表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サブレ様の一族――炎の子らの唄 - 続・鬼の渡し場  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/10

第三話「炎の子」


三度目に丘へ行った時、ルカの手が熱を持った。


斜面を登りながら気づいた。手のひらが、じわりと温かくなっていた。熱い、というほどではなかった。しかし、確かに温かかった。


「手が熱い」とルカは言った。


「見せて」とセナは言った。


ルカの手のひらを見た。


「普通に見えるけど」


「熱い」


「どれくらい」


「囲炉裏の傍にいる時くらい」


「それは熱い」とセナは言った。「丘に近づいたから熱くなるのか」


「分からない」


丘の入り口まで来た。


サブレ様が立っていた。


今日は木の根元ではなく、丘の入り口で待っていた。


「来たか」とサブレ様は言った。そしてルカを見た。「手が熱いだろう」


「熱いです」とルカは言った。「丘に近づいたら熱くなりました」


「そうだ。炎が、目を覚まし始めている」


「丘のせいですか」


「私のせいだ」とサブレ様は言った。「私の炎が、お前の炎を呼んでいる。近くに来るたびに、少しずつ目を覚ます」


「では、毎日来れば」


「毎日来れば、早く目を覚ます。しかし、急ぐ必要はない。炎は自分のペースで目を覚ます。それでいい」


三人は丘の上まで登った。


木の根元に座った。


「今日は、炎のことを話す」とサブレ様は言った。


「はい」とルカは言った。


「炎というのは、力のことではない。鬼の中には、炎を武器として使う者もいる。しかし、それは炎の本来の姿ではない」


「本来の姿は何ですか」とセナは言った。


「灯すことだ。暗いところを照らすことだ。温めることだ。繋ぐことだ」


「繋ぐ?」とルカは言った。


「炎は、人と人を繋ぐ。古い時代から、人間も鬼も、炎の傍に集まって話した。炎があるから、一人ではなくなった。炎は、孤独を溶かすものだ」


ルカは自分の手のひらを見た。


まだ温かかった。


「俺の炎は」とルカは言った。「どんな炎ですか」


「それは、使ってみなければ分からない。炎は、持つ者によって変わる。お前の炎は、お前だけのものだ」


「使い方を教えてもらえますか」


「教える。しかし、今日ではない。今日は、炎が何かを知るだけでいい」


「なぜ今日ではないんですか」


「炎が、まだ十分に目を覚ましていないからだ。眠った炎を無理に使えば、使った者が傷つく。待て」


ルカは頷いた。


「サブレ様の炎は」とセナは言った。「どんな炎ですか」


サブレ様は少しの間、セナを見た。


それから、右手を前に出した。


手のひらを上に向けた。


何もなかった。


しかし、しばらく見ていると、手のひらの中央に、小さな光が生まれた。


橙と金の、小さな火の粒だった。


揺れていた。生きているもののように、かすかに脈打っていた。


「これが」とサブレ様は言った。「私の炎だ」


ルカは息を止めた。


セナも止めていた。


「きれい」とセナが小さく言った。


「きれいか」とサブレ様は言った。


「きれいです」


「そうか」とサブレ様は言った。「長く持っていると、きれいかどうか分からなくなる。お前が言ってくれると、また分かる気がする」


光の粒が、消えた。


サブレ様は手を下ろした。


「また来い」とサブレ様は言った。


「来ます」とルカは言った。


「明日も来ますか」とセナは言った。


「来てくれるなら、来い」


「来ます」とセナは言った。


帰り道、ルカの手はまだ温かかった。


炎が、目を覚まし始めていた。


(第三話 了)


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ