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俺はあの世界から帰還し事後の経過を眺めていた。
結果は今回はヤツにしてやられた。
人類だけの救済であれば簡単なのだが法律の制限を受けた対応ではこれが手一杯だった。情けない。
他世界により直接影響を受けてない生物を殺めてはならない。
この法律のせいだ。
しかしこれは簡単に覆す事は出来ないだろう。
でも間接的な事象にも少し配慮があってもいいと思える。
今後の法整備に期待するしか無い。
今回の発端になった被疑者の方は明に任せて正解だった。
歯に埋め込まれた超小型のブレインライティング。
この装置で記憶を改竄し未来からタイムリープしてきたと思わせたのだ。
明の索敵能力は優秀だ。彼女でなければ発見は難しかったかもしれない。
これの製造元は不明。
この世界のデバイスは一律管理されていて通常であれば足が追えるのだが、今回は無理だ。
狡猾なヤツの手口でもある。
たった一手。
最小限の動きでここまで被害を出すのはヤツしかいない。
俺が対応してなければ被害はこれの五倍にはなっていただろう。
まあ終わってしまったことをこれ以上考えても仕方ない。
次にヤツが動きそうな事象を探すことにした。
その中で一際大被害になりそうな事象に目を止めた。
これは・・・。
ここまで大規模な事象にヤツが動くのは今までには無かったが、どうしても気になった。
この案件にはすでに別部隊が対応する事になっている。
それに俺にはもっと大事な事もある。
しかし・・・。
万が一に備えておくべきだろう。
俺はある要請を軍する事にした。
自分の優先事項を後回しにして。
昼下がり。
一人の女が町中を歩いていた。
彼女の名前は九条睦月。
外見は黒い長い髪に透き通る様な白い肌。身長は百六十程度でこの世界でも美人と言っても何ら差し支えがなかった。
女はひどく沈痛な表情で何かを思い詰めている様子だった。
気分転換に久しぶりに外に出たのだが、心は晴れなかった。
彼女は思い出していた。
約三十年前の事を。
自分の影響下にあった可愛い子供を事故で亡くしてしまった事を。
この世界にも事象を観測できない事はある。
成功するはずだった。
問題無かったはずだった。
でも結果はあの惨状。
悔いても悔やみきれなかった。
それほどにその子供は大切だった。
この世にたった一人しかいない存在。
世界の危機を無くしてくれる存在。
彼女はその手でその子供の命を奪ってしまった。
幸いにもある存在がこの世界をつなぎ止めていてくれる。
でももう時間が無い。
この前の仕事である研究を終わらせたかったのだが、皮肉にもそれは失敗に終わった。
でもまだ可能性はある。
覚悟を決めるしか無い。
今度は必ず成功させなくてはならない。
この世界の為に。
皮肉なものだ。
この世界の為、あの男の為にやってる事なのにあの男が最大の障害になるなんて。
そんな事を考えてると不意に歩く方向に少女が立ち止ったのに気づいた。
誰だと思いその少女を見ると思いがけない姿に今考えていた事を忘れてしまった。
「ま、・・・瑠奈」
その少女はこちらをじっと見つめいた。
「お、誰かと思ったら・・・。叔母さん。久しぶり」
少女の後ろにいた男が声を掛けてくる。
「輝・・・久しぶり。元気にしてた?」
「俺はいつも通りだよ。そっちは?」
「私もいつも通りよ。それより瑠奈は大丈夫なの?」
私は目の前の少女の頭を撫でながら甥である輝に話しかける。
「まあ、本人がまだ働きたいみたいだから。本人の意思を尊重してるよ」
その言葉を聞き私は瑠奈に話しかける。世界をつなぎ止めてくれる大切な存在。そして私がこの世で一番愛してる存在に。
「瑠奈、無理は駄目よ。きつくなったらすぐに伝えるのよ。良い?」
髪飾りを赤くしながら頷く瑠奈を見ながら私は思う。
次はなんとしても成功させなくてはならない。
そして同じく愛するこの男からは嫌われようが、それは私の過去の罪への償い。
それが私の使命なのだから。
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