聖女を殺すのかい(未来)
助けて
「流石に2人がいると楽に進むな。」
とパーティーメンバーの大柄な男が大声で言った。
彼は大楯を軽々と持って、パーティーの防御を担当していた。わりと、防御を主とするメンバーがリーダーというのは珍しい。攻撃に秀でたものがリーダーという場合が多い。後方とか、全体を見回す立場からの方がリーダーに相応しいと思えるのだが、どういうわけかそうはいかないのである。魔道士もリーダーということは少ない。
幼児ゴブリンの大集団が現れたので助けてほしいという一般のゴブリンからの要請があったからである。一般のゴブリンというのも可笑しいが、一部周辺の人間や他の亜人と共存して生活している一団もいた。その彼らからのギルドへの要請があったのである。
その仕事を受けたパーティーは、新規の臨時加入を募集した。それにエスペランサとフィエラが応募して加わったのである。
2人は、特に連携はとらなかったが、次々に、狡猾で、力の強い、その小柄な身体からは意外過ぎるのだが、統制のとれた幼児ゴブリンを葬っていった。
彼女ら臨時加入6名も含めて16人のパーティーだったが、2人が殺した幼児ゴブリンがダントツに多かった。
次々に魔法を纏った剣で無造作に切裂いていくエスペランスは、双手剣と蹴り、時には剣、稀には牙で斬り、飛ばし、砕き、髪切るフィエラを時々火球やかまいたちで援護していた。それが、普通に、当然、片手間に、自然にやっているという感じだった。それでなく、他のメンバーの援護も、拾った石ころを投げたりしてまで行い、後方の魔導士、弓手の攻撃の補助も行っていた。援護してもらってるフィエラはというと、エスペランサの援護がうまくいくように、最大効果が上がる鵜に動いていたし、後方に幼児ゴブリンがいかないように立ちはだかるように動いていた。
「なんか、俺達とはレベルが違うって感じだな。まるで、もっと大きな、凄い相手と戦っていたという感じだな。」
とリーダーがため息交じりに言うと、
「まあ、確かに・・・ちょっとかなわないかもね。それに確かに助けられたしね。」
と日頃上から目線の自信家の魔導士の女も認めるように、ちょっと悔しそうに、ほんの少しだけ敬意を示すように言った。
「グ・・・エスペランサってさ、前からそんなんだった?随分面倒見がいいけどさ。」
とフィエラは不思議そうに言ったのは、幼児ゴブリンの牙や爪、そして証拠の鼻を切り取り、削り取っていたいる時だった。
「ふん。私は変わっていないわよ。昔からこうよ・・・多分。大体、あんたは勇者のそばにばかりいたからわからなかったんじゃない?」
とぶっきら棒にかつ、つまらなそうにつぶやくように答えた。
「ふ~ん。たしかに、そうかもね。勇者も・・・エスペランサのこと、随分買っていたもんね。頼りになるって・・・あんたがいればみんなも大丈夫とか言っていたな。彼女には、十分な恩賞を貰えるように、伯爵位、それに見合う領地をとか言ってたしね。」
窺うような表情でフィエラは、エスペランサを見た。エスペランサは素早く動いた。剣先が、フぃエラの喉元に突きつけられていた。微動だにせず、少し冷や汗を出しながらもおちつき払って、ため息を一つついてから、
「危ないな。ちよっと慌てて動いたら死んでいたよ。」
と言い放った。
「別に死んだっていいんだけどね。もう二度と昔のことは言うんじゃないよ。」
とエスペランサは冷たく言った。それから、剣を鞘に戻した。
「う~う、怖い、怖い。わかったわよ。もう言わないよ。」
と彼女は少し震えながらも答えた。しかし。それは少し芝居がかっていた。
「どうして、そんな奴が勇者を暗殺したのかね。まあ、あたいもあいつの口車に乗ったわけだけど・・・あ、聖女もだな・・・。う~ん、やっぱり信頼感があったのかな?」
そんなことを彼女は心の中で呟いていた。
「私は、こんなだったけ?」
エスペランサは、野営で自分の寝袋に包まりながら考えていた。確かに周囲のことを考えずに、自分だけの手柄を求めて戦うということはなかった。それはあくまでも、自分だけでは戦いというものは勝てないと知っていたし、貴族たるもの家臣を従い、将とまではいかなくてもそれなりの部隊の長、いや小部隊の長ともなれば、部下達を掌握、被害を最小限にして戦う、行動する、指揮しなければならない。それに、悪い評判を立てられては色々と不利だということもある。そういうことを知った上で行動してきた。
「今は?」
仲間を守ってやっている、そんな気もしているようだった。
「浮かれているな。」
全て忘れることにした。この生活が、仲間とともに冒険者としての生活を楽しく思い始めている自分を、忘れることにした。
「やっぱり行ってしまうのかい?」
彼女に対抗心を持って、敵視するようなことを言っていた女魔導士の女、アラサー女である、もいかにも残念そうな表情で言った。
「みんな、このまま一緒に仕事をしたいって・・・。私も、あんたならパーティーの副リーダーとして認めるんだけどさ。」
とまで言った。その言葉に、少しホロっとするところがあった自分に少し戸惑ってしまったエスペランサはだったが、
「聖女様に頼まれこけとがあってさ。それが終わって縁があったら・・・、加入していいかい?」
とリップサービスで、心の中でそう言い訳しながら言うと、
「それなら嬉しいよ。きっとだよ。楽しみにしているよ。」
と本心から嬉しそうな顔をされてしまって、彼女は少し寂しく思ってしまった。
「なあ、やっぱり聖女を殺すのかい?結構楽しそうにも見えたけど・・・このままやっていくのもありじゃない?」
というフィエラの言葉を無視して、
「聖女の所に、積もる話をしに行くよ。」




