第四話「セナの問い」
セナは、ルカより先にサブレ様に聞いた。
何百年も生きることの意味を。
ルカがまだ聞けずにいた問いを、セナはある日の昼過ぎ、サブレ様の前に座った瞬間に聞いた。
「サブレ様」とセナは言った。「何百年も生きることは、どんな感じですか」
ルカはセナを見た。
直接すぎる問いだと思った。しかしサブレ様は怒らなかった。
「どんな感じか」とサブレ様は繰り返した。「難しい問いだ」
「難しいですか」
「難しい。感じ方が変わるから。最初の百年と、今では、同じことが違う感じになっている」
「最初の百年はどうでしたか」
「最初の百年は」とサブレ様は言った。「速かった」
「速い?」
「新しいことが多かったから。見たことがないものを見るたびに、時間が速く過ぎた。楽しかった、ということかもしれない」
「楽しかった」とセナは言った。
「楽しかった」とサブレ様は言った。「しかし——」
「しかし?」
「周りの者が、先に死んでいった。楽しかったが、一緒に楽しんでいた者たちが、先に逝った。それが、重なっていった」
セナはしばらく黙っていた。
「何人、見送りましたか」とセナは言った。
「数えていない。数えると、重さが変わる気がして。だから、数えないことにした」
「数えない方がいいんですか」
「どちらがいいかは分からない。ただ、私には数えない方が合っていた」
「サブレ様は寂しくないですか」とルカは言った。
サブレ様はルカを見た。
「寂しい」とサブレ様は言った。
「寂しいんですか」
「寂しい。寂しくなくなることは、ない。しかし、寂しさに慣れる」
「慣れたら楽になりますか」
「楽にはならない」とサブレ様は言った。「慣れるというのは、楽になることではない。寂しさがそこにあることを、知ったまま生きることだ」
セナはその言葉を、しばらく考えていた。
「知ったまま生きる」とセナは繰り返した。
「そうだ」
「それは、辛くないですか」
「辛い」とサブレ様は言った。「しかし、お前たちが来てくれると、少し違う」
「どう違うんですか」
「寂しさが、薄くなる。消えはしない。しかし、薄くなる」
ルカはセナを見た。
セナもルカを見た。
「毎日来ます」とセナは言った。
「毎日来なくていい。来たい時に来い」
「毎日来たいんです」とセナは言った。
「俺も」とルカは言った。
サブレ様は二人を見た。
「そうか」とやがて言った。「そうか」
「来ていいですか」とセナは言った。
「来い」とサブレ様は言った。「いつでも来い。私は、ここにいる」
セナはルカの方を向いた。
何も言わなかった。
しかし目で、良かった、と言っていた。
ルカも、そう思っていた。
(第四話 了)
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