第51話 vsヴェイル 序章
「な、何だ今のは!? 先史種共が消し飛んだ!?」
自身の生み出した軍勢が、一瞬で全滅した事実を受け止めきれず、ヴェイルは困惑する。
(いくら生まれたてとは言え、先史種だぞ? しかも大群だぞ? それが、一瞬で全滅だと? アルトですらそんな事は出来ねぇのに。…………つまり、そういう事なのか? 敵には、アルトを越える怪物がいるってのか!? じ、冗談じゃねーぞ!!! 何だよそのバケモノは!?)
ヴェイルにとって、一番大きな障害はアルトだった。だが、それは同時に、アルトさえ攻略できれば目的の成就も容易いという、ある意味モチベーションになっていた。そしてヴェイルはアルトを超え得る力を手にし、目的である世界征服を目前にした――――はずだった。しかし、突如敵にアルトを超える存在が出現し、ヴェイルの計算は大きく狂い始めていた。
(…………いや、落ち着け。アルトを超えるバケモンはヤベーが、それなら直接叩き潰せばいい。そもそもアルトも、最終的には直接倒すつもりだったしな。こうなりゃ少し早ぇが、先に行かせた同胞達が殺られる前に、殺っちまうか)
早速カルメラとミカエルを倒す為に移動しようとするヴェイルだったが、しかし、それを制止する声が掛かる。
《止めときなって》
《あれはお前の勝てる相手じゃない》
《死にたくなかったら諦めな》
それは、ヴェイルが吸収した少年と少女の声だった。
《おいおい、契約を忘れたのか? 俺に逆らったら――――》
《私達はただ提案しているだけ》
《お前に逆らってる訳じゃない》
《それで、どうするの?》
《餌の意見なんて聞くかよ》
そう吐き捨てて、ヴェイルは窓を突き破って王城の外へと飛び出す。そして飛び降りると同時に地中へと潜り、カルメラのいる方へ向けて全速力で移動を開始した。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
「――――来るよ!」
「っ!」
帝都の強大な気配の主が、こちらに近付いて来る。あれがヴェイルで間違いない。
《皆! まずは状況を確認しよう。敵はヴェイルと、国を囲む先史種、後はもの凄い数の樹系魔族と草花魔族、で合ってるよね?》
《あぁ。樹系魔族と草花魔族は数万越え。先史種は残り3人だ。姉さんやアルトさん、スララさんのお陰で大分片付いているが、それでもすごい数だ》
《じゃあさ、残りの先史種の討伐は羅剛、桃華、カイザー、蒼創、アルトさんに任せて良い?》
《俺は良いぜ!》
《承知した》
《問題ない》
《私も》
《任せておけ》
皆、快く承諾してくれた。
《スカルは不死系魔族の皆を指揮して、他の敵の殲滅をお願い。スララさんは人形達と遊撃に周って。特に、ヴェイルが生み出してる先史種は優先的にお願い!》
《御心のままに》
《了解っす!》
《勇華は引き続き、南西側の守護を頼むね》
《あぁ、任せな》
《ミカエルは僕と一緒にヴェイルを倒すよ!》
《はい!》
《そんじゃ、行くよ!》
《応!!》
皆それぞれ、自分の役割を果たすべく動き出した。
《さぁて、もう大分近付いてるはずだけど………ヴェイルはどこから仕掛けて来るかな?》
《普通に考えれば地中を移動しているわけですから、そこから奇襲を仕掛けてくるのでは?》
《だよね。――――っ!!》
下からの殺気に反応し、カルメラ様が ”赫灼幻想盾” ――――ではなく ”黎明幻想盾” を展開する。ただし、盾を構えたのは下では無く、上だった。
《っ!? あれは、ミサイル!?》
正確には、飛んできているのは果実だ。しかし、あまりにも不自然な程に流線形で、ヘタの部分から火を吹き出し、まるでミサイルのようにこちらに迫って来る。
《カルメラ様、衝撃に備えてください。恐らくあれは、着弾と同時に爆発します!》
《え!?》
そしてミサイル型果実は盾に着弾。見た目通りの凄まじい爆発を起こした。権能も称号も付与されていなかった為、盾もカルメラ様も無傷だった。しかし、こんな果実は見た事が無い。まあ植物の魔物までいるし、割と何でもありな気はするが。
《まだまだ来る!》
ミサイル型果実が、次から次へと飛んでくる。
《鬱陶しいですね。さっさと『素粒子分解』で――――》
《いや、そっちは盾で対応しよう。それよりも、本体を炙り出そう。”幻想虹線”!》
”黎明幻想剣” が一振り作り出され、そこから光線が発射される。その光線が大地を貫き、深く巨大な風穴を作った。
《っ! あれは!》
《来たね》
風穴の中から、人影が飛び出す。緑の服に緑の髪、さらに言えば瞳まで緑の、全身緑一色の男。その男から強烈な覇気が発せられている。あれがヴェイルか。
「…………貴様か。俺の眷属共を葬り去ったのは」
「ま、そうだね。そっちはヴェイル、で合ってるのかな?」
「あぁそうだ。俺こそは、樹系魔族と草花魔族の王たる存在、ヴェイルだ。俺達の野望の為、お前にはここで死んでもらう」
「出来るものなら――――やってみろ」
「っ!!」
カルメラ様が本気でヴェイルを威圧し始める。怯えた様子を見せたヴェイルだったが、すぐに気を取り直し構えて来た。
「ふ、ふんっ! 俺にはこの称号の力がある。たかが小娘なんぞに負けるかよ!」
ヴェイルが啖呵を切り、力を解放する。こうして遂に、ヴェイルとの戦いが始まった。




