微睡みの中に見えた真実
カイユーが去った後に私が寝直せなかったのは当たり前の話だ。
それでもカイユーから受けた温かさや彼という存在を私の肌から消えて無くしたくはないと、私は服を着直すとのそのそとベッドに戻り、ベッドの中でカイユーのキスを何度も何度も反復してしていた。
淫売だと阿婆擦れだと罵られたってかまわない。
私は何度だって彼を抱き締めて、彼のキスを乞いたい気持ちなのだ。
そうして彼を思い浮かべるために閉じたままの瞼に太陽の光を感じられるに至って、私は一睡もしていなかったと自分を笑った程だ。
カイユーが私の下に来るまでは、泣き腫らした目は開かず、一生瞼など閉じていたいと願っていた。
カイユーに抱きしめられた後から今までは、ああ、幸せだと、何度も何度も彼を思い浮かべるために瞼など開けたくはないと願っているのだ。
ふわっと、私の耳元に吐息を感じた。
羽で触れるようなふわっとした感触は頬から私の輪郭をなぞり、それからその唇は私の唇に触れた。
太陽の光を受けた体は温められ、だから私はようやくの眠りにつこうとしているのかもしれない。
カイユーの唇の感触をこんなにもリアルに感じるのだ。
夢ならばと私はカイユーを抱き締めた。
私の背中にもたくましい腕が回されて、ただし、回された腕は一本だけだ。
右手は開けていないと私の身体を宥めることはできないだろう。
私は大きくてしなやかな指によって私の輪郭をなぞられているのだ。
私はカイユーを見つめたいと望み、しかし夢の中の私は夢の中だからか瞼を開けることができない。
瞼を開けなくとも眩しい位の光に私は包まれていて、とっても温かいこの状態から抜け出したくはないと微睡み続け、でも、それでも私はカイユーの瞳を覗き込みたかった。
彼の茶色の瞳の中を覗き込みたかった。
私はモニークとイヴォアールのように、愛し愛される自分を確かめたかった。
なのに、私の瞼は開かず、夢の中のカイユーの手は私の胸の頂きにとうとう到着してしまった。
そこを触っては駄目。
彼とのひと時がそこで終わってしまった記憶で、夢の中でも彼に飛びのかれてしまうのは嫌だと、私は自分の胸に触れるカイユーの手を止めた。
そこで私ははっと気が付いた。
大きくて長い指を持つしなやかな指には、カイユーの指にあった固い所が無い。
銃騎士であるカイユーの指には、銃を持つことで出来るタコがあるのだ。
私の目はパッと見開き、私を包んでいた太陽の明りも温かさも一瞬で消えた。
カイユーが入ってきた窓ガラスは光を浴びているが、それは太陽ではなく沈みゆく月の光だ。
私は自分の夢に、いえ、起きたことだと恐怖のまま布団から起き上がり、夢の中でなぞられた自分の顔の輪郭を自分の両手の指先でなぞっていった。
夢なのに恐ろしいぐらいに生々しく感じた感触だと、私は自分をなぞりながらぞっとした。
だって、カイユーじゃない男性に触れられて喜んでいた夢だったと、自分の淫らさにぞっとするしか無いではないか!
「私はアルバートルが言うように経験だけしたいの?ただの発情期の雌でしかないの?どうしてカイユーじゃない男性に触れられる夢なんて見るのよ。」
自分が情けないと両手で顔を覆おうとして、私の右手首だけがほんのりと温かいとなぜだか急に気になった。
そして、恐る恐ると袖を引きさげて、私は自分の情けなさに泣くしかなかった。
――私があなたを想い続けることを、私がいつでもあなたに会いに行けることを、あなたは許して下さいますか?
――ええ、いいわ。
無邪気な私。
汚れた私。
私はアールに身を任せてしまったと同じなのだ。
私の右手首にはコポポル国の印が輝いていた。




