19
その夜、俺は美月の部屋に訪れていた。
理由は今回の一件で俺を労いたいかららしい。
美月は一見堅物に見えるが、他人の目がなければ非常に女性らしく俺に接してくる。
食事を済ませ今はまあ、寝室で俺たちのいつも通りの接し方をしている。
事を終え、二人とも天井を眺めている格好になっている。
「今日久しぶりに叔母さんに会った」
「・・・・」
「思い詰めた顔をしていた。まあ、俺のせいだろうがな」
「兄さんはどこまで気づいてるの?」
「ほぼ全て」
「そう・・・」
「あの研究はヤツが仕向けたのだろう?」
「・・・・」
「今日、戦級のデバイスの要請を軍にした」
「それで?」
「見事に却下されたよ」
「そうね。さすがに戦級は簡単に許可が出ないわ」
「まあ、持ち合わせのデバイスで何とかするしかない」
「それで十分だと思うけど・・・。どうして?」
「何がだ」
「どうしてそんな要請をしたのかしら?」
「ヤツの反応を見たかった」
「・・・・」
「まあ、現行をつかめば今すぐ消したいのだがな。でもそれはおまえは望んで無いのだろう?」
「・・・・」
「おまえの立場なら仕方が無い。解っている」
「まだ行政を治めるには後継者が育ってないわ。・・・私だって・・・」
俺は美月の方を向き彼女の頭の下にある方の手で頭をなでる。彼女もこちらを向き何かを訴える様に俺を見ている」
「兄さんはいいの?」
「何がだ?」
「あの研究が完成すれば、瑠奈を、姉さんを・・・」
「他人さ」
「え?」
「一度死んでしまった人間は元に戻ることはない。命は唯一のモノだ。いくら記憶を引き継ごうが、根源が同じだろうがそれは変わらない。だから生を受けたからにはその一生を精一杯生きなければならない」
「・・・・」
「だからおまえが悩む必要はどこにもない」
「・・・・」
「あの研究はあまりにも非人道的過ぎる。一人の転生を早める為に一万人以上の幼い待機状態の根源を必要とする事は解っている。それを殺戮という形で行うのは許してはならない」
「・・・・」
「真月も・・・・瑠奈も・・・・自分の為に多くの犠牲は望まない。もしそうなったらもう同じではいられない。根源が耐えきれないさ」
「・・・・」
「だからあの研究は潰す」
それを言い終わると美月は俺に寄り添ってくる。俺はそれを受け止める。
「私は姉さんの代わりになれるかしら?」
「代わりになる必要はない。お前はお前だ」
「そうね・・・」
それからしばらく静寂が訪れる。
今はこの寄り添ってくる可愛いらしい生物を労らなくてはならないだろう。
こいつも色々心労が絶えないはずだ。
今は瑠奈がいるからまだ楽だろうが、この先の事が不安で仕方ないのは解ってるつもりだ。
真月を、瑠奈を失う事で俺の制御が不安定になることを恐れてる者がいる。元々真月の、瑠奈が生まれてきたのは俺を制御する為だったのだから。
美月がそのスペヤとして生またのは解ってる。そしてその存在では俺を制御は不安定になると思い込んでる奴らがいるという事も。
俺もなめられたモノだ。俺の根源はそれほど弱くない。人は成長する。確かに若い頃ならそうなっていたかもしれないが今は違う。
まあ、美月と明にまで危害を加えてくる輩が現れたらその時はどうなるか解らないがな。あの頃の俺ならまだしも今は守り切れる力がある。
「そういえばあのデバイスの製造元は判明してるのだろう?。公には出せないと思うが」
俺は思い出したように美月に尋ねた。
「そうね・・・」
「そこは内々に潰しておく。叔母さんの足取りを追わせない為に」
「わかったわ。後で末端に送っておくわ。くれぐれも漏れない様に」
「解っている」
「兄さん」
「何だ?」
「私ね。考えたの」
「何をだ?」
「二人目を」
「・・・・」
「だからね・・・」
そう言って美月は布団の中に潜り込む。
「瑠奈から遺伝子をもらってるだろう?」
「いや!。私はそんな味気ないやり方は好きじゃ無いの」
「・・・・仕方ないな」
明の時もそうだったが、こいつにも思い入れがあるのだろう。俺は美月の言うことを聞き入れるのだった。
一つの生命が誕生する。静かな夜の出来事だった。
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