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ヒーロー?悪の方がいいに決まってる!!  作者: 小田和 リナシヲ
第2章 魔法学園:入学編
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第21話 胎動するグランジェネシス

無事学園への入学が決まったピーター達。


村へ戻って組織の報告会を開きます。


それではどうぞ。

 合格発表の後、エレナはエルフの隠れ里へ戻っていった。何かと不幸体質なエレナを心配して、故郷まで連れて行く提案もしたが、やはり隠れ里の場所は俺達に教えることができないそうだ。


「また初夏に学園で会いしましょう。」


 手を振って来るエレナは可愛い。まるでシマリスみたいだ。


 一方、俺達も村へ帰る予定だが、組織の用事を一通り済ませてから帰ることになった。エレナが出ていったこともあって、自由に動くことができる。俺とミーナは組織のヴァルキュリア支部候補地を見て回り、基地の改装計画を練っていった。


 在学期間は5年ある。クリエの力を使って、今すぐ改装に着手する必要はない。


 また、ヴァルキュリア付近で情報収集にあたっていた怪人達とも会話し、次に俺達がヴァルキュリアへ来るまでの間、下宿の一軒家を貸すことにした。


 行きは徒歩と馬車の旅だったが、ジョバンニが作った転移魔法陣を使うことで、瞬時に自宅の地下アジトまで戻ることができた。


―――合格発表から1週間 レウマータ村 グランジェネシス 本部


「お父様、アグネは立派に家を守っていましたよ!」


「その話するの何度目だよ。アグネが偉いのは分かったから。」


「「最初の頃は、アグネおねーちゃん泣いてばっかりだったよ?」」


「止しなさい! それは秘密でしょ!」


「「えへへへ!」」


 こっそり村へ戻った俺達はそれぞれの家で結果の報告をした。俺は母さんから入学の許しを得ていたが、ミーナは入学試験を受けるところまでだ。まずは試験結果を見てからと言う事だが、恐らくヴァルキュリアへの入学もオーケーだろう。


 俺達は戻って家族や近所へ一通りの挨拶と報告を済ませた後、イチゴの集荷センターへ向かった。俺達の村は表も裏もイチゴと切っても切り離せない関係になっていた。


 村では農業というか苺ギルド、日本で言うところの農協みたいなものだが、そこで各都市への出荷を管理している。個人経営の農家もいるのだが、レウマータ村全体でみると7割近くがここに参加している。その苺ギルドのメインスポンサーは村の代表、領主のアストラージ家である。


 ミーナのパパが代表であれば、組織としても息をかけやすい。そこで、俺達は苺ギルドの所持する集荷センター及びイチゴの加工工場、そして従業員以外立ち入りを禁じているビニルハウスのテント工場の3か所から潜ることのできる地下空間を創り上げた。


 その場所こそ、『グランジェネシス』の本部、地下秘密基地である。自宅アジトは今はもう初期メンバーで集まる時ぐらいしか使っていない。自宅の地下室は狭く、入ってもせいぜい10人が限度だった為だ。


「「おとーさんに会えて私達も嬉しい!」」


「おぉー!俺も会いたかったぞ!」


「あー!ずるいです!私にはそんな態度一度もみせてくれないのに!」


 俺にすり寄って抱き付いてくる双子は、1年程前に創り上げた組織の怪人である。なるべく一人ひとり被らない個性を持たそうと考えていくと、こんな可愛い感じの子供が産まれていた。


 怪人を創る時はミーナと一緒にやるのだが、ここ最近は役割分担がしっかりしてきた。能力や怪人時の外見等の担当は俺。それ以外、普段の性格や人間態時の外見はミーナちゃんがイメージしている。当初のアグネジャ召喚のことを懸念して、過激な連中を創り出さない為のストッパーで役に立って貰っている。


 ちなみに彼女たちの名前はオクトヴィア・キラーベルとジューン・キラーベル。これは特撮ヒーロー「インセクトバイカー」に登場した極悪姉妹である。彼女達は……


「やめるのじゃ……、お主の思考を共有しておる妾の身になってくれ。」


 クリエも今日は気兼ねなく話すことが出来る。


 入り口となる隠し階段を降り、中央大会堂までの長い廊下を歩いていると、別の怪人と談笑するミーナと遭遇する。


「「あー!おかーさんが他の男と喋ってるー!」」


 指を指しながら大声を上げるキラーベル姉妹。


「こらこら、そんな言葉覚えてくるんじゃないの。そもそも別の男って、あれはお前らの兄ちゃんだろ?」


 俺に諌められても、互いの顔をみてクスクスと笑う彼女達は、俺の両脇を抜け出て廊下を走っていく。前方に居た怪人にパンチとキックをかまして、ミーナに注意を受けるも、それを碌に聞かないまま風のように去っていった。


「あいつら、僕のことを絶対嘗めてるんだ。後で仕返ししなきゃ。」


「お前もそんなこと言うんじゃないの。」


「だって、パパ!」


「いいか男は女の我儘や勝手は黙って許すもんなんだぞ。」


 彼はレオニア。人間態の姿だと俺よりも身長が低く、カールした髪が可愛らしい俺に負けず劣らずの美形である。


「……。ふぅ。」


 クリエから何か溜息が出たが、無視しておこう。


「じゃあ、私も良いですか!」


「お前は駄目。」


「即答!?」


 何かアグネが騒いでいたが、俺達は無視してそのまま歩いて公会堂へと入る。


「レオ。さっきの言葉には例外がある。自分の子供の我儘はある程度までだったらいいけど、こういう毎回おかしな要求をしてくる人は相手にしちゃ駄目だぞ。」


「アグネお姉ちゃん……ちょっと可哀相。」


「あぁ、あんたは優しいのね。」


 レオニアはミーナのお気に入りである。すっと後ろから抱き付いて頭を撫でてもらっている。


「うらやましくなんかないもんね。」


「お主、声に出とるぞ……。」


……


―――グランジェネシス 本部内 中央大公会堂


 すり鉢状の部屋の中心には円卓のテーブルが設置され、そこを4方囲むように長椅子が設置されている。ちらほらと怪人達が座っており、各々人間態であったり、通常の姿であったりと様々な格好で皆が集まるのを待っていた。広い中央公会堂が満席になる訳ではないが、ゆくゆくの組織拡大を見越して広い設計としたのだ。


 俺は入り口からみて一番奥の座席に座る。現状は名誉職みたいなものだが、総統の特権で他の席よりも椅子のグレードを高くしてもらった。黒の革張りでシックに仕上げられており、偉い人の座る席と一目で分かるようにしてもらった。


 そろそろ始めてもいいか。


「皆、久しぶり。まずは報告を。俺とミーナが無事、ヴァルキュリア魔法学園に入学決まりました。」


 拍手がなり、「おめでとう」の声が聞こえる。ありがたや。ありがたや。


「私からも、みんなの応援のおかげで無事受かることができたわ。魔法の練習に付き合ってくれた皆、ありがとう。」


 俺に続き席を立ちあがったミーナが皆にぺこりと挨拶する。


「お母様なら受かるって分かってましたよー!」


 同じくテーブル席にいるアグネが大声を出す。ミーナは恥ずかしかったのか、顔を赤くしながらアグネを叱っていた。皆の笑いが暖かく、いつもの光景に和まされる。


「それじゃあ、改めて今日の定例報告会を始めようか。」


「今日確認したいことは大きく三つ。一つ目、ヴァルキュリア学園の支部設置について。二つ目は、俺達に対する帝国と魔族の不審な動きのこと。そして、最後に組織編制について。」


「まず最初の二つは、ジョバンニから皆に説明してもらえる?」


「支部となる場所が無事決まりました。こことは違って、既に出来上がっていた地下部屋の為、リフォームが必要です。総統と話して少しずつ改装していきます。」


「また、情報班のガマグチ、ラット・ハット、クロワシについては総統達の学園通学が始まる前まで、下宿をアジトに引き続き情報収集にあたって貰います。ここまで何か異論有りませんね?」


「はい、有ります!」


「では、次に……」


「あー。ちょっと待って、アグネどうしたのかな?」


 眉間にしわが寄りつつも、俺は極めてにこやかに話をする。いくらおっぱいが大きくても、度が過ぎれば怒りは静まらないものなのだ。まぁ、眷属のジョバンニが一番彼女の扱いを分かっているのだけど、念のため聞いてあげよう。


「私もヴァルキュリアへ行きたいです!」


「はい、却下。お前は大幹部としてここに残って貰いたいの。それに母さんのこと頼めるのお前だけなんだから。」


「皆してヴァルキュリアへ行っているじゃないですか。なんでアグネだけ……。」


「う〜ん……。どう思う?」


「私は今回に限っては大反対です。」


 お、珍しく、ジョバンニの声に怒気が混じっている。


「ちょうど続きの話しですが、先日、総統を含め僕達は帝国の冒険者達と遭遇しました。」


「帝国軍がギルドで雇った傭兵であることは確認済みです。一人は賢者マーティン・ウィリアムズ。嘗ては帝国内の冒険者ギルドのランキングで首位にまで上り詰めた人物となります。後輩の育成に努めていましたが、僕たちの討伐に加わり僕たちの正体を追っています。残り二人はその弟子のケビン・フォン・エルリックとケーティ・ウィリアムズ。共に孤児の出身です。ケーティの実親は不明、マーティンの養子として育てられています。」


 ジョバンニが一通り喋った後、情報を追加するようにガマグチ君が続ける。今日のガマグチ君は人間態である。角刈りの頭にサングラスをつけて……って、毎回思うけど完全にヤーさんである。但し、漢として格好いいんだよなぁ。


「一応、こちらは冒険者業を止めておりやすが、学園の教師にポールという彼らの元パーティメンバーが居りやす。」


「ピーターの親父の面接官をやっていました。低学年の授業を受け持つことが多いようで、親父や御袋の授業を受け持つことになるかもしれやせん。」


「後、マーティンとヴァルキュリアの学長、ブライ・シルベリオンが接触したことは親父も目撃されてらっしゃいます。これは邪推かもしれませんが、マーティンがブライに協力を求めに来ただけかもしれやせん。」


「あっしからは以上です。」


 ガマグチ君が座ると同時に、キラーベル姉妹が発言する。


「「それで、おねーちゃんが行けない理由って?」」


「非常にリスクが高い。ヴァルキュリアを発って、王国内の他の街へ出たことは確認済みです。しかし、マーティンの魔力検知は尋常ではありません。五感の全てを奪っても、彼はマナを見ることで人物の特定が可能な人間です。そんな奴の前にこの鈍感なご主人様が現れたらどうなりますか?」


「「……。」」


「なんで黙るんですか!?」


 アグネには残念なことに、擁護派であったろうキラーベル姉妹も押し黙ってしまった。


「まあ、目途は当分立たないだろうけど、いつか村の皆をヴァルキュリア観光する予定組むから。それまでは待ちなさい。」


「ッ!ピーター君!」


「総統でしょ?」


「……。貴方は甘いです。上級の魔導士はとんでもない化け物なんですからね。」


「最近はアグネジャとして上手く活動できないのは知っているけれど、本来の力を取り戻せば彼女は設定上強い筈だから。」


「う〜、なんか微妙な気持ちです。褒められているんだか、貶されているんだか……。」


「だから、アグネはその時まで待つこと。いいね?」


「はい、お父様。」


 一段落したアグネが着席したところで、ミーナが立ち上がる。


「それじゃあ、最後に組織編制のこと。取り敢えず、この円卓に座っている人物については改めて、組織内の役職を口頭で確認します。組織表はまた後日配布する予定です。」


「まず、ピーター・クロイツェフ、総統。組織内のトップです。これまではジョバンニが総統として決断すべきところも実質担当していましたが、年齢が12歳になったこと、実家を離れるようになる為、改めて総統であること確認します。」


「次に、私、ミーナ・アストラージは総統直属部隊指揮官です。今後、総統直属機関を作ります。その際に私がリーダーとして班を纏めることになります。一応、アグネは班員に内定しているようなもんだから宜しくね。」


「はい、任せてください。ってあれ? 私は一応、大幹部と思うのですが……。」


「そう、貴方、アグネジャは総軍司令兼破壊工作参謀。人手が不足していて兼任が多くなっちゃうのよ。」


「す、既に兼任しているようですけれど、お母様?」


「更に兼任♪」


「えー!」


「そんなこと言わない。ジョバンニは大変なのよ。ジョバンニ・ラーハン、副総統(総統代理)兼情報参謀となります。但し、情報参謀の役割は今までと違ってガマグチ君に引き継ぎたいって思っている。今までの任務を減らしてあげたいのよ。これには誰も異論ないでしょ?」


「ラスト、クリエイティア。」


「おぉ、終に妾の番じゃな!」


「貴方には特別顧問スペシャル・アドバイザー兼生産部門主席に任命します。」


「「「「???」」」」


「なんじゃ?すぺしゃる・あどばいざー?」


「うーん、はっきり言うと名誉職。正直、クリエは動けないし、誰か居ないと何もできないじゃん。ていうか……」


「「魔道具だもんね!!」」


「そ、そんな……。」


 絶句するクリエを余所に、その最後の発表を以て会は終了する。クリエ、残念。


「いつか、妾も身体を持ってやるからの!覚えとれ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


―――深夜 ヴァルキュリア 城内 地下


 学生や教員が居なくなった深夜の学内。そこに一人の魔族の姿があった。名をアイーダという。彼女ははぐれ魔族がヴァルキュリアに居るという噂を聞きつけ、学内に潜入したのである。


 そもそもはぐれ魔族とは、嘗て魔族の国家に住んでいない魔族のことを指していた。しかし、時が経ち魔族の国家で魔王と呼ばれる存在が大きな権力を持ち始めてからは、その意味合いも変わっていった。


 今では、国家もしくは魔王の名を以てして、敵性行為を行った反逆者・犯罪者を種族から追い出すこと、そして、討伐することを意味する。


 そういった意味では、得体の知れない『グランジェネシス』の者をはぐれ魔族と認定する事は難しい事であった。そもそも種族がイマイチつかみきれない連中が多かったのだ。


「なんとしてでも、やつらの尻尾を捕まえねば……。」


 アイーダには責任があった。彼女は魔王に謁見し正体不明の魔族の危険性を説き続けたのだ。結果、はぐれ魔族として討伐することが現実となり、アイーダが実行部隊の隊長として任命されたのである。


「ここは?」


 真っ暗闇の筈の構内で、石床から光が漏れている。


(あんなところに、地下室など無かった筈だぞ……。)


「マナよ、我が右腕を頑強な氷剣にせよ<<アイススピア>>」


 アイーダは自身の氷魔法を使い、腕を氷の大剣に変化させる。そして、光が洩れだす石と石の間に差し込み、力を方々に入れていった。


(これは少し力を加えれば、石床ごと持ち上がるな……。)


 大剣の先端を鍵爪状にして石床を引っ張ると、人が一人分くらい入れる穴とその奥に続く階段が見えた。アイーダは臨戦態勢のまま、注意深く階段を降りてゆく。松明がまばらについた階段を降りると、正面に扉が有る。明かりがついており、物音が聞こえた。


 ―――誰かいる。


 注意深くドアノブに手をかけ、中の様子を伺うアイーダ。


(薄暗くてよく見えないが、円柱の水槽がいくつも並んでいるのか?)


 部屋の中へ入り、水槽の中身をよく見ると何かが蠢いている。細目で注意深く観察していると、アイーダはそれが何か気付いた。


「……こっ、これは!?」


 その時、水槽にはアイーダ以外に後ろから覗き込む不気味な影の姿が写りこんでいた。

アイーダはどうなるのか?

そして、ヴァルキュリアに蠢く闇とは?


※本話にて出た組織表は追って投稿する予定です。

⇒20150712画像として投稿しました。

 挿絵(By みてみん)

※拙い文章ですが、引き続きお読みいただけると幸いです。

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