第50話 いざ、出陣!
時を少し遡る――――
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――――最悪だ。
まさかヴェイルの持つ称号に、先史種を無限に生み出す能力があったなんて…………!
《こんなの、想定外です…………》
ヴェイルという先史魔樹が、他と違って無から魔物の森を作れる事は分かっていた。でもまさか、先史種をその場で生み出せるとは夢にも思わなかった。
先史種はSS級。その由来は、長く生きた事による成長の賜物。それを一瞬で生み出すなんて、いったい何をしたんだ!?
――――いや、今はそんな事を考えるのは後だ。
状況は圧倒的に不利。ヴェイルの称号の力は凄まじく、既に2000を超える先史種が生み出されている。今の所はまだ知能が低いのが幸いだが、それもいつまで保たれるか。
《こうなったら、ワタシも人形で――――》
《待って》
《っ! カルメラ様!》
突然、カルメラ様が待ったを掛けて来た。
《ミカエル、1人で戦場に行くつもりでしょう?》
《えぇ、それが何か?》
《ダメだよ。僕も一緒に行く》
《っ!? ま、待ってください! わざわざカルメラ様が出撃しなくても――――》
《この気配、先史種がわんさか湧いて来てるんでしょ? 皆確かに強いけど、あのレベルの敵が次から次へと押し寄せてきたら、控えめに言って、僕が行かなきゃヤバいよ》
《…………っ!》
ワタシだってそれは分かってる。でも…………不安になってしまう。もしも、カルメラ様が国外に出て、アデンシアの奴らに見つかったら? その上奴らが、カルメラ様に刺客を放って来たら? そしてその中に、カルメラ様を殺しうる存在がいたら?
――――そんな不安が、頭から離れない。
《ミカエル。君の事だから、僕の事を心配して止めようとしてくれてるんだよね? それに、何か僕の知らない事も知ってそうだし》
《っ!》
…………本当に、カルメラ様は察しが良い。完璧に隠しているつもりなのに、こうも簡単にバレるなんて。
《君が隠している事が何なのかは、今は聞かないでおくよ。ミカエルが話したくなるのを待つ事にする》
《…………》
《でも、仲間を助けに行くのは待ってらんない。ここで動かなきゃ、皆が死んじゃうかもしれないんだから!》
《っ!!》
皆が…………仲間達が、死ぬ?
………………。
……………………。
………………………っ!!!!!!
イヤだ。そんなの、絶対にイヤだ!! 勇華達と戦ったあの時、ワタシは仲間を失いかけた。仲間にもう二度と会えない。その悲しみ、苦しみ、絶望は、絶対に忘れられない。あんな思いは二度とごめんだ!!
でも…………! カルメラ様を自ら行かせるのも怖い。刺客以前に、そもそもヴェイルの力が未知数すぎる。奴自身が攻めて来たら、勝てるかどうか…………!
《何悩んでんの? ほら、行くよ!》
《え、ちょっ――――!?》
言うや否や、カルメラ様大地を蹴って空に飛び出し、ヴィオンド帝国へ向かって飛翔を開始する。
《ミカエル、君は敵が未知数だから怖いんだよね? でもそれを言うなら、僕達の力だって未知数だよ》
《え?》
《僕達は2人。2人の力が合わされば、それは大きな力になる。ただ2人分の力を併せるだけじゃない。増幅して、大きくなって、未知数の力になる。僕達2人なら、ヴェイルにだって勝てるよ!》
《っ!!》
合理的に見れば、その言葉には根拠は無い。でも、ワタシの心に大きく響いた。
…………そうだ。ワタシ達は2人揃えば、色んな事が出来る。あの勇華だって、我々2人で倒したんだ。ヴェイルだろうが刺客だろうが、我々2人の力を併せれば、必ず勝てる。カルメラ様の命は、ワタシが守る!
《…………申し訳ありません、カルメラ様。ワタシも覚悟が決まりました。皆を、助けに行きましょう。我々2人の力で!》
《良いね、それでこそ僕の相棒だよ! っ! 見えて来たよ》
桃華が歩いて数日掛けて歩いた道を、ほんの数分の飛翔で渡り切った我々は、改めて現場の状況を目にする。『終炎』の海となっている南西方向以外の所で、先史種が次から次へと生まれている。
《これは、”幻想剣舞” で片付けるのが早そうだね。『黎明幻想剣』!》
『赫灼幻想剣』に『闇魔法』をも統合したスキル『黎明幻想剣』が発動する。
《一気に殲滅なさるおつもりですか?》
《うん! 倒すなら早い方が良いでしょ?》
《となると、下手に動かれると危険ですね。全員、その場から離れないでください》
ワタシは ”念話” で、全員にその場から動かないよう呼びかけた。これで誤って、味方に攻撃が当たるリスクを無くせるだろう。指示を出すと同時に、幾千もの ”黎明幻想剣” が顕現する。
《ついでに、『虹炎』融合!》
ワタシはカルメラ様が手にした称号『カオス』の力で、 ”黎明幻想剣” に『虹炎』を融合する。『虹炎』の影響で、”黎明幻想剣” は虹色に輝き始めた。
《ありがとう、ミカエル! 後は任せて。”幻想剣舞”!》
虹色に輝く ”黎明幻想剣” 達が、生まれたばかりの先史種達に向かって飛んでいく。帝国の北西、南東方面の森、そして帝都に生まれていた何千もの先史種達が、虹色の剣に貫かれ、或いは爆散していく。
「何だアイツは? ミカエルさんの隠し玉か?」
「と言うか、ご本人じゃないっすか?」
アルトさんとスララさんの声が、地上から聞こえてきた。どうやら相当混乱しているらしい。まあ当然だろう。いきなり先史種が何千も消し飛んだのだから。
《どちらも正解、と言えますね》
「「??」」
《1つだけ、断言できる事が出来ます。もう我々に負けはありません。何故なら私の主様は、最強ですから》
《やだなぁ、もう。最強だなんて! 改めて見ると、アルトさんだってメチャ強だよ》
《…………あんた程じゃねーよ。って言うか、もしかしてカルメラさんが来てるのか!?》
《え、そうだけど?》
《動けないんじゃなかったのか?》
《あ~、それなんだけど…………ごめんなさい、実は嘘なんだ。本当は色々あって、外に出るとマズかったんだよ》
《成程、のっぴきならない事情があったってわけか。それを差し引いても、大将自ら出撃とか、ビックリだぜ》
《そんなにおかしな事かな? 仲間のピンチなんだから当然だと思うけど?》
《それは――――いや、ふふ。そうだな! 助かったぜ大将。正直、あの数の相手は俺達でもキツかったからな》
《ありがとうございまっす!》
《2人も皆も、無事で良かった! でも、まだ安心は出来ないよ》
《えぇ。これだけ派手にぶちかましたのですから、そろそろヴェイルが自ら出て来るでしょう》
《だろうな。で、どうする?》
《僕とミカエルで、ヴェイルをぶっ飛ばす! けど、その間にも先史種が生まれてくるはず》
《ですので皆さんは、闇魔人形達と共に、そちらの対処を。よろしくお願いします!》
《了解!》
ヴェイル。どんな強敵かは知らないが、来るなら来い。我々の力で、返り討ちにしてくれる!




