お前に言われたくないよ(未来)
「お前は、糞聖女のところからどうして逃げ出したんだ?仲良く、恩ある勇者を裏切って、聖女のおかけで処刑を逃れることができたというのに、何が不満だったんだ?まあ、勇者にあれだけしてもらっても、あのままいけばもらえる恩賞にも満足できなかったお前だから、当然かもしれないがな。」
「ふん。あんたにだけは言われたくないよ。あんなもんに、勇者の、それとあんたらの残りに満足できるかよ、全く。毎日毎日勇者への背信行為を償う清貧な、奉仕の日々なんか満足できるはずがないだろうよ。そもそも、どうしてあんたはここにいるんだよ?処刑されて、首が落ちるところを見たんだよな。どういう魔法とからくりで蘇ることが、復活することができたんだよ?」
エスペランサが、ケモ耳少女、もう既に少女ではないが、フィエラと罵り合ったのは、勇者パーティ―の大盾士で地方騎士隊隊長になっていた男を殺した後、そこに金の無心に来ていたフぃエラとばったりであったからだった。
彼女は、聖女の助命嘆願で生き残り、一応の報奨金を貰った後、勇者への謝罪と社会ーの奉仕の奉仕のために、魔獣が多い地の教会で勤務する聖女の下に引き取られていたものの数か月もたたずらに飛び出し行方不明になっていた。
「あいつにたかっていたわけか?相変わらずさもしい奴だ。」
とエスペランサと言い返した。彼女の身なりが、そこそこ悪くはなかったからだ。図星だという表情を彼女はした。
インフォ・マール。糞真面目なほどの、小柄のくせに特大の大楯を自由自在に持ち上げ、運び、メンバーの前に立ち、魔族、魔王軍からの攻撃を防いだ男だった。よくもあまりない奴だったし、メンバーとしても古顔で勇者のことをよく知っていた。さほど手こずらせることもなく、勇者の暗殺に同意した。
「魔が差したんです。」
「悪魔に心を奪われたようにしか思えません。」
などと聖女の罪の告白の直後に自分も罪を認めて、号泣したのをエスペランサは記憶していた。芝居ではない、心からのものだとわかった。彼女も当然、彼とは長い付き合いであるからだ。地方の騎士隊長とはいえ、領地はないものの男爵位をもらっており、隊の規模も大きく、報酬もかなり高い。魔王討伐の恩賞としては、別に一時金を貰っている。それなりのものを得ている。彼の場合は、それで満足しているようだった。相も変わらずの糞真面目ぶりで騎士隊長を務めていたし、周囲の評判も良かった。そして、少し前に婚約者ができて、近く結婚式をあげる予定だった。そのために、それまで借りていた小さな家ではなく、そこそこ大きい家を物色していた。それまでは、ひとりで慎ましく生活していた。
その家に忍び込んで、エスペランサはインフォを殺したのだ。既にベッドの上で眠っていた彼をわざわざ起こしてから殺した。
「グレイス・・・?生きていたのか?いや、死んだはずだ、処刑されたところも見た。幽霊か?」
としばらくしてから、ようやく気が付いた。
「ふん。あの時死んださ。お前達のせいでな。だが、時を経て蘇ったらしいよ。私もどうしてかはわからないけどね。裏切りの当然の報いを与えようという神の意志なのかもしれないね。」
「か、神の意志・・・だって?そんな・・・どうして・・・俺は。」
と彼は蒼白になった。怯えて震えているのがわかった。その後の命乞い、弁解、逆切れ、罵りを彼女は期待した。もうすぐ訪れるだろう幸せを壊される無念さを爆発させる姿を見て、ほくそ笑みたかった。
「やっぱり逃れられないんだな・・・あんな裏切りをしておいて・・・幸せになろうなんて・・・5年間の後悔、清貧な生活なんかで償えるもんじゃなかった・・・。」
彼は項垂れて、あきらめたかのようだった。
「私を裏切ったことをいまさら後悔しても遅いよ。」
「君を裏切った?俺が言ったのは、勇者を裏切った罪のことだよ。」
それを後悔している、その罰を受けなければならない、と諦めている顔だった。それに無性に頭にきた彼女は彼を切り裂いた。彼の死に顔は穏やかでも、ほっとしたようなものではなかったが、無念だとかいう顔ではなかった。それだけに、エスペランサは腹がたってどうしようもなかった。
飛び出したところで見かけたのが、フィエラだった。出くわしたのではない。そのようなヘマはしない。本来なら、そのまま気がつかれないように逃げる。が、彼女は相手がフィエラだと気が付いた。だから、そのまま逃げなかったのだ。そのことに彼女は、後で少し後悔することになった。
フィエラがそこにいたのは、マールから金をせびっていたからだ。さほどの金額ではなく、そんなに頻繁ではなかった。ぎりぎり忍耐の限度を越えないところでやっていた。そう言うことには、彼女は鼻が利いたからだ。
「それで、あたいをどうするつもりさ?」
「多分、お前と同じ考えじゃないかと思うわよ。」
「それなら、金蔓の仇も兼ねて・・・殺してあげるよ。」
「そんなことができると思っているの?」




