第22話 とある計画 後編
「はぁ、はぁ、はぁ……撒いたか……」
ダンボールを被り、ゴミ捨て場に紛れ込んで約10分。俺は肩を抱いて震える事しか出来ない。
付近から人の気配はない。だが油断して這い出た所を奴は狙っているかもしれない。しばらくここで様子を見ることにする。助けは既に呼んでいる。見つからなければ大丈夫だ。
何故こうなってしまったのかというと、それは約3時間前に遡る。
夏香がパフェを食べたいを駄々を捏ね始め、面倒だったので近くのカフェによる途中だった。
「楽しみだねぇ、ウルトラハイパーサイクロンクリームサンラインパフェメロンスペシャル」
「ウルトラハイ……何だって?」
「ウルトラハイパークリムゾンクリームサイクロンクリームパフェメロンエナジースペシャル」
「さっきと違うぞ」
いつも通りの会話。
そんな平穏は、すぐさま消え去る事となった。
俺たちの前にゆらりと人影が現れる。俺たちがよく知る顔だった。
「あれ、どったのふゆのん。髪ボサボサだよ?」
「せんぱぁい…………」
「……あ」
すっかり忘れてたが、まさか本当に奴等はやったのだろうか。いや、でも流石にそんな事…………
「やっと見つけましたぁ…………話は全部このお馬鹿さんから聞きましたよぉ。言い訳は無駄ですからねぇ」
目の前に投げ捨てられたのはボロボロになった陽室。顔が腫れ上がり、前などもう見えなくなっているだろう。
「陽室……」
「馬鹿野郎……なんて顔してやがる……俺は」
「はい、うるさい」
「ンヌォ!?」
冬乃からの強烈なストンプ攻撃。陽室は呻き、再び倒れ伏した。
「もう、もう堪忍なりませんよ……人攫いの扶助とは、見損ないました!」
「待てぃ。俺も強制連行されて無理矢理聞き出されたんだ。だからーー」
「問答無用!!」
叫び、冬乃が飛びかかる。こうなったら脇の下を手刀で突いて身体を痺れさせるしかない。構えを取ろうとした時だった。
「ふん!」
「な、夏香先輩!? 何故助けるんです!?」
「それがお姉さん系彼女の性ってもの! 彼氏を守るのも彼女の役目さ!」
「……なら、仕方がありません! お覚悟を!」
「ふはは!! 私がゲームで体得したCQCをお見せしよう」
……まぁ、ゲームで体得したって時点で察してたけど、やっぱりダメだったよ。
夏香は抵抗する間も無く組み伏せられてしまった。
「うごご……」
「さぁ、観念して奏先輩を差し出すか、それとも私の腕で果てるか、選んで下さい!」
「くふふ……女の恥など、当に捨てたが、恋人を売るなど、彼女の、は、じ……オェ!!」
次の瞬間、白目と涎を晒しながら、夏香は果てた。とても20代の女性が見せられた表情ではないが、恥を捨てた彼女にとっては本望だろう。
「ごめんなさい夏香先輩…………さて、次は貴方の番ですよ先輩」
「黙ってやられてたまるかよ!」
と、ちょっとヒーローみたいな事を言ったが、まさか手を上げるわけには行かない。
だから、
「全力で逃げるしかないな!!」
「あ、逃げるな!!」
気絶した夏香を抱き上げ、逃走。陽室は既に助からないため、心は痛むが置いていった。
「だからよ……止ま」
「うるさいです陽室先輩」
と、何とかここまで生き延びたわけだ。夏香は途中でヒヨコ先輩の家に預けたが、このままではいずれ体力が切れて捕まる。
「ま、まさか本当にやるとはな……綺薇の奴、いつか逮捕されるぞ……」
この場にいない奴を責めても仕方がない。
周囲を警戒しながら、ゴソゴソとダンボールで進む。究極のアイテムを使ってでも、俺は生き残らなくてはならない。
冬乃と顔を合わせたら最期だ。俺は捻り潰され、合挽きにされて店に並ぶだろう。いや、流石にそれはないか。だがそれくらいまずい事になる。
何としても、冬乃とエンカウントするのは避けねばならない。…………あれ?
「待てよ、結局バイト先とか大学で会うんだから意味な」
直後、優しくダンボールが持ち上げられる。
「!」
「それを使うのは、本来私なんですけどねぇ、まぁ、いいか」
誰もいなくなったゴミ捨て場。
残された携帯電話から、陽室の声が響く。
「どうしたんだ奏! 応答しろ、奏、奏ぇぇぇぇ!!」




