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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第2章 ぶっ飛ばせ!魔樹の軍勢
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第55話 理不尽と慈悲の錬金王

「いたわ! 赤髪の男よ!」

「あれがアルトに間違いねぇ!」

「さっさと殺してズラかるぞ!」

『おぉぉぉぉぉ!!』


帝国北東部――――

バケモノ(カルメラ)から逃げる為、先史種(エンシェント)達は死力を尽くしてアルトに迫る。


「来やがったな。纏めて灰にしてやるよ。”虹煉獄(フレア)”!」


アルトは先程やったように、右手に灯した”虹炎” を大地に叩きつけ、虹色の炎の海を作る。今度は手加減無しの本気の一撃。炎に触れたそばから、先史種(エンシェント)が焼かれていく。


『ギィャアァァァアァァァァァ!!!』


一瞬の内に3分の1近い先史種(エンシェント)が消滅した。しかし、それでも数は数万越え。まして彼・彼女達は、下手な攻撃が通用しない精鋭揃いだ。


「チッ、一撃でどエラい数やられたな」

「気にする事無いわよダリア。アイツらが未熟だっただけよ。それより問題はアルトよ。どう攻めようかしら? ワイズ、何か案は無い?」

「取り敢えず様子見で行こう。若い衆! 遠距離から攻め立てろ!」

『応!!』


ワイズと呼ばれた先史草花(プラント)の指示で、若い者達―――と言っても数万年生きてる―――がアルトを取り囲む。そして全方位からの遠距離攻撃の応酬が始まった。


「”虹光障壁(イリゼ・バリア)”」


すかさずアルトは ”虹炎” の結界を張る。弾幕も木の根も、結界に触れた途端に分解され無力化してしまう。どれだけ撃っても、アルトに一切のダメージを与える事が出来ない。


「下手な攻撃は通用しないか」

「いいえ、そうでもないわ。良く見て。アイツ動けなくなってる」

「っ! 確かに。動きは止まっているな」

「でもよ、ルシャナ。それがどうしたんだ? 動かなくても、攻撃が当たらなきゃ意味無いぞ。普通に攻撃してちゃ、あの障壁は破れそうもないぜ?」

「何言ってんの。貴方なら出来るでしょ? 普通じゃない攻撃」

「あぁ、あれ(・・)を使えってか?」

「あれならぶっ壊せるでしょ?」

「はぁ、仕方ねぇ。やってやるよ」


ダリアは一歩前に出ると、自身の権能『武神』を発動する。同時に膨大な生命力を生成すると、それを拳に集めて突きの構えを取った。


「”生誕覇拳(バース・スマッシュ)”!」


ダリアは大地を割る程の勢いで踏み込み、アルトに急接近して拳を振るう。その威力は凄まじく、結界は耐えられずに粉微塵に砕け散ってしまった。


(っ! 結界の方が耐えられなかったか。まぁ、俺は結界の専門家じゃねーからな)


割られたものは仕方ないと、アルトは思考を切り替える。


「死にな、”生誕乱撃(バース・ラッシュ)”!」


ダリアが間髪入れずに拳の乱打を繰り出す。一撃がカリナの ”生誕覇砕撃(エナジー・ブレイク)” 以上の威力を誇り、余波だけで地面にクレーターが出来ていく。

――――が、そんな破壊の嵐を相手に、アルトは涼しい顔で対応していた。


「雑な拳だな」

「てんめぇ…………!!」


ダリアが激昂し、拳の殺意がさらに高まる。しかしアルトは意に介さず、まるで蚊でも払うかのように拳をさばく。


「この、この、このおぉぉぉぉ!!!」

「はっ、そんなんじゃ何時まで経っても当たんねぇよ。せぁ!」

「ぐはぁっ!!?」


一瞬の隙を突かれ、ダリアの腹に拳がめり込む。そしてボールのようにルシャナ達の方へ飛ばされた。


「ヒィッ!?」


音速越えで飛ばされたダリアに頬を掠められ、ルシャナは悲鳴を上げる。あまりの事態にルシャナが呆然としていると、トドメを刺すべくアルトが構えを取った。


「っ! 若い衆、止めろ!」

『はっ!!』


間一髪でそれに気付いたワイズが指示を出し、再びアルトに弾幕の雨を浴びせる。戦況はまたしても膠着状態となったが、ルシャナ達は精神的に追い詰められていた。


「何なのアイツ!? 何でダリアとタイマン張れるわけ!?」

「いや、あれは戦いですらなかった。素人が達人に挑んだようなものだった」

「い、いやいやいや! それは無いでしょ?」

「あのダリアが羽虫扱いだったんだぞ? お前だって分かってるだろ?」

「うっ! じ、じゃあ、何でそんな事が出来るわけ? バリバリ後衛の錬金術師に!」

「俺が知るかよ!」

「―――喧嘩してる場合か!」

「「っ!」」


先程吹っ飛ばされたダリアが、満身創痍ながらも帰還し2人を宥める。


「アイツが何でアタシと戦えるか? んなもんアイツが強ぇってだけで充分だ。それよりも問題は、どうやってアイツを倒すかだ。アイツを倒さねぇと、アタシらこっから逃げらんねーんだぞ」

「そんな事言われたって、どうすれば………」

「お前とワイズの合体技を使ったらどうだ?」

「っ! でも、あれは――――」

「分かってるよ。準備の時間はアタシが稼ぐ。その間に、お前らの準備をしてくれ」

「待てダリア。時間を稼ぐと言っても、あのバケモノ相手にどうするつもりだ?」

「若い連中に援護してもらうよ。さっきはアタシの面子を気にして静観してたみてぇだが、んなもん気にせず手伝うよう指示してくれ。難ならアタシの他に、近接の得意な奴を4人貸して欲しい。そうすりゃ何とかなるだろ?」

「確かにそうかもだけど、そしたら貴方は?」

「…………」

「…………分かった。やろう」

「ちょっ、ワイズ!?」

「他に手は無い。お前も覚悟を決めろルシャナ」

「…………あぁもう! 分かったわよ!」

「決まりだな」


ダリアは覚悟を決めて、再びアルトに挑み掛かる。同時にワイズの指示が戦場に響き渡った。


「若い衆! ダリアを全力で援護しろ! コイツは我々全員の手で殲滅する!」

『は、ははっ!』

「モンス、モンザ、モンユ、モンド。お前達は接近戦で援護だ!」

押忍(オス)!!』


名前を呼ばれた4人は先史種(エンシェント)の中でも格闘技に優れ、全員『武闘王』のスキル持ちである。ダリアの援護には充分な者達だ。


(あのダリアって奴が来たなら、結界は無意味か。仕方ねぇ、結界解除っと)


対するアルトは自ら結界を解除すると、拳を構えてダリア達と対峙する。そして降り注ぐ弾幕の雨を避けながら、あっという間にダリア達との間合いを詰めた。


『っ!?』

「まず1人」


先行していたモンスに向けて、アルトは拳を振るう。しかし――――


「やれぇ!」

「っ! おっと」


弾幕の雨がアルトを追随し奇襲を止める。アルトはすかさず回避行動を取るが、その隙に今度は逆にダリア達に間合いを詰められてしまう。


「”生誕乱撃(バース・ラッシュ)”!」

『”正拳乱打スクランブル・スマッシュ”!』

「っ!」


ダリアの拳に加え、生命力或いは呪いを凝縮した拳の応酬が繰り出される。


「今だ! 畳み掛けろ!」


加えて弾幕の雨もここぞとばかりに激しさを増す。流石にこの攻勢では反撃出来ないのか、アルトは回避に徹する。


「オラオラどうしたぁ? さっきはアタシをいとも簡単に吹き飛ばしたくせによぉ。ちょっと増えたらこの体たらくかぁ?」

「…………それは暗に、数がいなきゃ勝てないって認めてねーか?」

「っ! やかましい!」


図星を突かれて攻撃がやや単調になるも、以前としてダリアの攻撃は鋭く、若い先史種(エンシェント)達も的確なサポートでアルトを妨害し続ける。


「ダリア! 準備が出来たぞ!」

「っ! 退くぞオマエら!」

押忍(オス)!!』


ダリアの号令で前衛組が下がる。その先へとアルトが視線を向けると、ルシャナとワイズの頭上に赤黒いエネルギーの塊が出来ていて、今にも爆発しそうだった。


(何だありゃ? 呪詛、にしては強すぎるな。…………そうか、先史草花(プラント)の生命力に先史魔樹(トレント)の呪詛を付与したのか!)


アルトがそれに気付くと同時に、ルシャナとワイズの合体攻撃が放たれる。


「「”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)”!!」」


赤黒い破壊の奔流――――それも、Sランクの冒険者でさえ遠目に見ただけで廃人と化す呪いの波動が、一直線にアルトへと迫る。


「終わりよ、アルト!」

「消え去れぇ!」


――――しかし、アルトが消える未来は訪れなかった。


「”虹炎錬金(アルケミスト)” だ!」


まるで、何者かに命令するように叫ぶアルト。その直後、アルトが背に羽織る上着が独りでに動き出す。上着は袖口に『虹炎』を灯すと、袖を伸ばして ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” を受け止める。否、受け止めるに留まらず、そのまま分解して無力化してしまった。


『っ!!?』


先史種(エンシェント)達は、目の前の光景が信じられなかった。アルト本人ならまだしも、まさか背中の上着に ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” が止められるとは、夢にも思っていなかったのだ。


「な、何なのよその上着!?」

「これか? コイツは可変型自動戦闘ユニット ”大和(ヤマト)”。俺の能力を使って自動で戦える代物さ」

「そんな上着があるなんて、聞いたこともないわよ!?」

「そりゃだって、作ったのは俺だからな」

『っ!!?』

「中々便利なんだぜ? 強ぇ奴とガチでやりあう時とかは、周りの奴らが邪魔するのを止めてくれたりするし。なんなら共闘だって可能だぞ。術に必要なエネルギーは、俺負担だけどな。――――っと、そんな話をしてる間に終わったみてぇだ」

「終わった? 何が?」

「見てりゃ分かる」


今度は自らの手に『虹炎』を灯すアルト。すると『虹炎』の中から、虹色の光を放つ金棒が出てきた。


「か、金棒?」

「え~と名前は………よし、”武蔵(ムサシ)” にしよう」

『っ!!!』


ただでさえ強い気配を放っていた金棒が、名付けと同時に大幅に力を増す。その金棒が放つ凄まじい気配に、先史種(エンシェント)達は委縮する。


「流石、先史種(エンシェント)2人の合体技。結構強ぇ武器になったぜ。そんじゃ試しに、取り敢えず若ぇのから殺るか」

『っ!!!!』


アルトの殺気が急速に上昇し、全力の覇気が先史種(エンシェント)達に叩きつけられる。一部はその威圧だけでショック死し、生き残った者もほとんどが動けなくなっていた。アルトはそれを気にせず ”武蔵(ムサシ)” を構えると、”武蔵(ムサシ)” に宿した技を発動し、そのエネルギーを纏わせる。そして空中へと飛びあがり、落下の勢いを乗せて”武蔵(ムサシ)” を思い切り大地に叩きつけた。


「”怨命破獄(ヘルズ・ブレイカー)”!」


武蔵(ムサシ)” に宿した技―――― ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” が衝撃となって地面を走り、力の及ばない先史種(エンシェント)達を粉々に粉砕する。粉砕されなかった者達も、国家戦力を廃人にする呪いを受けてただで済むはずが無く、精神崩壊を起こす者が続出した。やがて衝撃が治まり、無事でいられたのはルシャナ、ワイズ、ダリア、そしてモンス達4人と、一部の先史種(エンシェント)のみ。全部合わせても、生き残った先史種(エンシェント)は数十体のみだった。

だがルシャナとワイズにとってはそれよりも、”武蔵(ムサシ)” が ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” を発動した事の方が大問題だった。


「そ、そんな…………! 何で ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” を、アンタが!?」

「どうしてって、お前らがそれを使ってくれたからさ」

「理屈に合わねーよ! 俺らが使ったからって、それは俺らの技をお前が使える事には繋がらねーだろうが!」

「俺の場合は繋がる。1度技を使う所を見せてもらえば、俺ならその技を無限に生成(・・)できるのさ」


これこそがアルトの言っていた、『虹炎』の本領である。


『虹炎』には触れた物を素粒子レベルで分解、焼却する力があるが、それだけではない。この特殊な炎は、それ自体を材料として錬金術を行使することで、新たなものを生成する事が出来る。しかも『虹炎』は変幻自在で、一切の消耗無く無限に生み出せる為、好きなものを好きなだけ生み出す事が出来るのだ。


ルシャナとワイズの ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” が発動した際、アルトは ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” を分解すると同時に『解析鑑定』を使う事で、”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” の情報を入手していた。この情報を元に『虹炎』から ”怨命呪獄(ヘルズ・スパーク)” を錬成し、さらにそれを同じく錬成した金棒へと融合させる事で、アルトは ”武蔵(ムサシ)” を生み出したのだ。


敵の攻撃を分解し、その情報を力として顕現出来る炎。戦う錬金術師の『錬金戦神』の権能を持つアルトとしては、これ以上ない相性の能力と言えるだろう。


(わ、訳が分からない…………! 何で私達の合体技を見ただけで使えるのよ!? 埒外すぎよ!

こんな、ヴェイルが足蹴にも及ばないバケモノ、勝てるはず無いじゃない!!)


あまりにも理不尽すぎる力に、ルシャナは完全に戦意を喪失する。


「皆、逃げるわよ!」

「当然だ! あんなバケモノ、勝てる訳がねぇ!」


他の先史種(エンシェント)達も同様で、地面に潜って一心不乱に逃げようとする。しかし――――


「悪いが、逃がすわけにはいかない」

『っ!!』


アルトが ”武蔵(ムサシ)” で地面を軽く叩くと、大地を吹き飛ばして金属製の茨が無数に出現する。そして逃げる先史種(エンシェント)達を1人残らず縛り上げた。


「ぐぁ、あぁぁぁ………!! わ、技どころか、種族スキルまで!?」

「さっき、スララ(相棒)がお前らの情報を網羅してくれたんでな。『記憶共有』でそれをインストールしたのさ。そんな事よりよ。お前ら、放っておいたらまた他の所を襲うだろ? いやそれどころか、仲間達を殺しに行くかもしれねぇ。それを黙って見過ごす訳にはいかねぇな」

「他の所を襲うか? あ、当たり前じゃないの! この世界の全てを我々一族で覆い尽くす事が、(ヴェイル)の望みなんだから!」

「王、つっても簒奪したんだろ? お前らはそんな奴の望みを叶える為に死ぬのかよ? なんなら、ソイツの元を離れて大人しく暮らすってんなら、俺は別に見逃しても良いんだぜ?」

「黙れ! アタシらの王は何時だって、一族の称号(王冠)を持つ奴1人! お前にはとても勝てないが、王の望みくらいは叶えてやる義理がある!」

「そうとも。俺達が樹系魔族(トレント)草花魔族(プラント)として生まれた以上、王の望みは俺達の望み! 世界中の街を滅ぼしてでも、この世界を森に変えてやるのさ!」


ダリア、ワイズの反論に、他の先史種(エンシェント)達も次々に賛同の声を上げる。良く見ると、彼・彼女達の目から光が消えている。アルトはその光景に、虚しさと悲しみが込み上げてくるのを感じた。


(コイツら、自分らの矛盾に気付いてねぇ。戦って勝てない奴がいる以上、その王の望みってのを叶えるのは不可能。それが分からねぇ連中じゃねーはずなのに…………きっと、称号(王冠)とやらで思考を制限か誘導されてんだな)


元々この先史種(エンシェント)達は、王の最強の手駒とするべく、過去の歴戦の猛者達を再現した存在。全力を出せるように当時の意識は復元されているが、本質的には王の傀儡でしかない。その事実は、アルトを大いに不快にさせた。


(そういやカルメラさん、ずっとコイツらの事を人形とか言ってたな。成る程、確かに人形だなこれは。過去の英傑達を自分の都合の良いように呼び出して、兵器のように使うとか…………ちっ! 気色悪い称号だぜ!)


アルトは心底不快そうに舌打ちをする。

――――そして、その虹色の瞳に慈悲の光を宿し、アルトは改めて ”武蔵(ムサシ)” を構えた。


「お前らを助ける事も、見逃す事も俺には出来ない。せめて、作り物の忠誠心でこき使われる屈辱から解放してやる」

「作り物だと!? 貴様、俺らの忠義を侮じょ――――」

「”武蔵・虹覇衝”!!」


『虹炎』を凝縮した破壊エネルギーを付与し、アルトは”武蔵(ムサシ)” をフルスイングで振るう。虹色の破壊が辺り一帯を埋め突くし、帝国北東方面に虹色の光の柱が昇った。


やがて光がおさまった時、茨も、大地も、先史種(エンシェント)も、何もかもが姿を消していた。残っていたのは、”武蔵(ムサシ)” を担いだアルトだけだった。アルトは天を見上げると、ルシャナ達に語りかけるように呟く。


(わり)ぃな。アンタらを解放する方法、俺にはこれしか無かったわ。恨まれても文句は言わねーぜ。それと、アンタらから貰った技だが、俺がさらに発展させるよ。簡単にコピーしといてあれだが、あの合体技は凄かったと俺は思う。だからこそ、俺がもっと上へと進めてやる。まぁこれは、その…………俺なりのハナムケだ」


最後は自嘲気味に苦笑するアルト。すると――――


(………ありがとな、アルト)

(ま、精々頑張って)

(まずは精度を上げることだな)


風に乗って、そんな声が聞こえた気がした。空耳なのか、それとも…………。


「まぁ良いや。俺はやれる事をやるだけさ」


そう言って、アルトは少年らしい晴れやかな笑顔を浮かべるのだった。

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