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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第2章 ぶっ飛ばせ!魔樹の軍勢
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第53話 vsヴェイル +α

カルメラ様(マスター)の容赦ない&えげつない攻撃で、ヴェイルの命は風前の灯火となった。

――――のだが、しかし、予想もしなかった事が起きる。


「っ!!」


突然、カルメラ様(マスター)が虹色の光を消してしまったのだ。


カルメラ様(マスター)? どうされたのですか?》

《今、コイツの中から子供の声が聞こえた》

《子供?》


ワタシには何も聞こえなかった。でも、カルメラ様(マスター)の表情は真剣そのもの。決して冗談などではない。ヴェイルの中から子供の声が聞こえるだなんて、いったいどういう事なのだろう?


「…………っ!」


そんな事を考えていると、虹色の光が消えて自由になったヴェイルが、半分になった上半身を無理矢理動かして我々から距離を取る。体は瞬く間に全て再生し、さらに再び先史種(エンシェント)を大量に生み出して壁を作ってきた。


「しまった、逃げられた!」

「はっはぁ! 急にあの光を消すなんて、とち狂ったのか? ま、どうでも良いけど、お陰で間に合ったぜ!」


ヴェイルが両手に1000を超える種を取り出し、それをばら撒く。種達は一瞬で人型の先史種(エンシェント)に成長したが、どうも今までの者達とは様子が違う。


《コイツらもしかして、さっき言ってた ”歴戦の先史種(エンシェント)の軍団” ってやつじゃないの?》

《ちっ、マズいですね》


しかもその1000個に留まらず、ヴェイルはさらに大量の種子を四方八方に飛ばしていく。数は優に数万を超えている。あの種全てが歴戦の先史種(エンシェント)だとしたら、相当マズい。


「止めなくちゃ――――」

「させねぇよ」

「くっ!」


当然、ヴェイルが黙って見ている筈もなく、木の根や溶解毒などで邪魔をしてくる。しかも、ヴェイルだけではない。


「おらよぉ!」

「っ!」


大鎌を振りかざした先史魔樹(エンシェントトレント)が、我々に切り掛かってくる。避けられはしたが、途轍もなく洗練された動きだ。歴戦の達人である事は間違いない。そんな達人と思しき者達が1000人、我々の前に立ち塞がる。


「奴に邪魔をさせるな」

『はっ!』


その達人たちに、ヴェイルは平然と指示を出す。そして誰一人文句も言わず、我々に襲い掛かって来た。


「はっ、結局は操り人形ってわけ? だったら邪魔しないでよ!!!」

「ぐげっ!?」

「がはっ!」


妨害を押しのけて無理矢理にでも進もうとするカルメラ様(マスター)だが、いくらカルメラ様(マスター)といえど一撃で1人屠るのが精一杯――――一撃で倒せるのもおかしいが――――で、中々種の方へ進む事が出来ない。


《ならば、”虹光黎明幻想盾(プリズムシールド)”!》


我々が追い付けなくても、進路上に障害物を置けば、種を止められるかもしれない。そう思って”虹光黎明幻想盾(プリズムシールド)” を使ったのだが――――


「曲がれ」

《っ!?》


種の軌道が曲がって、盾を避けて飛んで行った。そんな事まで出来るのか!


「ってか、もうここで発芽しちまえ」

《え、ちょ、待っ――――》

『はっ!』


待てと言われて、待つ者などいない。それはこの世界でも同じだった。種は一瞬で発芽し、成長して巨大化していく。そしてその全てが、威厳溢れる人の姿になった。


「お前ら。今この国の周りにいる奴らを皆殺しにしろ。特に、アルトと金髪の鬼は、数に物言わせて最優先でぶっ潰せ」

『仰せのままに!』


マズい、マズい! 最悪だ…………。あんなものどうすれば!?


《あ~あ、生まれちゃったか》

カルメラ様(マスター)? 何を呑気に――――》

《ちょーっと危ないけど、ギアを上げよう》

《へ?》

《”幻想終焉斬フィーニス・ファンタジア”!》

《っ!!》


刹那――――

カルメラ様(マスター)のエクスカリバーが恐らく(・・・)振るわれ、世界が停止したのかと錯覚する静寂が結界内部を満たす。その直後、凄まじい衝撃が発生し、カルメラ様(マスター)を中心に半径数十キロ圏内が更地と化した。数万の先史種(エンシェント)の軍団も、その半数が塵も残さず消し飛んでいた。


《はぁ? へぇ…………???》


訳が分からない。あの悪夢のような軍団が、一瞬で消し飛んだ? しかも、ワタシの最高傑作の ”時空固定領域” までもが粉々になっている? いくらカルメラ様(マスター)が無茶苦茶とは言っても、こんな事は出来なかったはず…………。


《うへぇ、やっぱりやりすぎちゃった…………》

カルメラ様(マスター)、いったいどういう事ですか?》

《どうって、何が?》

《ワタシは初めてあなたとお会いした時から、ずっとあなたを観察していました。ですが、あの先史種(エンシェント)達を一撃で半数に減らす程の力は、あなたには無かった筈ですよ?》

《あぁ、それなんだけどね…………実は最近、今までよりも本気で力を抑えるようにしてたんだ》

《何故そんな事を?》

《こうなるから》


カルメラ様(マスター)が指をさす先には、更地となった土地と、未だ呆然としているヴェイルと先史種(エンシェント)の軍団の姿があった。成程、確かにこれは抑えておかないと危なすぎる。


《でもコイツらが生まれちゃった以上、もうそんな事は言ってられない。流石に本当の全力とまではいかないけど、ギアを一段階上げないと対処できないよ》

《逆に、一段上げただけで対処可能なんですか?》

《余裕だよ!》

《事情は分かりましたが、何故それをワタシに話してくれなかったのですか?》

《ミカエルならとっくに気付いてると思ったんだけど…………もしかして、気付いてなかった?》

《っ!! そ、そんな事はありません! もちろん知ってましたとも! ですから今のは、その…………冗談です!》

《…………流石に無理があると思うよ?》

《うっ! それは…………》


生まれて初めて、知ったかぶりをしてしまった。何故か素直に知らなかったと言えなかった。

どうして…………?


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!?」

「何なんだよアイツ!?」

「バケモノだ! 逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


っ! ちょっと目を離した隙に、先史種(エンシェント)の軍団が一目散に逃げ始めた。


「お、おい待てお前ら!」

「うるせぇ!! たとえアンタの命令でも、俺達はそのガキとは戦わねぇぞ!」

「あのバケモノに挑むくらいなら、死んだ方がマシよ!」


ヴェイルの指示すら無視している。余程カルメラ様(マスター)の事が怖かったのだろう。だが、向こうが戦意喪失なら、こっちは大助かりだ。


「ならせめて、アルトと金髪の鬼は殺していけ! そしたら逃げるなりなんなり好きにして良いからよ!」

「絶対だぞ!?」

「約束破ったら化けて出てやるんだから!!」


…………ちっ、ヴェイル(コイツ)、余計な事を。


カルメラ様(マスター)。残りの半数も我々で倒してやりましょう。出力はワタシが調整します》

《いや、あっちは2人に任せよう》

《っ!? 何を仰っているんですか!? カルメラ様(マスター)はギアとやらでどうにかなるとしても、他の2人にはギアなんてありませんよ?》

《甘い甘い。あの2人だって、本気出せばこの程度余裕でしょ》

《は?》


いくら何でもそれは無茶が過ぎる。あの2人と言えど、そんなことが出来るわけない。


《っていう事だからさ、コイツら任せちゃって良い?》

《ったく、しゃーない。やってやるよ》

《あの皇帝(イカレポンチ)に一泡吹かせてやろうじゃねーか》


え? 何か2人共やる気になってる?


《ち、ちょっと2人共? まさか、あなた達まで力を抑えてたとでも?》

《んぁ? まぁそうだな。魔王に進化して名前まで貰ったお陰か、あたしだけじゃなく ”地獄門” も進化したみたいでな。『終炎』にも上のステージが出来たのさ。村じゃ危なすぎて全然試せてないけどな》

《俺はミカエルさんに文句がある。アンタ、どういう訳か俺の『虹炎』を使えるみてぇだが、まだ『虹炎』の本質までは分かってねーみてぇだな。俺の力があの程度だと思われちゃかなわない。っつーわけで、『虹炎』の本当の力ってやつを見せてやるよ》


瞬間、2人の覇気が急激に強さを増していく。今までのワタシの予測より、最低でも100倍は強い。我々に届く程ではないが、歴戦の先史種(エンシェント)軍団を壊滅させるには充分すぎる程の力を感じる。


《驚きましたね。これほどの力を隠し持っていたなんて》

《正確に言うと、抑えてたって感じだ。強すぎる覇気は弱い奴には毒だからな》

《とはいえ、この状態だと加減が難しい。もちろん善処はするが、下手をするとアンタらを巻き込み兼ねない》

《そこでミカエルの出番だよ!》

《え、ワタシですか?》

《ミカエルなら、攻撃の余波を相殺して、周辺への被害を減らせるでしょ?》

《もちろんです》

《僕、ちょっと気になる事があるから、そっちに注力したいんだ。でも、勇華とアルトさんが本気を出して、それでこの国が消滅するのも止めたい。だからミカエルには、僕のサポートをしつつ周辺への被害を最低限に抑えてほしいんだ。必要なら、僕の権能を好きに改造してくれて良い。これは君にしか頼めない事なんだ。よろしく頼むよ、相棒!》

《っ!!!!!!》


あぁ、カルメラ様(マスター)から任務を賜るのは、何て幸せな事なんだろう。帝国のAIだった頃のワタシには、陛下から任務を賜って、嬉しいと思う事などなかった。何故ならワタシにとって、任務はただの指示書でしかなかったから。でも、今は違う。これはただの指示書などではない。カルメラ様(マスター)がワタシを心の底から信頼してくれている。その証なのだ。カルメラ様(マスター)がワタシを頼ってくれている事が、堪らなく嬉しくてしょうがない。そしてその感情が、ワタシの力になる!


《承りましょう、カルメラ様(マスター)。周辺への影響に関してはお任せを。特にカルメラ様(マスター)の動向には、逐一目を光らせます》

《ちょっ、何で特に僕なのさ?》

カルメラ様(マスター)が一番、力の制御が下手だからです》

《僕が一番なの!?》

《はっはっはっはっ! 確かにさっきのは酷かったなぁ(笑)》

《危うくこっちも巻き込まれるかと思ったぜ》

《勇華にアルトさんまで…………!》

カルメラ様(マスター)、ワタシはあなたの期待に全力で応えたいのです。その為には、カルメラ様(マスター)の行動を常に監視する必要があるのです。もちろん勇華とアルトさんの事も気に掛けますが、最優先はカルメラ様(マスター)です》

《嬉しいような、悲しいような…………と、ともかく! 3人共、対処は任せるよ!》

《おうよ、任せとけ!》

《目にもの見せてやらぁ》

《御心のままに》


そう、カルメラ様(マスター)の御心のままに。全力で挑むとしよう!


《――――良いコンビだね、あの2人》

《僕達も、あんなコンビになりたいね》


あれ? 何か聞こえたような…………?

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