謝罪
オレを告発する手紙を出したのは「五星商事株式会社」の社員だった、真中杏子。
まさか、こんな近くにいたなんて思いもしなかった。唯、手紙のオレの名前、桐山健に"きりやまたけし,,とふりがながあったことが不思議だった。人を助けた駅で名前を書いた時も、かなは振らなかったし、何故"たけし,,と読めたのか。普通なら"けん,,と読むから。身近にいたから読めたのだ。
「読みにくい名前にかなを振るのは癖でした。あとでしまったと思いましたが、逆に差出人のヒントになるかもと思ったんです」
「そうですか。僕はあなたのお父さんにだけではなく、あなたにも辛い思いと迷惑を掛けたんですね。心からお詫びします」オレは深々と頭を下げた。
「もう、良いんです。あなたはあの事を認め、十分償いもされました。私はそれを近くで見届けましたから」杏子はそう言う。せめて、亡きお父さんのお墓参りをさせて欲しいと頼むと、彼女は承諾してくれた。来週の日曜日に真中家の菩提寺で会う約束をする。
桜が満開の良く晴れたその日、オレは白い花をメインにした花束を抱え寺に赴き、杏子の父親の墓前に供え、手を合わせてあの時の事を詫びた。
「有り難うございました。父も喜んでいると思います」
「僕の方こそ、お参りさせて頂けて心から感謝します」杏子もオレも受験した服飾メーカーの採否の結果、オレは駄目だったが杏子は採用された。
「おめでとうございます。本当に良かった」
「有り難うございます。でも桐山さんは、残念でした」
「これで良いんですよ。あなたが受かって本当に良かった」
「桐山さんと、父の所に来らましたし、新しい気持ちで新しい職場で頑張れそうです」
「どうぞお元気で」
「桐山さんもお元気でお過ごし下さい」
坂道を降りて行く杏子とオレに、薄紅色の桜の花びらがひとひら、ふたひら降り注いでいた。




