第一日目 11月30日の14時スタート
とりあえず、アルバートルが完全に姿を消したのが14時少し過ぎだったが、おそらくここからカウントが始まっていると見るべきだろう。
ここで幼い頃にダグドが夏に話してくれた、「怪談」というものを思い出す。
女のお化けに取りつかれた男が、そのお化けに取り殺されないように自宅にお札を貼って籠るのだが、お化けが朝になったと男を騙す事で男は扉を開いてしまい、殺されてしまうという恐ろしい話である。
私達が夜な夜なダグドの城に忍び込む挑戦をしている事を止めさせようと、彼が私達を脅えさせようと企んでのその昔話だと思うが、私達は彼のその昔話を利用して、怖くてトイレに行けない、怖くて眠れなくなったと嘘をついて、一週間ダグドを私達の屋敷に縛り付けた事も思い出した。
「よし。あの頃の私に戻ろう。アルバートルの言う通り、頭を働かせるのよ!」
「ノーラ、領地を案内してくれないか?せっかくの機会だ。友達として二日間を楽しまないか?」
「あら、外に出ても良かったの?アルバートルどころか私達以外の人がこの家に入った時点でカウントが停止しちゃうんでしょう。」
アールは気立ての良さそうな無害な笑顔を顔に浮かべたが、私の言葉を否定することは一切口にしなかった。
凄いぞ。
お化けでさえ最後の最後に鶏の鳴き声をマネするだけなのに、アールは初っ端から私を騙しにかかっている!
「もう!あなたはカウンターを止めようとしているわね!」
「君とぶらぶら散策する、という夢を叶えたかったんだ。すまない。」
私の胸はグサッと何か見えないもので貫かれた。
笑顔のまま目元だけ寂しそうにしてそんな悲しい台詞を吐くなんて、彼は卑怯この上ない。
「えと、夜に散歩はどうかしら。人がいなければ大丈夫なんでしょう。」
「うん、いいね。それじゃあ、今夜早速だ。冬で良かった。こんなに寒いけれど、月明かりで真っ暗にならない。月明りで照らされた君の笑顔を眺めていられる。」
そう言いながら彼は私の横に立ったが、それは私の左側だった。
カイユーも私の左側に立ちたがるなと急に思い出して、なんとなくアールに尋ねていた。
「あなたは私の左側に立つことが多いわよね。」
「ノーラが左耳に髪の毛をかけているからね。こっちの方が君の美しい顔がよく見えるから。」
「そ、そそそそうなの。あ、ありがとう。」
私は真っ赤になっていただろう。
そして、アールにかなりの罪悪感を抱いていた。
だって、アールのお陰で、カイユーにずっと愛されていたんだなって再確認できたのだもの。
――俺はノーラをずっと見守っているから。
彼は私が彼の気持ちに気が付く前から、ずっとずっと私を見つめていたんだ。




