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女魔法聖騎士は復讐とやり直しのため過去と未来に(処刑は自業自得なのだけれど)  作者: 安藤昌益
行動開始

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屑勇者と淫乱聖女め(過去)

「なにやっていやがる。」

とグレイスは心の中で舌打ちをした。


 明日は一日休養をとって、その翌日旅立つ、魔王討伐の旅に、ということで、領主などからの差し入れもあり、勇者パーティーの面々は大いに呑み、食べて、騒いでいた。市が提供してくれた宿舎の大広間だった。勇者フレブレはというと、この地の自慢の酒、ここでもビールだったが、修道院で作っている秘蔵の奴だった、をジョッキで2杯、同様に自慢の郷土料理、イノシシ系魔獣のブラックハバリの肉を野菜と米で炒めた料理とそのスープだったが、大皿でお代わりして、呑んで、食べ、

「これ以上、呑んで、食べると、味が分からなくなるから、このくらいでやめておくよ。みんなは、ゆっくりしていてくれ。ただ、羽目を外して迷惑だけはかけないようにな。」

と言って立ち上がって、その場を出て行った。

「こいつは何時もそうだ。」

 いい酒、いい料理を美味く楽しむんだ、などと言いながら、遠慮もなく注文する。それも田舎の酒、料理をだ。それを美味かったとか口にしている。

「わが地自慢のものですが・・・勇者様にそう言われて光栄です。」

と言われて喜んでいるが、

「あの勇者、味が分からないんじゃないか?」

と後で誰もが馬鹿にしている。

 グレイスは、思っていた。


「勇者様は、いつでも節制しているな。」

「でも一番高いのじゃない?贅沢好みじゃない?」

「お前達のようにがぶ飲みしているのと比べると、結果として勇者様の方が安くついているぞ。」

 窘めるというか、指摘したのは栗色の髪の賢者だった。トルポ・モートン。長身で、いかにも名門で育ちがいい、端正で知的な栗色の髪、物腰も柔らかで、毒舌家でもあるが、女性から慕われることも多い。その彼は、有名な銘柄のワインを注文する。呑む量は控えめだが、値は張る。グレイスはと言うと、そのワインも飲むし、地元のワインもビールも飲む。

「勇者様は、実に美味そうに呑むし、食べるから、作っている奴らによろこばれているからな。」

 ふん、と鼻で笑い、偽善者が、単なる贅沢者で田舎者なんだよ、と罵った、グレイスは心の中で。

 そのうち、あることに気が付いた。

「おや聖女様は?」

と声をだした。皆、

「あれ?」

という顔だった。

「もしかしたら勇者様と2人で・・・。」

という声がした。女達の半ば近くが、その声の主を睨みつけた。

「まあ、朴念仁の勇者様に限ってそういうことはないんじゃないの?」

とグレイスが言うと、その女達も納得した、納得しようとした、顔になった。

「あいつは、誰も選ばなかった。だから、女達は全員・・・。」

と彼女は心の中で指摘した。


 それでも少し気になった。しばらくして、気が付れないように席を立って2人を捜した。運がよかった、というか、2人とも考えが足りないのか、庭に出て少し捜すと、小庭園に植えてある木の影にいるのを見つけることができた。こっそり近づき、少し離れた木の後ろから様子を探った。


「そ、そんなこと言われても・・・あ、とても嬉しいですが・・・私のような者ではとても勇者様の妻にはふさわしくありません。各国の王女様方からの求婚がきっと・・・。」

という聖女オスクラの声が聞こえてきた。かなり長身、女としては、で黒髪の、まさに聖女の外見というような清楚な美人で、知的で、静かで、ちょっと冷たいような感じもする美人だった。性格、言動はかならずしもそうではなかったが。戦う聖女、戦いに夢中になる聖女、いつの間にか前衛になっているという女でもあったし、結構感情的になることもあった。

「そ、それに・・・今は魔王討伐の旅の途中。何時命を落とすか分かりませんわ。こういう時に・・・。」

 何を言っている?勇者フレブレは、いつ死ぬか分からない身で或る故に、パーティー内の女性の想いにも気づきながらも、各国からの王女や王族・公爵クラスの令嬢との婚約話も、今は魔王を倒すことで頭がいっぱいと言って断っていた。その態度が女達を苛立たせて・・・。だったはずなのに?とグレイスは疑問を持った。

「いつ死ぬか分からない、私も君も。その時になって想いを告げられなかったことで後悔したくないんだ。それとも、私が君を愛していることは迷惑なのかい?」

 はー?こんな恥ずかしいことが言える奴だったか?この屑勇者は、と彼女は心の中で叫んでいた。

 しばらく、間があった。

「わ、私もずっと前から勇者様のことが好きでした・・・でも・・・やっぱり、王女様達との方が・・・。」

「私は、どこか辺境の小領主として余生を過ごせればと思っているんだ。勇者の存在は、魔王を倒した者は色々と脅威でもあるからね。下手にどこかの国の王女と結婚しては、野心を疑われて危険視されかねない。それより、愛する君と慎ましく過ごしたいんだ。それとも、辺境の小地主の私では嫌かな?愛せないかい?」

「そ、そんなことありません。ああ・・・そんな目で・・・顔が近いです・・・ああ、もうだめ・・・。勇者様、あ、愛しています。勇者様となら、どこでも幸せです。一緒に連れて行ってください。私を愛して下さい。」

 何言っているんだ?とまた彼女は心の中で毒づいた。チラっと見ると、月明かりで2人の影が溶け合い、口を吸い合っている音が微かに聞こえて来た。

「何やっているのよ。淫乱聖女。」

と心の中で目いっぱい叫んだ。何でこうなったのか?聖女に勇者が告白するということはなかったはずである。どうして、前回と異なっているのか?まただ。と彼女は頭が混乱した。その一方で、聖女は仲間としては使えない、勇者もろとも殺す方法を考えないと、と頭の中が回転を始めた。

「かえって他の女達には、いい結果となるか?」

と思った。が、それは翌日、

「昨夜、聖女様に求婚して受け入れられた。魔王を倒したら、直ぐに結婚することにした。」

とパーティー全員の前で勇者が、真っ赤になって恥ずかしそうに、かつ、幸せそうに寄り添う聖女の肩を抱きながら、照れた顔で説明した時に裏切られた。パーティーの女達の半ばは、失望と嫉妬を感じてはいたが、何か諦めがついたという表情だったし、口ぶりからもそう感じられた。少なくとも、勇者へのわだかまりが強くなったとは感じられなかった。

「ふん。取られて諦めるのかよ。」

と彼女は心の中で毒づいた。

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