020「小さな撃墜狂」
〈二〇二五年 七月二十四日 御加実市 Dekopoモール 深海区域 一階〉
ことの発端は、アタシがガキどもを外に連れて行きてぇと言い出したのが始まりだ。
ま、お前なら問題ないと思ったから言うが、アタシとクアリは孤児院に居てな……クアリは原作の世界でもともと孤児院に居て、アタシはこっちの世界に来てから縁があって手伝わせてもらってんだ。
ボス、いわゆる孤児院のボスの偏屈ババアが始めたことらしい。
クアリ曰く、元々の世界でもやっていた孤児院業、つまり身寄りのない子供達を保護する活動をこっちでもやってる。
一人でこっちに来た空想現界人の子供を保護することが目的としたことが始まりらしい。
んで、アタシはその活動に相乗りしたってわけだ。
偶然、ボスのババアに会って、なし崩し的にそのままって感じだ。
ただ、孤児院の活動も順風満帆とはいかねぇ……問題は孤児院の場所だ。
ボスの能力で、孤児院は不埒な輩から隠すため、異空間に存在してやがんだ。
そう、【ゲーム】に安全地帯を作るにはそれくらいしないといけない。
どれだけ【ゲーム】の治安が終わってるか、〝イベント〟に参加したお前ならわかるだろ?
そんなことをガキどもの飯代のポイントをやりくりしたり、アタシとクアリで孤児を見つけていき保護していく。
大体、これらがアタシたちの【ゲーム】開始から半年間で行ってきた活動だ。
罪のない子供たちを、得体のしれない魔術師連中に襲われるか、殺気立ってる空想現界人共の群れに頬りだす…………GMはとんだ悪党だな。
まあ、ともかく俺たちは順調に孤児院の活動をやってた。
けど、異空間にある孤児院は外とは隔絶された場所だ。
いくら自給自足できるっつっても、あくまで生活に関してだ。
多感なガキどもには、閉鎖空間は堪えたみたいでな。
んで、俺が提案したのが魔術師から隠れた【ゲーム】外での息抜き、だ。
最初は妙案だと思った。
ババアの隠匿術はとんでもねぇからな、それに【ゲーム】内なら、それでも探知してきやがる奴もいるが、【ゲーム】外の魔術師が探知してきやがったことはねぇ。
何度も検証したことだ。
だから【ゲーム】外、つまり現実空間で子供達を遊ばせることは可能って寸法だ。
実際、一回二回と、少人数で、近場で、試しても全く問題はなかった。
そう、そんで問題があったのが今回だ。
孤児院は異空間にあるが、どこからでもそこに入れるわけじゃねぇ。
特殊な場所で、特別製の鍵が必要なんだ。
かなりの大人数で、俺たちは孤児院から遠めのモールに来ていた。
んで今回の〝イベント〟に重なっちまった。
第三回になる大規模〝イベント〟は、前回や前々回とは違う。
事前告知無しのゲリライベント…………その場所にいた空想現界人は強制参加だった。それも、【ゲーム】内外関わらずだ。
ああ、【ゲーム】のフィールドは現代、外の世界の裏側に存在している。
まさか、【ゲーム】の外にいる空想現界人にも強制参加【ゲーム】とは思わなかった。
まるで運営に狙い撃ちされたような気持ちだったぜ……けど、〝ランキング〟上位勢が参加対象外の〝イベント〟なのは不幸中の幸いだった。
とんでもない強さのイカレ野郎がわんさかだぜ?
奴らのいた、第一回目と二回目のイベントはそりゃもう阿鼻叫喚の地獄絵図だったからな。
〝イベント〟にはいつでも途中退場できる〈リタイアゲート〉つうもんがある。
ガキどもを〝イベント〟に参加している敵から守る。そうできると自負していた。
────あの軍服男が現れるまでは、な。
不意打ちだった、突然目の前にドアが開いて、そこからアイツが現れやがった。
一目見てわかった、こいつは人外だと。
そして、子供たちをみる目で確信に変わった。
こいつは……敵だとな。
後ろにいるケルベロスもやべぇ、とにかくやるなら先に主人らしい軍服からだ。
だから、アタシの全力で、こいつらを排除しようとした────でも、軍服男は想像を超えてきやがった。
問答無用の気絶、能力を使う暇もねぇ。
クアリの結界も使う暇もなく、目の前でガキどもが奪われちまった。
少し、遅れたクアリの結界がアタシを軍服の魔の手から守った。
別にクアリは悪くねぇ、アタシの想定が甘かっただけだ。
ま、とにかくアタシはまた守ると誓ったもんを守れなかったわけだ。
そんで、お前に会った時は焦ってたんだ……許してくれ。
贖罪っていやぁ大仰かもな、でも敵の敵は味方だ……
────あの軍服男に報いを受けさせる、必ずだ。
そして、短く怒気の含まれた言葉を言い、彼女は静かに口を閉じた。
◆◇◆◇◆
キキョウの事情は、彼女の口ぶりからしても、かなり壮絶なものだった。
個人的には孤児院やら〝イベント〟のシステムとかも気になるが、今は聞かない方がいいだろう。
「んじゃ、そろそろ本腰を入れて、人質のとこへ向かうか」
「そうだな、軍服の移動能力のこともある。アタシたちが辿り着いたときにゃ……ってこともある」
「そ、そうですね。でもあの能力ってなんなんでしょうね?年齢操作に移動能力もってなんだか狡いです」
それは俺も思っていたところだ。
一人で持てる能力の数じゃないが、周りには誰もいない。
怪しいのがケルベロスの能力だが、あの感じで細かい移動や幼児退行の能力を持っているとは思えない。
まあ、全ては憶測であり、まだ推理を騙る段階ではないのだよ、ワトソン君(迷推理)。
「まあ、軍服男への考察はいいが、考えすぎは良くないぞ」
「だろうなァ、あの感じは意図的に煙に撒いてんだろ。能力を考えて行きゃあ、どっかに意図的に張られた罠があるだろ。勘だがな」
戯言はともかく、軍服男は言動からして得体がしれない。
何を考えているか、なんのためにこんなことをしているか。そんな理解不能な敵に仲間が囚われているのは不安だ。
まあ、レイなら幼くなっても大丈夫だろうとは思うが、先ほどの事もある。
また暴走していないかが心配だ。
「────一つだけいいか?」
そう、会話を切るように、俺は口を開いた
これはキキョウの名を聞いてから、ずっと考えていたことだ。
けれど、状況的に聞けなかったことだ。
正直、今くらいしか言うタイミングは無い。
「なんだよ、藪から棒に」
「────『錬鉄のフェアリス』って知ってるか?」
ただ、それでも今しか言うタイミングはないだろう。
そう思い、俺は頭の中に思い描いた作品を口にした。
「なんだ?聞いたこともないな」
そう首を傾げるキキョウに、さらなる核心に迫る言葉をかける。
「じゃあ、『撃墜狂』ってのは……」
「────なんでアタシの二つ名を知ってやがる?答えな、返答次第じゃ……」
言葉を聞いた瞬間、キキョウは凄まじい剣幕で、洗練された動作で俺の眉間に銃を突きつけた。
銃を突きつけられたのは初めてだが、やっぱりめちゃくちゃ怖いものだ。
「ちょ、キキョウ様っ!?」
突然の殺伐とした光景に、目を白黒させるクアリ。
どうやら、キキョウの二つ名は聞かされていなかったらしい。
少し悪いことをしたが、それでも擦り合わせなければいけない情報がある。
「…………【ゲーム】外に出ると、魔術師が襲ってくる。合ってるな?」
「返答になってねぇぞ?」
キキョウは言外に今更そんなことを、と言いたげであった。
やはり、何となく空想現界人というものがあるとは思っていたが、実際に会ってみると見えるものもある。
「んで、自分たちが空想作品のキャラであるにも関わらず、外に出てその作品を見ることができない。なるほど、良い調整だな」
そう、空想現界人は自身のルーツを持つ。
そんなことは、スマホで調べれば一発だ。
だが、この【ゲーム】内ならそうはいかない。
GMもいい運営をする、多分悪いやつなんだろうけど。
「────まさか、外の情報を知ってんのか……いや、そういえばお前は外の住人だっけか」
「ああ、これまで聞かれなかったこと自体が意外なくらいだ」
銃を下ろしたキキョウの反応的に、俺の予想は当たりらしい。
まあ、俺だけが持つ知識で無双!するには、この【ゲーム】に参加している空想現界人が多すぎる。
いくら現代において、空想作品というのは幅が広すぎる。
俺の中学時代の友達で、知識王を自負する奴でも、ゲームとかのキャラは網羅していない。
今回、キキョウの事をどうにか知っていたのは偶然だ。
『錬鉄のフェアリス』は二年前に、完結したロボット戦記物のSF漫画である。
その中で、キキョウ=ヒイラギという名前を聞いて違和感を持ってはいたが、見た目が幼くなっていたため気がつかなかった。
「なるほどな、思ったより役に立つじゃねぇかお前」
「いや、むしろ知らない現界人の方が多いんだ。あまり期待はしないでくれ」
そんな、やるぅ……みたいな表情で肩パンしないでくれ、ヤンキーかお前。
そう、とはいえ昨今の創作物というのは、数が膨大だ。
そんな中で、さらにその登場人物というのは星の数ほどもある。
むしろ、知らない空想現界人の方が多いだろう。
「……では、私のこともご存知で?」
そう恐る恐るクアリが聞いてきた。
「いや、すまんが知らない。創作物ってのは山ほどあるからな、全部網羅するなんてのは不可能に近い。いや、外に出て調べたらわかるかもな」
「そ、そうですか。でも、キキョウ様……これはかなり有用な能力ですよ!」
そこまで言って、あ、すみません……とクアリが謝る。
まあ、事実だし、そういう気遣いはありがたい。むしろクアリは優しすぎるくらいだ。
「ああ、そうだが、軍服男の正体はわからないのか?」
「それはわからない…………ただ、何か思い出すかもしれないとだけ、言っておく」
本当に当てになるかならないかは運しだいだ。
俺だって、ラノベや漫画、アニメは見るが、格ゲーのキャラなんてリ〇ウくらいしか知らない。
それぐらいの浅い知識しかないし、見たとしても登場人物なんて多すぎるので思い出せる自信はない。
「とりあえず、情報共有も済んだ、捕らわれの〇ーチ姫の元へ……」
「────しっ」
キキョウは突如、身を屈めて沈黙を促した。
そして、腰を浮かし、洋服店から出ようとしていた俺たちはそれに従って、洋服たちの陰に隠れる。
そして、棚の向こう側から現れたのは────
────二匹の地を這うエイであった。
◆◇◆◇◆
──────ただ目の前の女の子を背負う少女の背を追って、ルートは走る。
ルートは目の前のレイと名乗る少女の事がわからなかった。
扉を破って見せた力も、自身の年下だろう彼女が持つ理由も、だ。
それでも彼女が自分たちを助け出してくれたことも確かだった。
キキョウ姉とおんなじくらい強いかもしれない……と、ルートは感じていた。
彼女なら、自分に代わってカルネを守れるかもしれない。
他の孤児院の仲間も、この少女ならば守ってくれる。
ルートは願望を込めてそう思っていた。
「えっと、レイ……さん?この通路には────」
「ん、見張りがいる」
そう、言葉を遮られるが、レイの発言に驚く。
ルートはここに連れられるときに見たのだ……二匹の人形兵が通路にいるということを。
レイは気絶していたので見ていない、それでも察知していたのだ。
そして、それよりもレイの口ぶりから人形兵を、まるで脅威としていないことが彼女の頑強さを物語っていた。
「────────」
通路の向こう側から現れたのは、木組みで球体関節を持った人形の兵士だった。
一対二、不利かもしれない……そう、ルートの頭には不安がよぎる。
人形兵は、そのまま走り先頭にいるレイに襲い掛かる。
その光景だけで、恐怖に足がすくんでしまうが、それでもその光景から目を離してはいけない。
何もできない自分が、目を逸らしてなんていられない。
「ん、問題ない」
瞬時に、人形兵の懐に入ったレイはそのまま、後ろ蹴りの要領で、人形兵を吹き飛ばす。
レイと一緒にいた少女を抱えているにも関わらず、とんでもない速さだ。
そのまま、二の矢の如く二体目の人形はレイを横から薙ぐように攻撃する。
それを膝を上げ、膝で受け止めたレイは右脚と左脚を入れ替えるようにハイキックを人形の胴体にかまし、一体目と同じ場所に送る。
「────ちょ、なんか揺れると思ってたら、ナニコレ!?」
すると、地面が揺れているせいでおきた背中の少女が、騒ぎ出した。
彼女はレイよりもかなり、年上で一番年長の自分よりも、さらに年齢が上だ。
「おはよ」
「ああ、うむ。苦しゅうない…………じゃないくて、どういう状況ぞ?これ」
混乱する少女にレイが経緯を話し始めた。
無論、止まっている暇はないので歩きつつ、だ。
「────うぬぅ、気絶する前に見た変な軍服男の能力で、幼女化か……少々、マズいことになったの」
「ん、それで逃げてる途中…………後ろの子たちはオマケ」
「うむ、オマケにしては豪勢な気がするが……まあよい、とりあえず自分で走る故、下ろしてくれぬか?」
そういうと、レイはノワ子?と名乗る人物を背から降ろす。
ぱんぱんと、裾を払い、上体を逸らしたノワ子は何故かキメポーズを取った。
「……あの、早くいかないと、軍服がくるかも」
そしておずおずとカルネが、レイたちに声をかける。
不安しかないが、それでもノワ子は一番年長なので、助けてくれるかもしれない。
「────ん、わかった。とにかく、行くしかない」
「ちなみに、そっちのノワ子?は、なんかこう、馬鹿力とかある?」
カルネに続いて、ルートもノワ子に声をかける。
「ふ、我はただの姫でなぁ?何も出来ぬ、フハハハ!!」
「なんだ、口調的に強そうだと思ったのに」
「ちょっと、ルート!失礼でしょっ!!」
まあ仕方がない……ルートもあまり役に立たないので、偉そうなことは言えないのだ。
そして、ノワ子を含めたルートたちは通路の先へと向かう。
「────────っ」
通路を少し行った俺たちは、突如として止まったレイに引き留められた。
あまりに突然なことだったので、つんのめってしまった。
「どうしたの?」
「この先に、何かいる。ううん、あの時の犬がいる」
先を見れば、大きな部屋があり、そこに下りる階段があった。
そして、その先を覗く──
────────すると、地獄の番人と言うべき威容で、三つの頭を持つ恐ろしき犬のモンスターがいた。
◆◇◆◇◆
二匹のエイが俺たちの居る通路の向こうから現れた。
俺たちは棚を挟んで、エイから隠れて様子を見ていた。
しかし、戦力が足りなかった前とは違い、今はキキョウがいる。
俺は彼女の実力を知っているので、実際に見てみたい気持ちもある。
あのさっき出てきた機械の犬がかなりヤバいのだ(小並感)
「アタシがやる、お前は見てろ」
そう短く言った彼女は、手を目の前に差し出してこう唱えた。
「────《機械猟犬》」
先ほども見た機械製の猟犬が、空中で組み上がる。
雷が迸るように電気が機械部品を繋ぐ、電磁力を利用した換装だ、と設定集にあった。
「知ってんだろうが、一応見せておくに越したことはないからな」
そう呟くと、彼女の足元で顕現した機械の猟犬が、無言で通路を見る
エイの居る場所はこの通路から曲がって、突き当たりの場所だ。
「ま、魚なら電気とか効くだろ」
「思ったより適当だな」
そう、呟いたキキョウはすでに指示を出したのだろう。
猟犬の両脇から、銃が下にのびた。
そのまま、銃弾らしき物体を地面に打ち出した猟犬。
床に阻まれると思ったその時、銃弾が床に波紋を作った。
そう、まるで魚のように地面へと、弾が潜ったのだ。
潜った弾は見えなくなり、そして暫くすると通路の向こう側から断末魔が聞こえた。
「────ま、上出来だな」
キキョウがそう先に警戒しながら通路に出る
そして、通路の向こう側には気絶したエイが二匹いた。
《機械猟犬》の能力は多岐にわたる。かなりの種類があり、俺は一応全部覚えているが作中に出ていない能力もあったりする。
そもそも、《機械猟犬》は様々な形態を使いこなす能力だ。
今の形態は一番ノーマルな形態で、他の形態はもっと特化した性能を持つのだ。
生で見れて正直感激だが、大げさに反応するとキモがられるか?
「やっぱリアルで見ると違うなぁ」
「芸能人に会った時かよ……なんかむず痒いな、おい」
と、少し照れくさそうに頬を掻くキキョウ。
漫画で見るのとリアルで見るのでは、訳が違う。
キキョウはそう言うが、実際俺にとっては彼女は芸能人みたいなものだ。
……サイン貰おうかな?いや、流石に自重しておこう。
「…………ポイントの為にとどめは刺しとくぞ」
「は、はいっ」
キキョウの言葉にクアリが強く反応する。
クアリは、あまりこういう行為はできればしたくないのか。
まあ、シスターだから殺生自体に抵抗があるだろうしな。
その後、痺れて動かないエイを、キキョウの銃で撃ちぬいた。
エイはそのまま、光の粒になって消えた。
「流石、キキョウは強いな。形態的には《素役》なのに」
「なんか、自分の事、教えてないのに知られてるのキモいな」
「すまん、けど知ってるんだから仕方ないだろ」
まあ、確かにそう思えば、はたから見ればストーカーみたいだな。
ちなみにキキョウの《機械猟犬》みたいな機械で出来た戦闘体を〝機械仕掛け〟という。そして、それを使う使い手を〝調律者〟という。
あ、聞いてない?さいですか…………
「ナギト様がちょっとヤバい発言をしても、私は大丈夫ですよ」
「いや、別にこれくらい普通だろ…………?」
クアリも天然なのか、偶にちょっと傷つくことを言ってくる。
キキョウの影響か?全く、教育に悪い撃墜狂だぜ。
「ともかく、先に進もう。次はこっちだ」
「ああ、わかった……後、お前なんか失礼なこと考えてないか?」
この界隈エスパー多すぎませんか?
◆◇◆◇◆
「────なるほど、こりゃあヤベぇな」
レイたちの元に向かって、三十分。
突如、周囲を探索していたキキョウが、俺の目の前で呟いた。
あれから、俺たちは、数々の敵たちを倒しつつ進んでいた。
ほとんどキキョウ様が瞬殺であったので、それは割愛しよう。
ともかく、いくつか進んでいる途中に、空想現界人を見かけた。
キキョウが時折レーダーで索敵しているものに、引っかかっている影だけだが。
ちょっくら話しかけようとした俺は、キキョウにとめられた。
野良の空想現界人は何を考えているか、どんな性格をしているかわからない。
ただ一つ言えるのは……だいたい、創作物の登場人物なんて、極端な性格をしているのだ。
生粋の悪人から、利害を考えず攻撃してくる輩まで。キキョウやクアリなどはマシな部類だろう。
せっかく、有名なキャラだったらサインもらいたかったのに、と思っていたところキキョウに看破されて無事怒られました。
そんなこんなありつつ、索敵を挟みつつ俺たちは確かにレイの元に進んでいた。
道中クアリの能力についても教えてもらった。
祈りのポーズで結界が発動するとか、色々参考になった。
順調だった追跡だが、何度目かの索敵を終えたキキョウが不穏なことを口走った。
「どうした?イワシの群れでも探知したのか」
「それならよかったがな…………一つ聞く。この先は飲食店街がある大螺旋階段の場所、なんだよな?んで、迂回するルートもこの〝イベント〟空間内では消えていた……」
「?…………ああ、そうだ。現実で来たことあるしな」
何回か来ているのでわかるが、あそこは飲食店が無数に並ぶ円筒形のフードコートだ。
中心に大きな二重螺旋構造の階段がある、一階と二階に分かれている場所だ。
「そこに、いるぜ。特大の化け物がよ」
「────────」
その言葉を聞き、口を閉じた。
やはり、大部屋には何かあるとは思っていた。
いたが…………まさか、回避不可能とは思っていなかった。
「その化け物はその大部屋を優雅に泳いでやがる、一匹でな」
「…………それは、つまり避けようがないということですか?」
クアリが意を決して聞く。
どうにか間違いであってほしいとは俺も思う、だが現実は無常だ。
「残念ながらそうだな、アタシたちは岐路に立たされてる。伸るか反るか…………特大の鮫と戦うか、尻尾を巻いてにげるか、だ。」
そして、キキョウは敵の正体と共に、そう選択を突き付けた。
〈Tips!〉
・孤児院について
キキョウの所属する孤児院。
老齢のシスターが主とする組織で、本拠が異なる次元の結界に存在する。
空想現界のもっともたる被害者である現世に迷い込んだ子供たちを保護する組織。
戦闘能力はほぼなく、キキョウと老齢のシスター、クアリ以外は子供しかいない。
・キキョウの能力について
キキョウの能力《機械猟犬》は万能型であり、状況に応じて様々な《役》に《形態変》できる自律型機である。
悪く言えば器用貧乏であるその能力は、本来の彼女の能力から二段階下げられたものである。
【ゲーム】参加により一段階、幼児化により二段階。
本来の彼女の本気はこんなものではないことを留意すべきであろう。




