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勅旨河原が迎撃を成功させる少し前の佳宵月虹本星。
その軍事施設にある輝の邸宅。
時折不意に止まる瑠奈の動きを美月は見逃さなかった。もう瑠奈はそんなに長く生きれな事を実感していた。
だからか。美月は瑠奈に語りかけていた。
「瑠奈。あなたには本当に感謝しているわ」
瑠奈も美月を無表情ながらじっと見つめた。
「私はね。兄さんが好きだった。初めて会ったその日から。理由なんて必要ないの。根源がそうなんだから」
瑠奈はその話を静かに聞いた。
「でも兄さんに受け入れてもらえないとその時は思ってた。だって兄さんの隣には姉さんがいつも居たから。ずっとよ・・・。訓練学習の時以外本当に仲良くね。私は羨ましかった」
「・・・・・」
「でもね。姉さんは言ったの。美月ちゃんがお兄ちゃんの子供を作りたいならいいって。そして二人で育てて楽しく暮らそうって」
「・・・・・」
「それをね、兄さんに言ったの。でも兄さんはね、解らないって、姉さんがいるからって」
「・・・・・」
「姉さんは私の気持ちを解ってくれたけど、兄さんは姉さんの事しか見てなかった。姿は私と同じなのにね。何でかしらね・・・・」
「・・・・・」
「姉さんはみんなに優しかった。そしてみんなを好きになってくれた。でも兄さんにだけは違ったの。兄さんにだけはみんなと違う顔で接していたの。兄さんは特別。もう何年も連れ添ったように、当たり前のように・・・。おかしいよね。一ヶ月も変わらなかったのよ。兄さんと会うのは」
「・・・・・」
「姉さんがあんな事になった時は悲しかった。兄さんも表にはあまり出さなかったけど暗くなったの。だから私はそれ以上に兄さんを支えなきゃって思ったの」
「・・・・・」
「でも貴方が来てから兄さんは変わったの。いえ、この場合戻ったかな。姉さんがいた頃みたいに私に笑ってくれる様になった。そして明を授けてくれた。この子も・・・」
美月はそう言って大きくなった腹部をさすった。愛おしそうに。
「多分ね、兄さんは姉さんの約束を守ってくれたと思うの。貴方に私達の子供を見せる為に。姉さんは本当に子供が好きだった。自分もちっちゃかったのにね。貴方みたいに・・・・。」
「・・・・・」
「姉さんがいたら私は他の人と子供を作らなくてはいけなかった。明もこの子も生まれてこなかった」
「・・・・・」
「だからね。私は感謝してるの。姉さん、あなたに・・・・。」
美月は瑠奈の事を初めて姉さんと呼んだ。涙をながし瑠奈を抱擁しながら。
「私はもう満足してるの・・・。もう世界中で誰よりも兄さんから幸せを貰ったから・・・だから・・。だからね。今度は貴方と兄さんの番。もっと長く生きて・・・。そしてこれからは兄さんのそばにいて。姉さん!」
瑠奈は何も言わない。表情も動かない。しかしその手は美月をそっと抱き返していた。
それが瑠奈との最後の語らいになった。
長い時間二人は抱き合っていた。周りはとても静かった。二人は本来は双子の姉妹。輝が居なければ間違いなく第一のお互いの理解者になっていただろう。そんな姉妹に招かざる者が現れる。
静寂を破ったのは介護AIだった。命令も無しに二人の正面に移動してきたのだ。
「何かしら?。なにも命令はしてないけど?」
美月が疑問を口にしたその瞬間、転移システムが作動した。突如現れたのは飢えた一匹の通常個体よりも一回り大きいサーペントタイガーだった。
第五十四世界、狙撃拠点船上。
美月から緊急救援信号を受けた輝はとっさに管制に確認をとった。
「管制、飛来物の状況を報告せよ!」
輝のその声に彗星破壊の余韻を残していた隊員達が引き締まる。
「一部の飛来物爆破の影響で速度が約光速の百二十倍に、源戦力では迎撃率八十%と予測。被害は一千万人規模、五分後に飛来します。何卒お力添えを!」
もうすでに、隊員達は迎撃を始めていたがやはりこれまでの疲弊で完全な処理が出来ていなかった。
輝も今回はその被害をリカバリーで対応するつもりだったが、そんな余裕は無くなってしまった。一刻も早く美月と瑠奈の元に駆けつけたい。出し惜しみはしない。
『あの位置では重装備は持ち込みは無理だ。俺の渡したプロテクションなら五分は持つ。だがもう時間が無い。直ぐに終わらせる』
輝は虚空に向かって叫ぶ。
「初風!」
その声にデバイスが時空移動してくる。
〔ナンニンメノワタシカシラ〕
移動してきたデバイスの音声がシュールに聞こえた。
デバイスを呼び出した父に向かって明が驚いて叫ぶ。
「何があったの!?お父さん!」
その声に輝は反応しない。
「雪風!」
〔ユキカゼハシズミマセン〕
「天津風!」
〔ドウイウカゼノフキマワシカシラ〕
「時津風!」
〔ショウサ、ショーサー、ウレシイ、ウレシイ〕
「閣下!、何が!?」
輝の呼び出したデバイスは駆逐級四機、とてもこれで状況が変わるとは思えなかった。輝の適正は光。この仕事には相性が悪い。
「総員対光を備えよ!。全て消す!。玲実は三十秒後、俺と共に時空移動。美月の元に飛べ!」
控えていた玲実は頷く。直ぐにデバイスの操作を始める。
次の瞬間、眩い光が天を照らした。その光景は太陽が落ちてきたのかと思える程だった。
光がおさまり、勅旨河原は空を見上げた。
「へっ?」
その前は飛来する隕石でいっぱいだった。
それが何処にも無く残存する彗星の光のみが目立っていた。綺麗な夜空だった。
「閣下!っ」
そう叫ぶ勅旨河原の眼前にはもう輝は居なかった。
読んで貰えてありがとうございます。
後予定では四話で完結です。
但し最終回は特殊で三話構成です。
もう少しだけお付き合いの程よろしくお願いします。
明日も投稿予定です。




