閑話 仇の死
正応6年 (1293) 6月 一色太郎
4月に地震が起きた、それまでは特に変わったこともなく、しいて言えば宿場町の口コミが広がりようやく黒字化したが、地震の影響もありしばらくは人足が減りそうだ。
「うまくいかんのぉ」
「そうか?お前が始めた馬産業は結構な収益を上げとるし、ほかにも始めた郵便業もなかなかの利用客がおる。別に問題ないではないか。」
「そうではないわ。まず牧場は馬を売るつもりでもともと始めてないし、賄いきれないっていう、明らかに負の理由から始めたものだぞ。郵便業も一回の効率が悪すぎて話にならんわ。薄利多売でやるわけにもいかないだろうし」
「なぁ、薄利多売って何なんだ?」
「あぁ、今頃もっと稼いでウハウハだったはずなのに、地震も重なるとは俺の快適領主ライフが遠のいていく」
「なぁ、薄利多ば...「若、大変です」」
守時が板を踏み鳴らして力強く走って、部屋に入ってきた。
「鎌倉で、平頼綱が執権の北条貞時さまの使者に殺されました!」
「誰?」
「あの平頼綱ですよ、霜月の騒動でうちをめちゃくちゃにしやがったあのクソ野郎が死んだのです、天誅だ天誅だ」
そろそろ5年ほどになるかもしれない友人の新しい一面を知った、こんな奴だっけ?
「それでは、当主さまに伝えてまいりますね。」
そういうと守時は再び駆け足で出ていった。
「なぁ、その平頼綱とやらが死んで結局何が変わるんだ?三郎」
「知らねぇよ、あと薄利多売について教えて?」
「やだ」
「エ゛ッ、ナンデヤ!」




