洗濯室でチクチクと
私に告白してアリッサは力が抜けたのか、彼女は洗濯室に残って私がシロロの服を繕う横でシロロの服の裾に刺繍をし始めてしまった。
アリッサは刺繍も上手いが、裾にアマガエルを縫い付けるのはどうかと思う。
「お花にしてあげたら?」
「これでいいのよ。首元の繕いを兼ねたノーラの刺繍がホラーなんだもの。これでバランスがとれるはず。」
「ホラーってどういう意味よ。」
「そのままの意味よ。あなたって刺繍は上手なんだけど、どうして完成がそうなるのかって感じよね。一つ一つが素敵な花や小鳥や魚なのに、全体としてみると、なんだか黒ミサの生贄祭壇みたいな怖さよ。」
「ひどいわね!」
でも、手を止めてシロロの服を見直してみると、刺繍がなんだか呪いの象形文字のような配置にも見える。
「あ、本当。あなたの言う通り。どうしてなんだろ。やっぱり私って性格が悪いのかな。作品に滲みでちゃうのかな。」
「性格が良いって思っている所が凄いわよね。」
「え、性格が悪くても、私は良い子ちゃんでいたでしょう。」
アリッサは無表情な表情で私を数秒見つめると、確かに、とは呟いた。
それから、私の知らない私を教えてくれた。
「良い子でいようとして一般論をぶちまけて場を適当に収めようとするでしょう。それがとっても怖いってあなたは知っていた?トレンバーチでのあなたの演説、私は忘れられないわ。」
「何か言ったっけ?」
アリッサはケっと女の子らしくない声を上げた。
「さっすが。覚えてもいないとは。あなたはね、アルバートル達が街に与えた損害を、これがダグド様の怒りですってにこやかに言って、この損害分が私達の価値なんですよって、彼らの損害分をそのまま慰謝料の金額にして請求しちゃったじゃない。エレ姐どころか、あのアルバートル隊の顎が外れる程の驚き顔、あなたは覚えていないの?」
「いや、だって、それは普通に一般論よ。事実じゃない。あなたやエレ姐はダグド様にとってそのぐらいの価値がある。」
「何で私とエレ姐限定なの?」
「いや。私は普通に普通で価値は普通だし。ダグド様が私のドレスだけ花柄にしちゃったのは私に華が無いからでしょう。」
「はあ?あなたが春の女神のフローラだからって、それでよ。」
ダグドが語る春の女神は、そういえば花柄の服を纏っているという設定だったと、私は初めて知った自分の評価に口元がにへっと笑いそうだった。
いや、にへってなっている筈だ。
「まぁ、うれしそう。」
やっぱり。
「まぁ、私は不思議の国のアリス、らしいけど。」
ダグドが昔話として語る物語の一つで、ウサギを追いかけて不思議の国に行った主人公の少女が自分で考えて困難に打ち勝つような話だった。
「あれは素敵な話よね。そうね、幼いのに自分で運命を切り開く、あなた自身のような素敵な女の子だわ。」
「切り開いていないわよ。私は嘘つきなの。私は孤児院の寄付の為に身売りしたんじゃ無いの。孤児院がお金が必要だって、私を売っただけなのよ。あなた方のように村の存亡をかけて捧げられた人とは違うの。」
「あら、私も大嘘つきよ。私はね、財産略取に邪魔だからって、ちょうどいいからって、実の叔父に捨てられた捨て子よ。」
私達は顔を見合わせて大笑いをした。
嘘つきな私達だが、互いに互いを凄いと思っていたなら良いでは無いか。




