかねますわ。」
「私も、女狩りなんて御免こうむるわ。」
「こういうことは、よくありませんからね。いい加減、我慢できなくなったんだよ。」
「私も、こういうことからは手を引かせてもらうよ。」
という声が聞こえて来た。
これで、「ドラゴンの炎」のメンバーは動揺した。そこをついて、エスペランサはここぞとばかりに攻勢にでた。
「なんだ?」
「何よ、急に。」
と彼女に対して防戦一方になった「炎のドラゴン」のメンバー達は、他のメンバーに助けを求めようと視線を向けたが、リーダー以下、やはり攻勢にでた「荒野の乙女」に押され気味となり、手助けにくる余裕はなくなっている状態だった。
そうなると、焦り、身がすくんで平常の戦力がでなくなる。隙ができる。
「うぐ。」
「キャー。」
と火球をぶつけられると同時に剣で切り裂かれて、3人が倒れた。
「どうする?」
とエスペランサは、ハーフ・オーガの女戦士の喉元に剣を突き付けた。獲物を落とし、片腕は傷で動かない、激痛ががんがんと感じる。
「このまま逃げなさい。そうすれば、見逃してあげるわよ。」
彼女がそう言うと、彼女はことばにならない声を上げて、身を翻して逃げていった。彼女には、エスペランサに勝てないと本能的に感じたのだ。これを見て、聞いて、他のメンバーの動揺が一層激しくなった。1人が逃げだした。ドローレスが、渾身の魔法攻撃を放つ。1人が倒れて、何人かが手傷を負った。エスペランサが、いつの間にか後方にいた。1人が声もなく倒れた。そこで、完全に総崩れとなった。
フサンは、ソユンともう一人の女が残るだけになって、呆然となっていた。女達は、震えるばかりだった。
もう、その後は一瞬だった。叩きつけられて、3人は裸で縛り上げられた。
「全く、あんたは本当に頼りになるわね。」
ドローレスがエスペランサに声をかけた。
4人の離反者も事前にエスペランサが、接触して離反を促していたのである。彼らの不満を察していたのだ。
「それにみんなが強くなったのも、適性を見てあんたが教えてやったからだし、本当に面倒見がいいと思ったよ、連携の仕方もそうだし・・・。本当にたいしたもんだよ。」
と続けるドローレスに、
「そんなことないわよ。」
と苦笑して返すと、
「そんなことありません。エスペランサさんのお蔭です。」
という声が多数上がって来る。
「おいおい、私のことも褒めてくれよ。拗ねるわよ。」
とドローレスが笑いをとった。
全員、「炎のドラゴン」の倒れているメンバーの手当をしながらのことだった。かなりの重傷者もいたが、この時点では誰も死んではいなかった。
それを見て苦笑いしながら、自分が倒してうめき声を出している連中の手当を手際よくしていた。
「あの、糞勇者も・・・。あいつ、よく見破って・・・したたか悪だったな、今考えると。」
と処刑前のことを思い出していた。




