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女魔法聖騎士は復讐とやり直しのため過去と未来に(処刑は自業自得なのだけれど)  作者: 安藤昌益
行動開始

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グレイスは知らない(過去)

 魔界を進んだ勇者とそのパーティーが魔王城に侵入する前の大きな戦い、副魔王と魔王子とその妃が率いる軍との遭遇だった。

 陣頭指揮で突っ込んで来たのは、魔王の息子、魔王子だった。魔王の子供が彼だけだったのかということはわからないが、前後関係から彼がその嫡子とされていたことだけは確かなようだった。巨大な鶉のような体で、魔導士タイプという感じだった。彼の親衛隊が彼を守り、後方から強力な魔法攻撃を行った。巨大な火球、雷球が、一つ一つの威力も半端でないのが容赦なく連発で、しかも同時に多数で放たれた。雷も、真空のかまいたち、氷や土の槍が無数に飛んできた。近づけば、攻守一体の防御結界が立ちはだかる。流石に魔王の嫡子という奴だった。真向から挑んだ勇者は、魔法攻撃をはじき返しながら進み、次々に立ち塞がる魔王子の親衛隊を数人ごとなぎ倒してさらに進み、渾身の聖剣に魔法を纏わせた一撃で、防御結界ごと彼と彼の親衛隊の残兵を吹っ飛ばした。

「?」


 それは以前とおりだった。だが、勇者は真向から魔法攻撃をはじき返す、相殺するよりも、受け流す、さらにはうまく相手側に返しさえした、場合が前回よりはるかに多いように感じた。親衛隊相手も陽動や密かに小さな魔法を放ち、転ばせたり、ひるませたりして、より少ない力でなぎ倒していた。防御結界を破壊した時も、破壊した衝撃を上手く利用して効果を高めている、そのための魔法を加えていた。なにからなにまで、前回より手際がよかった。

 少なくとも、そのようにグレイスには見えた、いや感じられた。


 魔王子が戦死したこともあり、軍は崩れかけ、副魔王は軍を撤収させた。勇者パーティ―を支援する騎士隊がそれを追撃して、かなりの損害を与えたが、彼らは何とか逃げ延びてしまった。

 その夜、夫の敵討ちとばかり、魔王子妃がその直属の部隊を率いて、野営していた勇者とそのパーティーと騎士隊に夜襲をかけてきた。夜襲は当然警戒していたから、準備はしていた。夜襲の報告とともに、勇者は飛び起き、応戦した。グレイス達も騎士隊も後を追った。

 密接に連携した警戒網と連絡網が功を奏して、勇者は魔族騎士達を蹴散らし、魔王子妃の本隊に素早く突入した。魔王子妃は、巨大な砂ネズミのような女?だった。こちらは、体力派だった。巨大なハンマーと普通の盾なら簡単に打ち破る牙、爪、そして尻尾の先端で攻撃してきた。それを物ともせずに勇者は、彼女を真っ二つにした。彼女の戦死で動揺した魔族達をグレイス達がほぼ壊滅させた。

 前回は、そうだった。今回は、勇者が見回りに出ていたところに、彼女とその直属部隊がやってきて、待ち構えていたかのように放たれた勇者の衝撃波で、魔族の部隊は半壊、魔王子妃も深手を負い、すかさず飛び込んだ勇者に止めをさされ・・・後は同じだった。

「まるで事前に知っていたかのようだな。」

とふと思ったグレイスだった。


 その翌々日、副魔王は軍を立て直し再度決戦を挑んで来た。退くに退けなくなったのだろう。そして、壊滅した。前回よりかなり少ない兵力だった。しかも、事前にその戦場に勇者は魔法トラップを施していて、それに混乱した副魔王軍はより簡単に壊滅した。

「う~ん。」

 グレイスは首を捻った。どうも引っかかるものがある、と思いながらも、どうしても思いつけなかった。それが何か、どうしてもでてこない、あるはずだとわかっているのに、そのことでイライラするほどだった。

 ちなみに、3つの戦いでも聖女は勇者の傍らで戦っていた。彼を支援するというよりは、嬉々として戦っていたと言う感じだった。

「戦う聖女ではなくて、狂戦士の聖女だな。」

とグレイスは心の中で毒づいていた。


「あたいは何もいらないよ。ずっと勇者様のそばにいられればいいと思っているよ。」

「フィエラ。そう思ってくれるのは嬉しいよ。でも、君には君の人生を歩んでほしいんだ。僕は、疎まれるかもしれない。そうなったら、放浪の旅に出るつもりだよ。その我がままに君を巻き込みたくない。それに、困ったときに、君に助けてもらう必要もあるからね。」

 天幕の中で、勇者は獣人女のフィエラに、魔王討伐の恩賞の嘆願で彼女に貴族の地位と領地、そして報奨金や年金を与えるよう要請していることを伝え、既にそのことで皇帝からの承認の印を貰っていること、その文書を示して、伝えた。

 戸惑う彼女に、先ほどまでにこやかな笑顔を浮かべていた勇者は、

「僕もね、命は惜しい。身を護る、愛する者を守るためにはやるべきことはやるつもりだし、やっているんだよ。皇帝は、既に私への陰謀を働いている者への信任を取り消すとのことなんだよ。彼は知らないようだけどね。」

 その目は彼女のことを射抜いているように思えて、彼女は震えを何とか抑えるのがやっとだった。

「それからね、このことは賢者をはじめとして他の者にも言っているんだよ。」

と付け加えた。彼の傍らには、聖女が真剣な表情で同席していた。 

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