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ヒーロー?悪の方がいいに決まってる!!  作者: 小田和 リナシヲ
第3章 魔法学園:パペットマスター編
24/43

第24話 ピーターの白熱教室

お待たせしました。


本話から新章「魔法学園:パペットマスター編」に移ります。


それではどうぞ。

―――午前 魔法学園 教室内


 夏の日差しが強まってきた今日この頃、茹だるような暑さに負けじと学園の生徒は勉学に励んでいた。その暑さに輪をかけるようにして、クリスタルは今日も眩しく光り輝き、俺達の体感温度を上昇させていた。


 俺は同級生と共に空調の利いた教室で授業を受ける。学園の中は廊下や物置を別にして、魔道具を使った空調や衛生の設備が整っている。村の設備とは大違いだった。


 授業内容については俺だけしか受けない特別なものも有るが、今日の午前は皆と一緒に一般教養を受けている。


「―――学園のあるエンスピード王国は大陸の東側に位置します。」


「北方には海を面して魔族の方が住む魔大陸、西側は去年まで対立関係にあったグランツェニア帝国や更に遠方にはミスティリオ聖国が。」


「東側は竜族が住むドラゲニア島と南方の大陸を含んだシャイン=ラウレア連合国があります。」


「皆さんの中には、エンスピード王国の外より留学されている方もいますが……。そういう方で、故郷についてご紹介したい方がいらっしゃいますか?」


「はい、は〜い!アタイがしますにゃ!」


 勢いよく手を挙げたのは獣人族の猫娘だった。


「それでは、マリンさんにお願いしましょうか。」


アタイはシャイン大陸の生まれで……って、この王国の東側にある大陸ね。」


「そこのテンダラって街に住んでいたにゃ。アタイんとこも今頃は暑いだろうけど、こんなにジメジメした感じじゃなかったかにゃ?」


「ここ最近毛並みが湿っちゃって、ふさふさにならないのが、玉に傷にゃ。」


 自分の尻尾をくるくると振り回し、煩わしそうな顔をするマリン。表情の変化に合わせて、猫耳も自然と動く。今は気分がブルーなせいか、寝かせた状態になっている。


「それと、隣に座っているリリアちゃんは魔大陸の出身でーす。」


「マリンちゃん、私のことはいいから……。恥ずかしいよぅ。」


 ニシシと笑いながらマリンは隣の席の魔族をからかっていた。どうやら友達らしく、席に座るとじゃれあいをしている。寝ていた耳もいつの間にかシャキンと立っていた。


 その様子を微笑みながら見ていたポール先生は簡単にシャイン大陸の説明をする。シャイン大陸は北方と南方と運河を挟んで別れ、それぞれ大きな国家が有るらしい。マリンは大陸の北方出身とのことだった。

 

「……ではピーター君、後半の魔法についてはよろしくお願いしますね。」


 あの学長が皆と一緒に普通の授業を受けさせてくれる筈も無かった。一般教養の授業の後半では得意な魔法について、知識を学友と共有するという建前・・で、先生の代行をさせられていた。


 確かに俺は人より少しだけ含蓄かもしれないが、それは飽くまで上級生を含めた学校の生徒の中の話しである。魔法の専門家程に知識を有している訳もなく、先生を差し置いて授業できるほど立派ではない。


 しかし、学長はそれを分かった上で、「いい加減な態度で授業をする。生徒に間違った事を教える。生徒に舐められて授業にならない。そういった感じが有れば減点な。」と脅しをかけてきていた。いくらなんでも12歳の児童に課していい内容じゃねえだろと思いながらも、渋々担当することになった。そもそも、減点てどんなポイント制度になっているのだろうか?


 結果、一般教養の先生方も自分の仕事を奪われたという認識は無かった。先生の中には、俺の授業に間違いが無いかチェックする指導員の役割を果たそうと荒探しに躍起になる人もいれば、俺に同情して授業を円滑に進める為のサポーターになってくれようとする人もいた。


「それじゃあ、今日は魔法とマナの関係について理解を深めようか。」


「皆、色んな人が意見を出し合うから、その意見を書き出していくこと。」


「そして、人の意見を聞いて、初めて知ったことや分かったこと、それに自分自身で考えたことを羊皮紙に纏めておいてもらえるかな?授業の最後に提出してもらうからね。」


 俺は授業の形式を一種のディベートにしようと考えていた。議題内容については一通り調べ上げて、どんな質問が来ても大丈夫なようにしておくが、それでも俺は学生である。ディベートすることで、俺自身何か新しい発見があるかもしれない。


 12歳相手にどこまで実のある授業ディベートになるか分からない。もしかすると収拾がつかなくなるかもしれない。けれども、最終的に俺が纏めればいいことだ。一発、ドでかい魔法を撃てば、脅しに効くだろう。学長からもそういった事は禁止だなんて一言も言われていないし。


「じゃあ、始めるよ。まずは俺から話すとするか。」


「マナは魔法の源であるのは当たり前だよな。じゃあ、マナってどういう風にして魔法になるの?説明できる人いる?」


「ピーター先生!俺なら出来るぜ!」


 一番に声を上げたのはフランクだった。彼は俺の授業をアシストしてくれる。クラスでも評判のムードメーカーである。


「じゃあ、フランク頼むよ。」


「いいぜ。まず、マナっていうのは地上のあちこちに漂っている。特に生物の中に溜まりやすい。人間で言えば、腹のあたりにマナが溜まるな。」


「おお、フランクが正しいこと言っているにゃ。」


「馬鹿にすんなって。これ位常識だろ?」


「じゃあ、その後どうなるのか説明お願いするわ。」


 ミーナがフランクに続きをせかす。隣に座っているエレナもミーナの態度には苦笑している。


「ッ……分かってたよ。これだから、学年の女王様は……って、魔法発動するの止めて!」


「はい、はい、ミーナもそこまで。魔法はその使い手が、体内で『精製』されたマナを『解放』し、それを『変換』することによって魔法とするっていうのは、基礎中の基礎の話し。マナから魔法へ至るまでには他にもルートが有るんだけど、それを説明できる人はいる?」


 先ほどまで、説明の準備は万端と言った具合だったフランクは小さく縮こまっている。フランクだと無理だったか。俺は教室を見回す。皆、分からないといった顔しているな。


 ……片肘付けて右手の上に顎を乗せ、窓を眺めている一人の少女を除いては。


「えーと。ナターリアさんなら、分かりますか?」


「ふん。田舎者風情がワタクシに声を掛けてもらえないで下さる?品が落ちてしまいますわ。」


 これだよ。学園の授業が始まってから、約1月経つが、ナターリアの傲慢さは校内で噂になっていた。俺を目の敵にするだけならまだしも、亜人の同級生や上級生はもちろん、挙句の果てには先生にまで、貴族目線で接していたものだから、悪い評判ばかりついていた。


 ただし、同じ亜人排斥派の貴族のグレッグやヴィンセント、その他一部の生徒とは上手く付き合えていたようだ。つるんでいる姿をよく見かける。しかし、この教室内には誰も味方となる人物がいない。彼女はクラス内で孤立していた。


「もう一人の女王様だよ……。」


「クスクス。あっちのは孤独な女王様だけどね。」


「何様よ、あれ?早く仲間のとこに行っちゃえばいいのに。」


 教室内はあっという間に彼女への陰口で溢れた。それでも彼女の目線は窓の外だった。


「はい、はい!皆さん、静かに!」


 俺の言葉に皆黙ってくれた。従ってくれる皆に感謝である。

 

「少しだけでも答えてくれませんか?ナターリアさん。庶民へ知識を分け与えるのも貴族の立派なお役目ですよ。」


 ナターリアは俺の言葉に反応したのか、目線だけこちらへ向けた。貴族の役目というワードに惹かれたのか、彼女は小声ながら話し始めた。


「マナは先の男子が言ったように、地上のあちこちに漂い、使い手以外の生物もそれを宿しています。だから、マナは一概に体内だけでなく、体外のものを利用することがあります。」


「体外のマナってどうやって……利用するんですか……?」


 恐る恐る、魔族のリリアが指摘する。一瞬、ナターリアは侮蔑の視線を送ったが、再び小声で喋りだした。


「一般にはそのマナを体内に取り込んで、自分のマナに置き換えて使うわ。但し、マナの制御コントロールに長けた魔導士ならば、体外にあるマナを自分で産み出しモノのように自在に使いこなせるとのことよ。」


「正解。マナはフランクが言った通り、世界のあちこちに散らばっている。特にこのヴァルキュリアでは生物でないけれど、マナ自体が結晶化して大きなクリスタルとなっているんだ。」


「結局、体内のマナっていうのも、大気に散っているマナが普段の暮らしで体内に吸収されていったものなんだ。」


「じゃあ、最後にその中の『変換』について考えて終わりにしよう。」


「マナはホントに便利な存在だ。魔法の使い手がイメージする事なら何にでも『変換』できてしまう。」


「ちょっと聞いてみようか?皆、自分が得意な魔法って何?」


「まずエレナから。」


 当てられて少しアタフタしているエレナ……可愛い。


<<何を思っておるんじゃ。この駄先生。>>


 何か幻聴が聞こえるが、これも長年の付き合い。余裕でスルーできる。


「私は風魔法が得意です。」


「じゃあ、4大魔法のなかで風は何番目に強い魔法かな?」


「えーと……それは……。」


 俺が出したのは引っかけ問題である。4大魔法であろうが、なんであろうが魔法に上下はない。強いて言えば、相性が有るぐらいか。ただし、魔法の初心者だとよくこういったことを知らずに、優劣を付けたがるものは多い。自分の得意な属性を応援したくなるのだろう。


<<お主は……そんな意地悪せんでもよかろうに。>>


 実際、同じクラスの中でも「我の魔法こそは……!」って思い込んでいるものは多い。だから、改めてこの事を理解しておくのは大切だ。


 それに……。


<<それに?>>


 可愛い子には悪戯したくなるじゃない。


<<変態。>>


 褒め言葉です。


 脳内でそんなやり取りをしていると、意外なところから助け舟が出た。ナターリアである。


「そんな茶番やめなさい。4大魔法、火・水・風・土に優劣は無い筈よ。」


 意外である。ナターリアとかだと自分の魔法が世界一って言うような感じがしていた。エレナもナターリアからの助けは予期していなかったのか、目をパチクリさせて驚いている。


「その通り。さっきのは引っかけ問題だ。」


 皆から、「引っかけかよー」との声が上がってくる。俺はナターリアの得意な魔法に興味を持った。彼女が魔法を使っている様子は一度も見たことが無い。


「ところで、ナターリアは何の魔法が得意なの?」


ワタクシですか? 私は……」


 ―――キーンコーン、カーンコーン


 と、ここで鐘の音が鳴ってしまった。


「という訳で、今日はここまでだね。さっきのピーター先生の授業で分かったこと、学んだことを羊皮紙に書いて提出してください。まだ書いている人は休み時間の間に持ってきてください。それでは以上。」


 ポール先生の言葉で教室から皆出ていく。


 恐るべき偶然であるが、ここでは地球に居た頃と同じ鐘の音が使われていた。聞きなれた音に、毎度、地球の故郷の事を思い出す。


「ピーター、学食へ行きましょう。」


 ミーナとエレナ、それからフランクが俺を待っていた。行かなきゃな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「得意な魔法か……。」


 授業も終わり、同級生達が出ていく中で、私は自分の固有ユニーク魔法について思いを馳せていた。今頃、あの侍女はどうしているのだろうか。


 この窓の外の大空の下、何処かで元気にやっているのだろうか。私に対して、唯一対等に接してくれたあのメイド。さっきの流れでふと思い出してしまった。


「また逢いたいな。」


 誰もいない教室で私の声は木霊する。

本話は魔法に関する説明回でした。


ナターリアの魔法とはどんなものなのか?


※拙い文章ですが、引き続きお読みいただけると幸いです。

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