21
「お前見たかよ?、あの地震の動画?」
「倒れてくるビルが光ったと思ったら消えてるヤツだろ?すげ~よな~」
「後の津波のヤツもヤベーよ」
「あの廃墟が一瞬で元に戻る方が凄かったわよ。なんであんな事出来るんだか・・・」
「あれ軍がやったんだろ?あんなデバイス俺も使いて~」
「無理だろ、光デバイスなんて一般人が触ってもピクリとも動かねーよ」
検索隊の一行が緊張感も無く騒いでいる所に後ろの索敵から声が掛かる。
「前方十一時の方向に二体、二時の方向に三体、幼体が六体、腹の膨れた個体が一体」
騒いでいた一行に緊張感がはしる。
観測者もその声に反応しデバイスを操る。
「会敵は三分後、リーダーは左二体を、右の三体をお二人が、雄五体を制圧すれば後は逃走するので問題ありません」
それを聞いた川口は隊員に指示を出す。
「聞いた?。お仕事よ、くれぐれも素材に気をつけて」
「了解」
戦闘は情報が勝負だ。相手の情報を先に入手し、作戦を立て、攻撃される前に無力化する。
よくある娯楽では真っ向勝負で派手なモノが好まれるが、相手から攻撃されたのでは被害は免れない。それはプロの仕事では無いのだ。いかに被害を出さず相手を制圧する。その一点につきる。索敵と事象観測は基本。それを重視出来ない素人が作る娯楽はプロには見るに堪えないだろう。
まあ、戦争にもルールはある。何でも出来るわけでは無い。目的も無しに勝てばいいと言う訳では無いのだ。子供の喧嘩にもルールがあるが、やりなれてない子供は相手に必要以上の怪我を負わせてしまう事がある。これは教えていない大人が悪い訳では無い。教える事には限界がある。その子供の経験不足が原因なのだ。娯楽も迫力を出すためにそのルールを無視し相手の損害を全く書かず、責任もなにも無いような物語を作る。それを現実と混同しやってはいけない事をやってしまう子供がいるから事件が起こるのだ。
話が脱線してしまったが、この場合のルールは素材の確保と資源の保存。必要以上の殺戮は後々の利益につながらない。それを最善の形に成す為には索敵と事象観測は必須なのだ。
「左、来ます!」
三分後、観測者が声を上げる。一行の前に目標が姿を現す。情報が無ければ奇襲に気づけなかっただろう。
まず川口がデバイスを目標に掲げトリガーを引く。
襲ってきた二体のサーペントタイガーは体から湯気を立ててその場に倒れる。
彼女のデバイス、マイクロウェーブ。水分を振動させて高熱を発生させる。
体温から二百度も上昇させれば中身は煮えているが燃やさず綺麗に素材を確保出来る。目的には最適なデバイスだ。
「続いて、右も!」
「おうよ!」
右に三体現れたが、難なく一行は処理してしまった。
物陰に潜んでいた残り一体がこちらを伺っていたが、勝てないと悟ったのだろう、幼体と共に逃走していった。
「ふ~。先に進むわよ、早く素材を回収して!。巣家人!。」
「わかった」
無表情の巣家人に川口は嫌悪感を覚える。
「ぐづぐずしないで!。本当にのろまなんだから!」
「早くしろ!こっちは戦闘で疲れてるんだ!検索以外何もしてないお前は楽でいいよな!」
隊員からも罵倒される巣家人だが、何も言わず、だがそれに何を感じていないように粛々と作業を進めていた。
『こいつ・・・。なんか感に触るのよね・・・』
川口はなぜか解らないが、巣家人に苛立ちを覚えていた。検索も優秀で素材回収作業も別に遅いと言う訳では無い。なのになぜか彼を蔑んでしまう。巣家人の人間味の無い姿がその原因だ。
「終わった」
「・・・・先に進むわよ」
一行は採取を終え先に進んだ。そしてこんなやりとりを二十体程討伐を終えた時点で異変が起こる。
「周囲に強い生体反応、百体前後、個体の識別不明、囲まれている」
突然の巣家人の声に隊員は驚く。
「観測者!」
川口が観測者に指示を求める。
「・・・・なにこれ?こんなの・・・」
狼狽える観測者に川口は怒鳴る。
「どうしたの!」
「わかりません!。デバイスが答えません!。エラーが出てます!。早く撤退を!」
その声を聞いて川口は巣家人に激しく問いか掛ける。
「巣家人!。どういう事!。説明しなさい!」
「反応が突然現れた。高速移動だ。退路を断たれた」
「はっ!?、高速移動!?、なんでそんな技術を獣が使うのよ!」
「前方十二時、一人、人間だ」
「な!?」
川口は前方に振り向く。そこには一人の男が立っていた。唐突に男はこちらに声を掛ける。
「あれ~?。間違えたかな~?。ここはまだ許可が出てないはずだけど?。勝手に僕の研究対象を狩ってもらったら困るんだけど~。」
「何、あなた!。誰なの!。此所で何をしてるの!?」
男は川口の言葉に笑みを浮かべる。
「それはこっちの台詞だけど~?。悪い子達にはお仕置きかな~」
男はそう答えると手を上げ何かの合図を出した様だ。すると四方八方から通常のサーペントタイガーを一回り大きくした個体が姿を現し出す。
「これ以上狩ってもらったら僕の研究材料が無くなるから君たちには消えてもらうよ」
「くっ!」
素早く川口は現れた個体にデバイスを向ける。もはや素材の回収など考えられない。デミフレアナーパム。彼女のデバイスで最も威力と攻撃範囲の広い攻撃を放った。一瞬にして周りが炎につつまれ煙が立ちこめる。
川口が攻撃を放ったのを見て残りの二人も自身最高の攻撃を相手に放っていた。
「ふっ、これならっ!」
戦況を見つめながら川口が呟く。
しかし現実は無慈悲だった。煙が晴れて来るに従いそれは姿を現す。攻撃前と何ら変わらない姿で。
「そんな!?」
男は何事も無かったように佇んでいる。
「ん~?。何かしたのかな~?。今度はこっちの用事を済ませていいよね?」
その言葉に隊員たちは震え絶望するしか無かった。
読んで貰えてありがとうございました。
※200度の過熱について。
圧力を加えた過熱です。圧力鍋など圧力を加えると沸点は上昇し潜熱(蒸発潜熱約温度の530倍)に顕熱を奪われず、効率的に温度を上げる事ができます。作中の場合20気圧程外部から圧力をかけてます。通常大気圧で同じことをやると爆発します。




