第52話 vsヴェイル 速攻クライマックス
《早速行きましょう。『解析鑑定』!!》
・ヴェイル
種族:獄界神樹
ランク:SSS+
称号:『ユグドラシル』
『ヘルヘイム』
種族スキル:『怨嗟の咆哮』
『魔ノ森』
『吸命森林』
《ふむ、これが ”王の称号” ですか。………成程、これは凄いですね。ですが、我々が勝てないような相手ではないかと》
《んじゃ、先手必勝って事で!》
カルメラ様が魔剣エクスカリバーを手にヴェイルに突撃する。
「愚かな――――っ!?」
地中に潜って逃げようとしていたヴェイルだったが、それが出来ずに驚愕の表情を作る。こんな事もあろうかと、”時空固定領域” を展開しておいて正解だった。敵味方含めて転移が使えなくなる弱点はあれど、コイツを仕留めるなら必要な手だ。
「ちっ! ”先史の森の再誕”!」
しかし、ヴェイルはへこたれる事なく術を行使する。それと同時に、彼の足元に万を超える新芽が誕生し、それら全てが一瞬で先史種へと進化する。そしてヴェイルを守る盾として、我々に立ち塞がって来た。
《うーわ、また出た! 本当、どうなってんのこれ?》
《称号『ユグドラシル』と『ヘルヘイム』には、森林をゼロから生み出す能力があります。それこそ、何も無い荒野すらも、緑豊かな森林に変えることが出来てしまいます》
《え、すっご! あれ、でもそれだと、ただ森を作るだけだよね?》
《厄介なのはここからです。この2つの称号には、それぞれ過去に生きた樹系魔族、草花魔族の情報が記録されています。そしてこの情報は、自身の作った森を『魔ノ森』で魔物化する際、コピーして植物達にインストールする事が可能らしいのです》
《コピーして、”いんすとーる”?》
《複製してぶっこむという事です。情報をインストールし力を与える事で、植物達は一気に先史種へと進化します。時間が経てばインストールした先史種の自我と記憶も復元されますから、放って置けば歴戦の先史種の軍団が無限に生まれて来る事になりますね》
《最悪じゃん…………》
剣の一薙ぎで先史種の群れを壊滅させながら、カルメラ様がぼやく。…………言葉に説得力が無さすぎる。
だが、カルメラ様の言う事はもっともだ。SS級の魔物が無限に生まれて来るだけでも大変なのに、それが歴戦の戦士へと成長したら、その脅威度は現在の比では無くなる。勇華やアルトさんは愚か、カルメラ様とワタシですら対処は厳しいだろう。だからこそ、こうして生まれた直後に殲滅し、成長する間を与えないのがベストなのだ。
「くっ! 成長する間も無く一撃で屠られるとは、バケモノめ…………!」
ヴェイルは悪態を吐きながらも、先史種の軍団を作り出しながらカルメラ様と距離を取る。だが、生まれたばかりの先史種など、カルメラ様からすれば木偶同然。次々と切り伏せて、ヴェイルを追い詰めていく。
「こうなったら、”呪獄咆哮”!!」
ここでヴェイルが奥の手と思しき術を発動する。右掌で発動した『怨嗟の咆哮』に、他の様々な樹系魔族、草花魔族の種族スキルの力を付与し、さらには果実――――赤や紫など、色ごとに様々な効果を齎す果実の力を直接融合。様々な力を宿した呪いのエネルギーを、一点集中の呪撃として放ってきた。
「朽ち果てろバケモノめぇ!!」
呪撃は仲間の先史種をも巻き込んで空間そのものを蝕み、大地を腐食させながら我々に迫る。しかも先史種が巻き込まれる度、その怨念を吸収して呪いが強まっている。全てはカルメラ様を倒す為。それだけを考えて放たれた、本気の技のようだ。
「効かないね。”虹光黎明幻想盾”」
「っ!?」
しかし、ヴェイルの本気と思しき技も、『虹炎』を付与した『黎明幻想盾』の前では無に等しい。盾には傷1つつかず、小揺るぎもせずに呪撃を防いだ。
「な、ならこれはどうだ!? ”多角式呪獄咆哮”!!」
今度は我々を囲むように先史種達を動かしつつ、自身の腕を100を超える木の根に変えて、その先端から ”呪獄咆哮” を放ってきた。盾1枚ならこの時点で詰んでいただろうが、”虹光黎明幻想盾” はほぼ無尽蔵に展開可能なのだ。幾ら呪撃の数が増えようとも、その分盾を増やせば対処は容易い。
「次は?」
「…………っ!!」
今の攻撃が効かなかった事が相当ショックだったらしく、ヴェイルは大慌てで逃げ出す。彼我の力の差を思い知ったという感じだ。でも、逃がすつもりは無い。
《ここまで追い詰めれば行けますね。カルメラ様、今からスララさんの技をお見せします。この技を使ってみてください。”技能模倣”》
《どれどれ…………お、なかなか強そうじゃん! あ、でもここをこうしてこうすれば…………よし、行ける!》
何やらぶつぶつと独り言を呟いて、カルメラ様は技を放つ。
「”虹煌星剣突”!」
『無限滅光』を全力稼働させたエクスカリバーを前方に構え、カルメラ様がヴェイルに全速力で突撃する。さながら虹色の流星が如く、周囲の先史種共を蹴散らし、大地を抉り、大気を震わせ、そしてヴェイルを容赦なく刺し貫いた。
「がはっ…………!!」
ヴェイルの腹にドデカい風穴が開く。いや、もうそれは穴ではない。たった一撃でヴェイルの体のほとんどが吹き飛び、上半身と下半身が完全に泣き別れになった。しかも傷口を見てみると、傷口が虹色の光に包まれていて、光が徐々にヴェイルの体と魂を消滅させていた。
《な、何ですかこれ…………》
《ミカエルが教えてくれた技を元に、自分用にアレンジしたんだよ。どう、イケてるでしょ?》
《…………凶悪すぎませんか?》
今カルメラ様が使用した ”虹煌星剣突” は、間違いなくスララさんの ”赫竜星弾” を元にしていた。しかし――――最早それは、”赫竜星弾” とは別次元の技だった。
”虹煌星剣突” 発動の際、カルメラ様は全身に『虹炎』を纏っている。『虹炎』はその気になれば、魂を焼却出来る恐るべき力。この『虹炎』を纏って放つ ”虹煌星剣突” は、理論上では軌道上の全ての命を、余すこと無く狩り尽くす事が可能となる。破壊力は高いものの魂には手出し出来ない ”赫竜星弾” とは、技の質がまったく違うのだ。
そんな恐ろしい技を食らったヴェイルの魂が無事でいられるはずも無く、体積が半分程になってしまっている。しかも魂の体積は今も減り続けいていて、最早その命は風前の灯火だった。
「くそがぁっ…………! なんでぇ、てめぇがっ、『虹炎』を、使えるんだぁ!!!?」
「そんなの、内緒に決まってんじゃん」
「貴様ぁ…………!!」
ヴェイルはカルメラ様を睨みつけるが、出来る事はそれだけ。肉体はボロボロと崩れていき、さらに魂も消えかかっている。消滅は時間の問題だった。




