また・・・か(過去)
勇者が肩で息をしているのがわかった。聖女に魔王の止めをうたせたのも見た。
「やはり、かなり疲れている。でも、前回ほどではない・・・か。」
前回は。さらに声をかけ振り返ったところを。ロンギヌスの槍で突き刺した。あの時は完全にフラフラだった、少なくともそう見えた。今回は、かなり疲れているようだが、前回より余裕があるように見えた。ここで勇者を殺しても、今回はそばに聖女がいる。前回はね完全にパーティーを自分が掌握していた感があったが、どうも前回ほどパーティーメンバーの気持ちが強くない、勇者を殺すことにだ。とはいえ、後者は勇者が死んでしまえば、自分も同じ気持ちだったと言って自分にすり寄って来ると確信していた。ここにいる聖女は?少しは心が動揺しているはずだとは確信していたが、勇者殺しを容認しているわけではない、前回と違って。
「悪い。でもね、勇者は、皇女との結婚を約束していたんだよ。」
と言って、彼女が自分の行動を躊躇したところを、その隙をついて殺せばいいだろうと、前から考えていたがあらためて決めた。
問題は、今回の勇者殺しだ。前回よりかなり難しくなっている。一撃に、全ての力、精神を、魔力を込めたロンギヌスの槍の一撃、それに全てをかけなければならない。
「この一撃に、私の全てを賭ける?」
その時になって疑問を感じた・・・ということはなかった。もう割り切っていた。更なる上を目指すには、勇者を殺さなければならない。今凱旋したら、結局は勇者パーティ―の一員、よくてその中でも最強クラスの一人でしかないのである。そう彼女は確信していた。上に行きたい、それは考える必要がないほどのことだった。
渾身の力をロンギヌスの槍に込めた。槍は一瞬だが、勇者の力ですら封じ込める、かなり疲れていればだが、ことができる。そして、それで突き刺し、その力を解放すれば、勇者の力が復活しても、その海部力を上回る破壊力を発揮して、彼を詩に追いやることができる。前回はできた。今回は、それを上回る力を注ぎ込み、精神を統一していた。
「グレイス殿か。其方は終わったのか?助けに行けなくて悪かった。あんなことを言って、結局魔王を倒すのに時間がかかってしまった。」
と言って振り向こうとした。その一瞬をつき、彼は油断していた、少なくとも油断しているように見えた、槍を突き出した。
渾身の力と精神を込めて、ロンギヌスの槍を今までにないくらいの早さで、前回よりもずっと速く突き出した。ぎりぎりまで、殺気も魔力も隠していた。それは成功していたはずだと、彼女は確信していた。
何か違和感を感じた。何かの衝撃を受けた、手にかかる重さがかなり小さくなったち感じた。次に、床に何かが落ちる音がした。ロンギヌスの槍が半分になっていた。そして、勇者の姿が目の前になかった。目をつぶったわけではない。が、消えているのに今気が付いた。
「残念だよ。君は、今回も私を裏切った。どうしてわかってくれなかったんだ。」
と勇者の声が耳元で聞こえてきた。
「へ?」
と思ったが、声がでなかった。声がでることはなかった。
「もう一度・・・それがあったら、その時は考え直してくれよ。」
という勇者の声が聞こえて来たのであるが、目の前が真っ暗になってしまった。
血を吹き出したグレイスの体が、床に倒れたのは、それからそんなに時間はかからなかった。
「どうしてこんなことになるんだ。き、君は本当に馬鹿野郎だよ。」
と嗚咽のような勇者の声が振り絞られるように出ていた。佇む彼に、
「勇者様。」
と聖女は急いで駆け寄ってきた。絶対に手遅れではあったが、彼女はグレイスに回復魔法をかける気は全く思いつくことはなかった。
「君は・・・君は、本当に馬鹿だよ。次こそは・・・。」
と勇者はは彼女の耳元で呟いた。
「お前も、二度目?どうして?」
グレイスの頭に、その思いが浮かんだが、そのまま記憶がなくなった。




