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幸福な時間  作者: 悠木 泉
14/18

解明

 私、真中杏子は勤めていた「五星商事株式会社」経理課を辞めてから、2年が経っている。理由はそこにいる必要がなくなったからだ。

 今から12年前の6月5日の朝、父が大きなリュックを背負った若い男性に突き飛ばされて転んだ。私はその男性を見ようとしたが、人が多くてわからなかった。その時は父に変わったことはなかったが、一月半程経った頃、頭痛、吐き気に見舞われた。病院で診てもらうと、「硬膜下出血」と言われすぐ手術したが、亡くなってしまった。

 頭部への外傷が原因だと聞かされたが、足も痛めていたし、認知症も出ていたので、あの朝、転んだ時の外傷が原因なのか分からないと言われた。

 しかし、私はあの時起こった事の真相を知りたかった。手掛かりはふたつ。一つは、私たちの後ろを歩いていて、父を突き飛ばした男性を見ていた40才ぐらいの男性の「大きなリュックを背負った若い男」と言う言葉と父を起こそうとした時、足元に落ちていた小さなメモ用紙のみ。そこには「五星商事株式会社午前 9時30分」と書かれていた。それだけでは犯人は分からないので、他の手掛かりを求めて東奔西走する日々。

2年程して父が転んだ瞬間をカメラで撮った人を見つける。新しいマンション建設の為、付近の写真を撮っていたのだ。父にぶつかった人とメモの会社の関係を調べる為に私はこの会社に就職した。 

 メモに書かれた時間はあの日にあった、新卒者の就職試験の開始時刻であることがわかる。

 しかし、受験者は多すぎて調べられない。あの男性が合格したか分からない。朝の同じ時間に、父の倒れた場所で写真を持って、聞いて回ったが、知るひとはいなかった。

 万事休すかと諦めかけたとき、見覚えがあるという人に出会う。あの朝、駅でホームから落ちそうになった、目の不自由な男性を助けた人に似ていると言うのだ。背中の大きなリュックを良く覚えているとの事。早速駅に向かう。あの朝、勤務していた駅員さんを探し話を聞かせてもらう。その結果、名前を覚えていたし、写真からこの人だと言ってくれた。人助けをしたことで、名前と住所を駅に残していたのだ。

「桐山健」やっとたどり着いた名前だった。その住所を訪ねたが、既に転居して行方は掴めなかった。


 あとはメモの字と桐山健が書く字が同じであれば、ほぼ証拠は揃う。桐山健が入社したか、筆跡が同じかを調べれば良い。あの年の新入社員名簿に桐山健の名を見つける。そして、経理課では、交際費とか交通費の伝票を扱う。伝票に、使った本人がサインするので、筆跡が分かる。仕事をしながら、桐山健のサインのある伝票がくるのをじっと待った。ようやく、サインのある伝票を見つけ専門家に筆跡鑑定を頼み、ほぼ同一人物の結果を得た。

 そして、人事部長宛てに告発する手紙を送った。

 私は、桐山健に恨みごとや文句を言おうと思った訳ではない。あの時のことをどう思っているのか、父の死因と結び付けるのは出来ないけれど、不注意からぶつかったことを認めて欲しいし、認めるなら、それ相応の償いはして欲しい。そして、何より父に謝罪して欲しい。それが本音だ。

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