第32話 猛攻のオートマタ
人形との戦いは続きます。
それではどうぞ。
人形が無表情のまま高速で俺達に迫る。俺やミーナは先程から、遠距離系の攻撃を仕掛けている。<<ファイアボール>><<ウォーターカッター>><<ロックショット>>等。しかし、人形は焦り一つ見せず攻撃を全てかわしていた。
「あいつの動きが早すぎる!魔法が届く頃には全く別のところにいるわ!」
「接近戦しかないか。」
接近戦とは言ったものの、俺は余り余裕が無かった。人形の動きを見るに奴の体術は尋常ではない。いくら身体能力を魔法強化しているとはいえ、格闘戦に持ち込むのは不利だ。俺もミーナも村で魔法の練習や勉強はしていたが、剣術や格闘術の類は一切身に着けていない。
果たして、対抗できるかどうか。
思案を重ねているうちに、人形との距離は10メートルを切る。決断するしかないな。
「主殿気を付けよ!以前戦った赤熊と同じじゃ!あ奴は自身のマナで魔法効果軽減を図っとる!」
「人形の癖にマナを操るっていうの!?」
ミーナが驚きの声を上げると同時、俺は前に飛び出す。行くしかないのだ。俺はマナを活性化させ、自分を中心にした半径3メートル程の空間を自らのマナで満たす。この中ならば、奴の魔法効果軽減を封じ込められる。
しかし、人形はその領域に入った瞬間、僅かだが動きに変化した。何か来る。
そう思った瞬間、俺へ向かって一直線だった人形は進行方向を変え、前傾姿勢だった体勢を元に戻し減速した。
人形の目標が変わった。その視線の先には女の子二人がいる。俺は大猿との一戦を思い出す。
「エレナ!ミーナ!」
「オーケー!これで狙いが付けられるわ!」
「私だって守られてばっかりじゃないんです!」
心配は杞憂だったようだ。エレナもミーナも目に闘志が宿っている。今まで狙いが定まらなかったミーナに至っては、奴の減速を好機ととらえ無詠唱で<<ファイアボール>>を放つ。
「風魔法は誰にも負けないんですからね!」
「マナに導かれし風よ、我が武器となれ!<<ウィンドカッター>>」
正面からは大人2、3人は呑み込めそうなミーナの特大の<<ファイアボール>>が。周囲からはエレナが放った幾つもの風の刃が、それはまるでホーミングミサイルのように人形へと襲い掛かる。
人形に逃げ場はない。全ての魔法が人形に当たると同時、大きな爆発が起こる。辺り一帯の道路の石畳が爆風で剥がれ俺達めがけて飛んで来た。
「マナよ、光輝き壁となれ。<<ホーリープロテクト>>」
すぐさま魔法障壁を構築しそれら残骸から身を守る。ミーナ、エレナも囲う巨大な壁の先、爆発の中心地へ皆の視線が突き刺さる。あの爆発を以てして人形はどうなったか?
じっと睨みつける。爆発の煙が晴れてきた。
「やっかいな奴じゃな……。」
爆心地で人形は立っていた。人形は身体のあちこちを黒く焦がしながらも、五体満足でしっかりと地に足をつけている。俺達は息を飲む。人形が止まる気配は無さそうだ。
「ッ!!」
人形は俺達に向かって飛びかかって来る。人形は魔法障壁の存在に気付かなかったのか、その行為は光の壁に阻まれてしまう。人形は不恰好にまるでガラス窓にへばりつくカエルのようだった。
「びっくりさせないでよね。」
ミーナが小声でつぶやくが、警戒を解いたわけではない。人形の動きは止まらないのだ。奴は右手を振り上げガンガンと魔法障壁を叩きつける。
その姿はまさに狂気そのものだった。
「このままじゃ、埒が明かないな。」
「そもそもあれは何なのよ?」
「無生物である人形がマナを産み出し操る。これが意味するところは主殿が一番分かっておるじゃろう?」
「……自動人形か。」
ロボット作成にあたり、自動人形について色々と調べものをしていた俺には分かる。自動人形は高等な魔法核を持つゴーレムの一種だ。自動人形が他のゴーレムと一線を隔す大きな点、それは自律した思考の有無である。
土人形のゴーレムは複雑な魔法陣を描けば描くほど、それに比例して様々な動作が可能になる。人間からいちいち命令を下さずとも魔法核として刻まれた指令に従って動くのである。地球の現代知識に則っていえば、ゴーレムとはプログラミングされた通りに動くロボットなのだ。
しかし、自動人形は違う。彼らはプログラムに縛られない。自身で状況を判断し行動の決断を下す。地球では当分実現しそうにない人工知能を有しているのだ。
魔法核によって無機物を自在に動かす仕組み。それこそがこの世界に人工知能を誕生させたと言える。そして、その副次の作用と言うか、魔法核そのものの根本が話しの初めに戻る。
「命在るところにマナ在り。まさにこの言葉の通りなのじゃ。」
「難しくて全然わからない!自動人形って一体何なのよ?ちょっと頭の良いゴーレムじゃないの?」
ミーナが頭をかきむしる。ちょっと難しかったか。
「自動人形は人形の身体を以てして生を得ておるのじゃ。」
「マナを以てして無生物を動かす魔法核は人で言うところの魂と同義。だから、ゴーレムは魂の器とみなされることもあるのじゃ。マナを産み出す魔法核を有すると言う事は、それ即ち命を有するということ。自動人形とは―――」
「魂を持つ生きたゴーレム……。」
「うむ。その通りじゃ。」
俺達の視線の先には一心不乱に魔法障壁を叩き壊そうとする自動人形の姿があった。俺達が改めて様子を伺った次の瞬間、光の壁はガラスが割れるかのように砕け散った。
「身体が人形故に、奴は疲れを感じない。」
「その上、あの頑丈さよ。」
ゆっくりと俺達に近づいてくる人形。俺は先手必勝とばかりに奴へ蹴りをかます。今度は警戒されないよう、先ほどより狭い範囲で自身のマナを展開させ打撃を加えるのだ。
しかし、足元を狙ってローキックを喰らわせても、腹に向かってパンチを喰らわせても、人形は無反応だった。
(身体強化しているのに攻撃が効かない!?)
焦りから生じる隙。人形は思案している俺の肩を右手で掴む。ギチギチギチ……。
「アァァァァ!!!」
痛い!痛い!痛い!身体強化していても痛みが出て来るこのパワー!どんな馬鹿力だよ!
「「ピーター!」さん!」
「あの人形、主殿の攻撃を真似よった!右手に奴のマナが集中してマナを相殺しておる!」
だから、どうした!?あぁ、痛みで碌な思考ができない。痛みに苦しむ俺を見た人形は肩を掴んだまま、思いっきり地面へぶち当てる。
「ぐはッ!!」
肺が圧迫された影響か血は出ていないが、咳き込むように何処からともなく言葉にならない声が出てしまう。くそッ!!こんな相手にどうやって勝てばいいんだ!
人形は倒れこむ俺をそのままにして歩みを止めない。
「ヨウヤク、ミツケタ。オマエさえ……!!」
人形が言葉は上空から聞こえる爆音に遮られた。天球の上部にはポッカリと穴が開き、夕焼けの赤色が垣間見える。そこからマフラー音を轟かせ一輪車のバイクが飛び降りて来る。
「おいおい!総統の大ピンチだぜ!なぁ、相棒!」
「私は相棒ではありません。」
「つれないこと言ってんじゃねーよ!アイアン!」
「私の名はアイアンハンターです。ウィリー・マッハ。」
「細けぇこたぁいいんだよ!」
「一応、私もいることお忘れなく……。」
ピンチの時に駆けつける悪の組織の怪人達。
「自動人形相手に相応しい連中じゃない。」
機甲軍のウィリー・マッハとアイアンハンター、それから情報軍のラット・ハットが助けに来たのだった。
機甲軍達の援軍。
自動人形との戦いはどうなるのか。
※拙い文章ですが、引き続きお読みいただけると幸いです。




