一章 五話 東海道一の騎馬隊が欲しい
正応元年(1288) 5月 赤嶺公波
久しぶりの休暇はいいね、坊ちゃんは呑み込みが早く何でもすぐにできるようになるから、教えることがあっという間になくなりそうで怖いわ。
久しぶりの狩りだから感がなまっていないか不安だな。坊ちゃんそういや、肉食いたいとか言っててっけ、奥方がそういうのをとくに嫌うから鳥すら食う機会が少ないとか。
カサカサと音がすると、近くの木に縄をひっかけて上り、周りを見渡す。
「いったいどこに居やがるんだ?」
そういって、音がした方向を重点的に見渡す。
するとそこには、鹿の群れがいた。
その日の夕方
「いや~、大漁大漁よくとれたわ」
これを坊ちゃんをやる気にさせる餌にしてやろう
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
正応元年(1288) 5月 一色太郎
公波が大量の肉を持ってやってきて、
「今日の鍛錬は、いつもより厳しくいく。しかしこの鍛錬を乗り越えたものには...焼肉祭りじゃ!」
「「「やっほーい!!」」」
その日のメニューは確かに過酷だったと思う。しかし肉というのは非常に魅力的なものでして、サーキットはいつもの五倍、実は三月くらい始めていた、刀術は素振りをいつもの3倍もした。
鍛錬後家には、赤嶺邸で焼き肉をしたらふく食ったあと、そのままお泊り会もしたが、三郎のいびきがうるさすぎて眠れなった。
翌日
「なぁ、公波もっと肉をとれないか?」
「肉ですか、それなら鶏を飼えばよろしいのでは?」
「鶏か!いいなうちに帰ったら提案してみる。ただ昨日みたいな肉のほうも食いたいのだが?」
「それなら、鹿を飼えばいいと思いますがね」
「絶対、お菊様が拒否するだろうな」
「ですよね、そうだ、馬を飼うんです」
「馬、まさか馬肉を食えっていうのか!馬は武士にとっての相棒だぞ。そんなことを父上がお許しになるはずがない!」
「しかし、馬を飼う理由は簡単に作れますぞ」
「どのようにして?」
「なぁに、私が予備の馬の数が足りないと進言すればいいのですよ。それと食べるのは、老いた馬だけにしたら別にもともと戦には連れていきませぬし問題ござらん」
「なるほど、公波進言頼んだぞ」
「任されよ」
そうして、このあと馬牧場を作り、本格的に馬の飼育が始まった。
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
正応2年(1289) 11月 一色太郎
本格的に冬の訪れを感じ始めたころ、俺のもとに一報が入った。
馬牧場に最初の馬が生まれたそうだ.。
馬の子供が生まれるのが三月から9月ほどといわれているので、かなり遅い生まれだ。
うきうきで、最近生産し始めた皮の防寒具を身にまとい、牧場へと行く。
まだまだ小さいこの牧場にたどり着くと、そこにいたのは青毛(黒色の馬)の赤ん坊にしては大きい赤ちゃん馬だった。
「俺はこいつと一緒に大きくなるよ」
その馬と目を合わした時、自然と口からこぼれ出た言葉だった。自分でも、まさかこんなことを言うと思っていなくって、困惑していたがその言葉が自分の本心であることは理解していた。
この日から牧場に毎週最低一回は行くようになり、成長を見守りながら、乗馬の訓練を続けていた。
「はやく、この子に見合うような技術を身に付けないと」
その思いは馬術の修練を一層磨いていった。
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
正応三年(1290) 三月 一色公深
太郎が馬術の修練に熱中しているという報を聞き、お菊とほほえましく聞いていると、都から恐ろしい一報が入ってきた。
浅原為頼ら武装した三人の集団が皇太子殿下を襲ったという知らせが入った、どうやら未遂で終わったようだが、どうやら霜月の騒動で所領を没収された甲斐源氏流の小笠原家の庶流の出のものらしく、生活に困窮した末にこんな凶行に及んだそうだ。
そういえば、この前太郎が連れてきた伴野守時もたしか小笠原の庶流出身だったので、道を違えていたらあの集団に加わっていたのかもしれないな。あの鬼のようにでかい体格が参加していたらと思うと、背中が凍る思いだ。
《 くらべ馬 おくれし一騎 あはれなり 》
正岡子規
こんにちは、梟町です。
さて今回は太郎の戦場の相棒が出てきましたね。青毛にした理由は黒色って格好いいよなっていう、男性なら共感してくれると思う理由です。
この話の最後のほうに出てきた事件は、生活に困ったやつらが狂ったことをしだすっていう、現代でもありそうなことですよね。
しかもこの話はここで終わらず、浅原為頼の使っていた刀がお偉いさんの所有していたものらしく、そいつも怪しいと思われて捕まったんですけど、その人の上司にも疑いがいきそうになったところ法皇がその訴えを退け、捜査が行われなくなり、捕まった人も釈放されたっていう話。
政治の世界って怖いですね。
最後の歌は見てわかるように、競馬で最下位の馬って可哀そうっていう煽りともとれる文章なんですよね。




