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ヒーロー?悪の方がいいに決まってる!!  作者: 小田和 リナシヲ
第3章 魔法学園:パペットマスター編
33/43

第33話 噛み合わない歯車達

ピーター達と自動人形オートマタとの戦いはどうなるのか。


それではどうぞ。

―――夕刻 ヴァルキュリア城内 異空間


 俺達の前に3体の怪人が現れる。大きな一輪型のバイクに跨った一眼のアンドロイド。後部にはカウボーイハットを被ったネズミ姿の小男が。そして、車体に自身の右手右足を引っかけている全身がメタリックなボディのサイボーグ。


「お主達どうやってここまで来たのじゃ!?ここは妾のつくりし異空間じゃぞ!」


「アグネジャの兄貴が地上とここを結んでくれてよぉ。」


「魔法によって空間を捻じ曲げて、通り道を作ったっておっしゃられていました。けれども、疲れてしまわれたのか、そのまま姉さんの姿に戻られてしまい、このメンバーで参った次第です。」


 クリエの質問にウィリー・マッハとラット・ハットが余裕の態度で返事をしていた。その一方、対機甲アンチマシン用サイボーグであるアイアンハンターは対峙する相手をじっと眺めていた。


 人形も得体の知れない相手に対して、むやみやたらに突っ込んでいく事はしないようだ。彼らの出方を窺っているのが分かる。


貴方あなたを総統の敵と推定。破壊対象と認識します。」


 アイアンハンターは自らの主君を害した攻撃目標へ、落ち着いた声で破壊を宣言する。右足の一部が開き、刃渡り50センチある超振動電磁ナイフを取り出す。超振動ナイフは刀身高速で振動させ、その威力を増したものである。アイアンハンターの持つそれは刃の内部に特殊な電磁コイルを埋め込むことで、高圧電流を発生させる代物だった。耐熱防止に冷却システムが埋め込まれている為、一定の劣化は出るものの極めて頑丈に作られている。


 人形はアイアンの敵対行動に反応し、臨戦態勢へ移り変わる。


「キサマラにワタシのジャマハさせなイ!」


 人形は片言で言葉を発すると、勢いよく一歩前に出ていたアイアンハンターに向かって走り出していた。しかし、こちとら悪の組織、彼女の敵はアイアン一人ではないのだ。


「ヒャハハハハ!!おめぇさんにこれを喰らわしてやるよ!」


 ウィリー・マッハはご自慢のバイクに跨ったまま、散弾銃を片手持ちし人形向かって撃ちはじめる。1発、2発、3発。次々に散弾をぶっ放す!走る人形の外皮に飛び散った金属片がねじ込まれる。身体が吹き飛ぶまでには至らないが、着実にダメージは蓄積されている筈だ。


 しかし、4発目を撃った際、人形に当たった散弾は皆跳ね返される。結果、跳弾の一部が俺達のいる場所の足下まで飛んできた。人形は先程の俺のように自身の身体に強化魔法をかけていた。本来なら、金属片で傷つく人形の身体ボディだが、強化魔法をかけることでアダマンタイトのような硬さを手にしたのだった。


 けれども、ミーナにはそれが分からない。


「あんた!危ないじゃない!」


 ミーナが顔を真っ赤にして銃を放った本人を怒る。しかし、当の本人は何も分かっていなかった。


 彼女の怒鳴り声さえ気付かないのかウィリー・マッハは笑いながら、銃をぶっ放して続ける。


「あの馬鹿は……もう!」


「あいつにはホント困ったもんですよ。」


「大体、機甲ロボットの奴らはなんであんなに感情任せで動くの!?ピーターあんたのせいじゃないの?」


「そんな!基本の性格はミーナに任しているじゃないか。」


 俺はエレナに回復魔法を施してもらい、右肩の痛みがようやく取れたところだった。


「とすれば、母上の方に問題があるということですな。」


「何を言う……ってあんたも戦いに参加しなさいよ!」


「私は情報収集が専門ですんで、ああいう肉弾戦はちょっと難しいですかね。」


 ミーナとラット・ハットのやり取りを俺とミーナも眺める。ラット・ハットはネズミ姿をした身長140センチくらいの小柄な小男である。


 この世界の獣人は遺伝により、身体に獣の特徴が色濃く出るものと、出ないものが居る。その基準で言えば、彼はその前者の部類だ。ラットハットは灰色の毛で全身を覆われており、少し手足の長い二足歩行するネズミそのものだった。ちなみに後者には、知り合いで言うとマリンやグリンダ先生が入ってくる。


 そのせいか、俺の隣でエレナが「あんな高位の獣人の方まで使役を」なんて、ぼそぼそと独り言を発しているのが聞こえてくる。


 うん、本当は違うからね。そう返したい俺の目の前で、人形とアイアンハンターの一進一退の攻防が続く。


  アイアンが自身のナイフを大きく振ると、人形はそれを上手く交わし、彼のボディへ回し蹴りを放つ。しかし、かれもそれに負けじと反撃を加える。アイアンは脇に入った足を掴みとり、回し蹴りする人形の勢いをそのまま利用して、地面に叩きつけるのだった。そして、彼は主君ピーターの仇を討つかのように、まるで木槌のように地面へ何度も叩きつけていた。


 土埃が舞うほど、ガンガンと叩きつけられる人形も馬鹿ではない。振り下ろされる寸前に腹筋と同じ動きをして、難を逃れるのだった。遠心力を無視する程の力を出した人形は、そのままアイアンの右手を掴みとり柔道の巴投げの如き動きで、逆に彼を地面へ叩きつけるのだった。


 人形は状況の不利を改めて理解した。魔力に至っては先に戦った子供たちの方が眼前の敵よりはるかに上だ。しかし、眼前の敵はそれをカバーするかのような原理の不明な飛び道具をいくつも操り、肉弾戦も自分と同等、いやそれ以上の能力を有している。


 認めよう。彼らは強い。そう判断した人形はすぐさま次の行動に移った。マナによって変質した未知の空間。もしも、彼らが突入してこなければ、あの子供と喋る魔道具を脅してこの魔法を解かせていたところだ。しかし、今はその必要もない。


 人形は大きく跳躍し、一気に4階建てアパートの屋上まで飛び上がる。そして、そこから更に力を溜め、ウィリー達が侵入してきた穴へ入り込もうとする。


「あの野郎!待ちやがれ!」


 ウィリー・マッハが一輪型バイクに搭載しているマイクロミサイルを放つも、それは人形が穴へ入り込んだ後だった。追尾するミサイルも共に穴の外へ出て爆発したようだ。奴にダメージを与えられていればいいが……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


―――同刻 『グランジェネシス』ヴァルキュリア仮設支部


 漸く稼働し始めた換気と冷房システムのお陰で、まともに人が居られるようになった元倉庫。笠を被せた剥き出しの白熱電球が暗闇の中、等間隔に設置され一帯を明るく照らしていた。


「おいおい!親父達が消えたっていうのはどういうことだ!」


 針金をいくつも束ねたような身体を持ったカメラニアス。彼は自身の眼となるレンズをこれでもかというほど、体のあちこちから出して、サングラスをかけ極道風ファッションで身を整えた角刈りの男を問い詰める。


「詳しい話しは分かりやせんが、アグネジャの兄貴がウィリーとアイアン、ラット・ハットを総統達のいる場所まで送り込んだようです。」


「ふぁ〜。あの3人で総統達を救い出すことなんてできるの〜?」


 欠伸をしながらクロワシは怪人形態のまま、ソファーにだらしなく腰掛けながら、自身の羽を一本一本チェックしていた。


「うぅ……お父様はアグネが絶対助け出すのです……。」


 クロワシの言葉に反応したのか、今まで別のソファーに横たわっていたアグネが立ち上がろうとする。誰からしても、今の彼女には助けに行くどころか、まともに歩くことすら困難そうであるのは目に見えて明らかだった。


「「おねーちゃん!今はそんな身体じゃ駄目だよ!」」


 キラーベル姉妹が必死になってソファーへと押し戻す。


「クロワシ兄ちゃんはそういう否定的なこと言っちゃ駄目だよ。」


 普段、キラーベル姉妹と仲の悪いレオニアも彼女たちと協力して、アグネを寝かせつけていた。


「ジョバンニの兄貴は一連の事件、どう思いやす?」


「うーん。前々からキナ臭かったことが一気に表面化した感じだね。ブライ・シルベリオンと魔族の密会、大猿事件、そして謎の人形の襲撃。ただ、まさかこうも立て続けに、総統の近辺で起こるとは思いもしなかったけど。」


「やはり、帝国や魔大陸の魔族の陰謀か何かでしょうか?」


「帝国の密偵スパイからは、総統達の情報が出回っている話しは聞かない。」


「カメラニアス。ブライと密会していた魔族の映像をスクリーンに映してくれ。」


「あいよ、副総統殿。」


 カメラニアスは自身のもっとも大きなレンズをスクリーンに向け、プロジェクターのようにして収録していた映像を流しだした。スクリーンには木陰で白髪の男性と赤いベレー帽若い魔族の女性が話しこんでいるのが分かる。


「この魔族の女は魔王直属部隊の隊員。名前はアイーダ。組織の事をずっと嗅ぎまわって王国まで潜入し、ヴァルキュリア魔法学園の清掃員をしていた。」


「「していた?もうやめちゃったの?」」


「ヴァルキュリアは学生の数に比例するかのように、教員や職員の出入りも激しい。誰か一人いなくなったところで直ぐに代えの者が現れやす。」


「彼女は数か月前から行方不明になっていた。これは魔大陸に潜伏しているヴィーゴ・パニッシュでも把握している。つまりは、魔王軍にとってもアイーダは行方不明扱いだったてことだ。」


「行方をくらましていたアイーダが一人で何をしていたの?」


「それは僕にも分からない。」


「あ〜。行方不明と言えば、生徒の失踪もここ数カ月で十件以上起こっていませんでしたか〜?」


「そうだ。これらパズルのピースが組み合わさって何ができるのか?」


「王国も知らないヴァルキュリアで蠢く闇。アイーダ、ブライ、そして、総統達。何かが見えて来る筈だ。」


 ジョバンニは腕組をしながら考えを整理する。城の内部に潜入するか。それとも、大猿や人形を捉えれば何か見えて来るのか。噛み合わない歯車達の存在が彼を苛立たせる。


 ジョバンニは空調に煽られてユラユラと揺れる白熱電球を仰ぎ見る。地上でピーター達が未だ強力な敵と戦っている。今は、彼らの無事を祈って待とう。そう頭を切り替え、ジョバンニは怪人達へ新たな指示を与えるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


―――夜 ピーター達の下宿先


「で、ピーターさん。」


「はい。」


「彼ら、そして、彼女は一体どういった方たちなんですか?」


 下宿先のリビングには俺やミーナの他、怪人態のままのウィリー、アイアン、ラット・ハット、それから、クリエが机の上に寝かされていた。


「えーと、そう。召喚した魔族の皆さんだよ。」


「嘘ですね?」


「い、いや。」


「嘘でしょ?」


「えと。」


「嘘。」


「……。」


「彼女はずっとあなたが魔法の杖としてずっと持ち歩いていたじゃないですか?今の今まで喋れたことをどうして隠していたんですか!?」


「それはね。エレナ違うのよ。」


「えぇ、ミーナさんもです。私にずっと隠してきたんですよね。貴方たちは一体何者なんですか?」


「「「「……。」」」」


 誰も言葉を発さない。人形を退けた後、クリエの産み出した異空間から脱した俺達は下宿先に戻った。因みにウィリーのマイクロミサイルが爆発していたのは確認できたが、人形の残骸は見つからなかった。恐らく、生き延びてどこかで潜伏しているのだろう。


 ちなみに戦っていた元の場所は初めに放った<<ファイアウォール>>の跡と、植木鉢が壊れていた位で、それ以降の破壊の後は残っていなかった。街の人にも被害は出ていないと思う。


 下宿先まで怪人達は人間態に戻り、エレナ達と別れようとしたのだが、エレナがそれを呼び止めた。


「皆さんは契約の上で召喚されたのに、どうして歩いて帰ろうとしているんですか?」


 挙動不審になる者多数。それを見てエレナの目つきが変わった。


 普段は小動物のように優しく可愛いエレナ。


「どうせなら、私達の家まで来てくださいよ。」


 その時、エレナは笑って声をかけていたが、目は据わっていた。あ、ヤバい。本能的にそれを感じ取った俺達は大人しくエレナの後ろに付いて下宿へ戻る。


 ドアを閉めた途端、エレナは各々を指定の場所に行くよう、皆にスパスパと指示を出した。そして、仁王立ちをしながら説明を求め、今に至るのだ。


「では、本当の事を話す他無いかのぅ。」


「クリエ!?」


「じゃあ、貴方から教えて下さる?」


「妾の名はクリエイティア。神代の時代に産まれし妾は創造魔法を為す魔道具。妾を使い、ピーターが彼らを創り出したのじゃ。」


「……。」


 エレナは黙って聞いている。


「そして、俺達は『グランジェネシス』という組織を立ち上げた。彼らはその団員だ。」


「……。」


 クリエと俺の発言を聞いたエレナはプルプルと身体を震わせながら下を向く。


 あ。これ地雷踏んだな。


「えぇ、分かったわ。貴方たちが私に秘密を隠し通そうとしているってことがね!」


 エレナの怒鳴り声が部屋の中で反響する。


「本当のことなの!クリエは嘘なんてついてないわ!」


「創造魔法!?そんなお伽話を信じる奴なんてどこにいるのよ!その杖もただ魂を持つ魔道具に過ぎないわ!」


「皆、大っ嫌い!!」


「エレナ、ちょっと待って!」


 階段を駆け上り自室へ向かうエレナ。彼女の頬にはきらりと光る滴が見えた。


「何じゃ、あの娘!妾の事を信じないとは!ジョバンニなんぞ直ぐ信じてくれたでないか!」


「俺は最初の頃、かなり怪しんでたよ。」


「実は私も何か怪しい道具にしか見えなかったわ。」


「そ、そんな……。」


……


 私はずっとピーターさんを信じていた。カッコいい彼の姿にときめき、いつの時も私を助けてくれる彼の事を。


 でも、今はそれが大きく揺らいでいる。創造魔法だなんて見え透いた嘘をついて、一体何を企んでいるの?


 ミーナさんもそうだ。出会ったあの時、宿屋で語った恋話。あの時から、私達は友達で恋のライバルであった筈だ。お互いに卑怯な手は使わない。堂々と勝負しましょうって!


 それなのに。どうして、あの人たちのことを隠していたの?彼らの言葉全てが嘘に思えて来る。


 もしかして、ピーターさんとミーナさんは不幸体質な私を一人除け者に、影で嘲笑っていたんじゃないの?


 ……。


 そんな馬鹿な考えに私の頭は支配される。そんなはずない。そんな訳有る筈もないのに……。


 私は一人枕を抱きかかえ、ベッドに寝転ぶ。


 出ていこう。


 元々、ヴァルキュリアでは一人暮らしするつもりだったのだ。私はそんなことを考えつつ、まどろみの中、睡魔に身を任せる。


 ピーターさん……。

エレナの逆鱗に触れたピーター達。


彼女との仲は元通りになるのか。


※拙い文章ですが、引き続きお読みいただけると幸いです。

※次話は週末休日の更新予定です。

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