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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第2章 ぶっ飛ばせ!魔樹の軍勢
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第49話 食って飲んで、強くなる

大変長らくお待たせ致しました!

「お、標的発見」


アルトの向かった先――――北東方面の森には、先史種(エンシェント)が3人いた。先史魔樹(エンシェントトレント)が2人、先史草花(エンシェントプラント)が1人。3人共人型で、それぞれ本来のSS級の枠に収まらない力を宿していた。


「アイツらも果実持ちか。皆纏めて灰にして――――」

「待って欲しいっす! オイラ、先史種(エンシェント)はまだ食った事無かったっすよね? だから、消し炭にするのは待って欲しいっす。ここはオイラに任せて欲しいっす」

「おぉ、そうだな。んじゃ、周りの有象無象だけ消し炭にしよう。”虹煉獄(フレア)”」


アルトが右手に ”虹炎” を生み出し、それを地面に叩きつける。”虹炎” は一瞬で広範囲に広がり、魔物と化した森の植物達が一瞬で焼き払われる。生き残ったのは、先史種(エンシェント)の3名だけだった。


「っ!!? 何だ!? 手下共が全滅した!?」

「そうか! コイツだな! アルトとかいう錬金術師は!」

「あんた達、倒すよ!」

『応っ!』


既に先史種(エンシェント)達は臨戦態勢となり、アルトへの殺意を滾らせている。対してアルトは涼しい顔をしてその殺意を受け流し、さっさと戦線を離脱しようとしていた。


「スララ、たまには全力を見せてやれ」

「お任せくださいっす!」


スララは意気揚々と先史種(エンシェント)達に接近する。


「スライム如きが調子に乗るんじゃないわよ! ”種弾乱射(シード・ガトリング)”!」


真っ先に動いたのは、少女の姿をした先史草花(エンシェントプラント)。右掌をスララに向けて翳し、魔素を宿した大量の種を飛ばしてきた。その威力は白銀魔鋼(ミスリル)を貫通する程強力で、本来スライムが食らったら木っ端微塵になる筈なのだが…………。


「ご飯の時間っす!」

「っ!?」


スララは体を膨張させ、自身に向けて放たれた種を全て受け止める。さらにスララはその種を吸収し、自身の糧としてしまった。


「う、嘘!? あたしの攻撃が、スライム如きに!?」

「お返しするっすよ、”種弾乱射(シード・ガトリング)”!」

『っ!?』


今度はスララが3人に向けて ”種弾乱射(シード・ガトリング)” を放つ。先史種(エンシェント)達は大いに動揺し、反応が遅れた事でスララの攻撃を諸に食らってしまう。


「いっつつ…………!」

「な、何よこれ!? どうなってんの!?」


中でも一番動揺していたのは少女姿の先史草花(エンシェントプラント)だった。下等と見下していたスライムが、自分の技を受け止めたばかりか、即座に同じ技を使って反撃してきたからだ。


「これで終わりじゃ無いっすよぉ!」


スララは目にも止まらぬ速さで先史草花(エンシェントプラント)に接近すると、体積を広げて包み込もうとする。


「させん!」


しかし、老齢の男の姿の先史魔樹(エンシェントトレント)が、木の根を突き出し妨害。スララは一旦距離を取る。


「そう簡単にはいかないっすか」

「へ? アイツ今、あたしの事食おうとした?」

「そのようだの。もう気付いているとは思うが、あ奴、強敵だぞ」

「プラント! お前は後方から支援しろ! 前衛は俺達トレントが担う!」

「わ、分かったわ!」


青年姿の先史魔樹(エンシェントトレント)が巨大な木剣(刃あり)を、老齢の男が木刀(刃あり)を作り出し、少女を守るように前に立つ。


「自分の体を使った造形術か。面白いな」


アルトが感心していると、先史魔樹(エンシェントトレント)達が動き出す。


「オラァ!」


青年が極大剣をスララに向けて振り下ろす。技も何もない一撃だが、スララに傷を付けるには充分な威力がある。スララは即座に回避を選択し、極大剣の一撃を躱した。


「甘い」

「っ!」


そこへすかさず、老齢の男が木刀の一撃を放つ。刀はスララに直撃するが――――


「っ!!? 切れぬ!?」

「甘いのはそっちっすよ」


スララの体の一部が硬化し、刀はめり込んだだけで切り傷1つ付けられなかった。


「あ、その刀いただくっすね」

「っ!?」


さらにスララは、自身にめり込んだ木刀を包み込み、吸収する。自らの体から作っている為、刀は再生可能。しかし、自身の一撃が効かないばかりか、武器を一瞬で食われてしまった事に、老齢の男は動揺を隠せなかった。


「へぇ~。使い手はガッカリさんっすけど、コイツは中々の業物っすね。んじゃ、ちょっとオイラも使わせてもらうっす」


そう言うと、スララは体の一部を分裂させ、それを先程の木刀へと変化させる。そして木刀を左脇に携え、居合いの構えを取った。一見するとスライムが刀を構えるなんとも可愛らしい光景に見えるが…………。


「はぁっ!!」


そこから放たれたのは、破壊の権化と呼ぶべき一撃だった。先程の老人の一撃など比ではない。地面――――否、大地そのものが抉られ、凄まじい地響きが起こる。あまりの威力に、3人は堪らず吹き飛ばされる。やがて揺れが治まり3人が辺りを見回すと、地形がすっかり変わってしまっていた。


「う、嘘だろ…………? どうなってんだこの威力?」

老人(コイツ)のにわか刀術なんか、比になんないじゃない!」

「なぬっ、貴様! 儂をにわか呼ばわりとは――――」

「じゃああんたにこれ(・・)出来んの!?」

「ぐっ………!」

「仲間割れしてる場合か! とにかく、あの化け物スライムを何とかしねぇと! まだアルトも控えてるってのに!」


青年の一言に、3人は再び布陣を構え直して、スララを見据える。


生命の種(ライフ・シード)。いけっ、食肉花(アギト・フラワー)!」


少女が種を一粒作り出すと、鋭い牙の生えた巨大な口のような花を持つ植物の魔物が、茎を伸ばしてスララに迫る。先史草花(エンシェントプラント)の能力によって発芽した、A+ランクの食肉花(アギト・フラワー)だ。

当然スララに通用するはずもなく、食肉花(アギト・フラワー)はスララによって真っ二つに斬られる。しかし、それは少女自身計算済みだった。


「っ!」


食肉花(アギト・フラワー)を目くらましとして、青年と老人が一気に間合いを詰める。しかも今度は、それぞれの武器に呪詛が付与されていた。いくらスララが打撃や斬撃に耐性があっても、呪いまでは防ぎきれない。


「”転移”」


スララは咄嗟に転移魔法を発動し、その場から離脱。そして2人の頭上へと移動すると、体の一部を変形させて棘と化し、2人に向けて伸ばす。


硬質粘魔刺(スライム・ニードル)

「「っ!!」」


頭上から悪寒を覚えた2人が慌ててその場を離れると、それとほぼ同時にスララの刺が地面に突き刺さる。


「危ねぇな」

「こ奴、本当にスライムか?」

「余計な事を考えてる暇は――――っ!」


ふとスララが見上げると、スララの二倍程の体積がある巨大な種が、スララ目掛けて飛んで来る。反射的に飲み込もうとしたスララだったが、嫌な予感がして回避を選択する。


ドンッ――――


地面に着弾した途端、種は爆発し一定範囲内を黒焦げにする。


爆破草(ボンバー)の種っすか。危ない所だったっす」

「ちっ、内側から爆破してやろうと思ったのに。ま、()はいくらでもあるんだけど」


少女の左腕に蔓を巻き付け、大きな赤い花びらを持つ花が少女の左手に咲いている。その花が大きく脈打つと同時に、先程の爆弾種子が次々と打ち出される。


(ふ~ん、知恵は回るみたいっすね)


「確かにあんたの『捕食』は強力みたいだけど、だったら食われる前に爆破してやれば良いのよ。あ、『爆発する前に急いで食べる』ってのは無理だからね? 食われた途端爆発するようにしてあるから。さあ、行くわよ2人共!」

「おうよ! こんな奴はとっととぶっ倒して、アルトの首をぶった切ってやるぜ!」

「然り、スライムなぞに足踏みなどしておれん。決着を付けようぞ!」


そして、先史種(エンシェント)3人による猛攻が始まる。前衛の2人は、それぞれ武器に魔素と呪詛を纏わせ、肉薄して攻撃を仕掛けてくる。いくらスララに刀術の心得があっても、流石に2人同時に倒す事は出来ず膠着状態となる。とはいえ、1対1での技量はスララの方が上の為、相手が隙を晒せばすぐ認知する事が出来る。しかし隙を突こうとすると、茨や竹が突然生えて来たり、『吸収』への対策が施された種爆弾が飛んで来て妨害される。


「ハハハハハ! 防戦一方だなぁ!」

「さっきまでの威勢はどうしたのかしら?」

「油断するな。一気に詰めるぞ」

『おう!』


自分達の勝利を確信した先史種(エンシェント)達は、より慎重に、より確実にスララを仕留めるべく攻め手を激しくする。

――――スララが未だ全力の半分も出していないとも知らずに。


(流石に刀術だけだと厳しそうっすね。ま、そろそろ飽きて来たし、遊びは終わりっすね)


スララは刀化した自身の一部を吸収する。何事かと3人が身構えていると――――


「”赫竜星弾(ドラゴ・ミーティア)”」

『っ!?』


膨大な魔素を自身に収束させて、そのまま突撃する肉弾技を放つ。突然の戦闘スタイルの変化に反応できず、前衛の老人と青年は脇腹を抉られ、後衛の少女は腹部に風穴を空けられた。


「ガハッ! い、いったい何が…………!?」

「いっっっったぁ! あんにゃろう、侍じゃなかったの!?」


傷はすぐ再生するが、突然変化した攻撃によってダメージを負ったのは事実。青年と少女は戸惑いを隠せない。


「落ち着け、奴は剣士とも侍とも言ってはおらん。それより、奴はどこへ消えた?」

「っ! 言われてみりゃ」

「いないじゃんアイツ」

『…………どこ行った?』


3人が辺りを見回すも、どこにもスララの姿はない。


「さては逃げたか? へっ、何だよ。あんだけ俺達を手こずらせておいてトンズラ――――」

「「っ!!」」


青年の背後に空間の穴が作られ、そこから青年の頭目掛けて灼熱の波動が放たれる。


妖魔茨(デモン・ローズ)!」


間一髪、少女が茨を使って青年を引き寄せた事で難を逃れる。


「悪ぃ、助かった。けどよ、今の攻撃って…………」

「うむ、『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』だな。それも通常のそれとは、桁違いの威力だ。放ったのはあのスライムで間違いない」

「もう! 何がどうなってんの!?」


赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』は、レッドドラゴンの種族スキル。そして種族スキルは、(一部例外を除き)他種族が使えるようになる事はない。しかし今、スララは間違いなく『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』を使った。3人が驚くのも当然だった。


「”赫竜焦熱乱弾(ドラゴ・ガトリング)”」

『っ!』


今度は空から灼熱の種の雨が降り注ぐ。”種弾乱射(シード・ガトリング)” と同様の技だが、種には『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』が付与されており、威力は先程の比では無かった。


「ぐぁっ! 何だこの威力は!?」

「防ぎきれぬ…………!」

「ちっ! 爆破草(ボンバー)!」


少女が左手の爆破草(ボンバー)から、次々と種を打ち出す。灼熱の種に命中する度に爆弾種が爆発するが、爆発程度で竜の咆哮が止められる筈も無く、3人は焼かれ、貫かれ、ものの数秒でその場に倒れ伏す。


「お、おのれぇ…………! 影からコソコソと…………!」

「姿を見せろ! この卑怯者!」

「落ち着いて。戦場に卑怯なんて言葉は無いわよ。結果が全てなんだから」

「ぐっ…………!」

「でも本当、どこにいるか分かんないと、攻撃のしようが――――」

「はい、時間切れっす」

『っ!!』


その非情な宣言の直後、3人の周囲に結界が張られる。これは守る為の結界ではなく、閉じ込める為の結界。3人は、スララの張った結界内部に囚われたのだ。


「この技、相手が空間能力を使えると不発になっちまうっすけど、あんたら誰も空間系統のスキル持って無いみたいっすね。お陰で余裕で発動できたっす。ソイツに捕まったらもう抜け出せないっすよ。なんせそこはもう、オイラの腹の中みたいなもんっすからね」

『っ!!?』

「んじゃ、そういう事で―――― ”全てを奪う死の領域デッドエンド・フィールド”」


そして始まったのは、先史種(エンシェント)3人の吸収。胃袋に入った食物が如く、3人は溶かされていく。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「痛い! いだい! 体が溶けるぅ!!!」

「ぐ、あ゛ぁ゛…………!!!」


肉体は溶かされると同時に結界に吸収される。そして結界には、3人が持つ技能、記憶、そしてスキル(・・・)が刻まれていく。これこそが、ミラクルスライムの種族スキル『簒奪暴食』の力だ。


『簒奪暴食』はスライムの『補食』が進化したスキルで、食らった相手が持つ力の全てを、自分の物として簒奪する事が出来る。簒奪対象には魂も含まれており、それ故に魂に刻まれるスキルも簒奪の対象となる。相手が種族スキルを持っていれば、その肉体を食らう事で種族スキルの簒奪も可能となる、非常に強力かつ恐るべきスキルだ。


スララが達人並みの刀術を使えたのも、『赫竜息吹(ドラゴン・ブレス)』を使えるのも、過去にスララが食らった者達の中に、刀の達人やレッドドラゴンがいたからである。敵を食らえば食らう程強くなるのが、ミラクルスライムの最大の強みだ。


《『簒奪暴食』を付与した結界で3人まとめて吸収して、それが終わったらその結界を食らう。そして結界に蓄えられた力を入手。そういう魂胆か》

《流石アルトさん。その通りっす!》

《けど大丈夫か? アイツら多分――――》


アルトが何かを言い終わる前に、先史種(エンシェント)達が動き出す。


『人化解除!』


3人は人形態を解除し、巨大な樹木、或いは巨大な茨へと変化する。巨大化して結界を内側から破るつもりか、はたまた体積を増やして吸収を遅らせる魂胆か。どちらなのかは分からないが、いずれにせよ無意味だった。


「っ!? 空間が広がった!?」

「溶ける速度も変わらない! っていうか、寧ろ速まってない!?」

「空間の広さも溶解速度も、対象のデカさに応じて対応可能っす」


巨大化しても、結界が破られる事も無ければ、溶解が遅くなる事も無い。ただ坦々と、先史種(エンシェント)達の吸収が進んで行く。


「ヂグジョォ、ゴんな、とゴろで…………!」

「ぐじゅれる、あだじの、体が…………!」

「…………っ! ……………!」


5分も経たない内に、3人は魂も含めて完全に結界に吸収されてしまう。結界内部が空っぽになると、茂みの中からスララが姿を現した。


「良くやったな、スララ」

「お安い御用っす! おっと、その前に」


スララが術を発動し、結界をビー玉サイズの小さな玉に圧縮する。そして体の一部を触手のように伸ばして結界を絡めとり、自身に取り込んだ。


「これでまた、能力が増えたな」

「アルトさんの新兵器作りも捗るっすね!」

「それはオマケみたいなもんだ。さてと、後は残りの樹系魔族(トレント)草花魔族(プラント)をぶっ倒して―――ん?」


妙な悪寒を覚えたアルトは、帝都がある方角へチラリと視線を向ける。

すると――――アルトの初撃で更地と化していた土地に、新たな芽が育っている。『大自然の力って、凄い!』などと簡単に済ませられる話ではない。いくら大自然といえど、たった5分で新たな芽を出させるのは無理がある。明らかに、何者かによる術が発動していた。


「コイツら全部、樹系魔族(トレント)草花魔族(プラント)の幼体じゃねぇか」

「問題ないっす。すぐに食い尽くして――――」


突然、幼体達が急成長を始める。茎が伸び、花が咲き、葉が生い茂り、どんどん巨大化していく。そして――――つい先程まで幼体だった筈の樹系魔族(トレント)及び草花魔族(プラント)は、一気に成長して先史種(エンシェント)まで進化を遂げた。


「「――――は?」」


思わず、アルトとスララがそう呟いてしまう程、目の前の光景は衝撃的だった。確認できた幼体の数は、合わせて100体程。しかし、弱々しい幼体の面影はもうどこにもなく、全員立派な先史種(大陸の脅威)となっていた。理不尽以外の何物でも無い。


「…………標的、発見」

「ハイジョ、ハイジョ」


元が幼体だからなのか、自我は希薄だった。しかし、アルトとスララが敵である事は理解しているらしく、一斉に襲い掛かってくる。


「おいおいマジかよ。これも例の ”王の称号” とか言うやつの力なのか?」

「マジ勘弁っす。いくら何でもこの数は無茶っすよ」

「あぁ――――他の奴らならな」


そう言って、アルトは右足に ”虹炎” を纏わせると、右足で思い切り蹴りを放つ。蹴りの力は刃となって、”虹炎” と共に迫りくる先史種(エンシェント)の群れに向けて放たれる。自我が希薄なのもあって、先史種(エンシェント)達は一切回避行動を取らない。1人残らず真正面から虹色の刃に切られ、そのまま焼かれて塵も残らず消滅する。


「流石っす!」

「この程度――――って、嘘だろ、おい?」


改めて気配を探ると、最低でも2000を超える数の先史種(エンシェント)達が帝都から外へと進撃し始めている事が分かる。しかも先史種(エンシェント)は今も止め処なく生み出され続けており、他国への侵略が始まるのも時間の問題だった。


「何だよありゃ? 滅茶苦茶だぜ。先史種(エンシェント)って数万年生きてっから先史種(エンシェント)なんじゃねーのかよ? 何を量産してくれてんだ、あのヴェイルとか言う奴は」

「ヤバいどころの話じゃないっす。とにかく、ミカエルさんに相談っす!」

「いや無駄だ。腐っても先史種(エンシェント)はSS級だぞ? それが際限なく生まれてくるだけでも厄介なのに、それをいなしつつ大元の黒幕(ヴェイル)を倒すなんて出来ねぇよ (ソイツ(ヴェイル)も相当強そうだし)。ミカエルさんだってこの事態には気付いてんだろ。そろそろ撤退の命令が――――っ!?」


今度は上空から途轍もない気配を感じ、アルトとスララは空を見上げる。


「…………誰だ、アイツ?」


遥か上空、顔が確認できない程の高さに人影があった。何故ここにいるのか? こんな所で何をしているのか? 疑問は多々あったが、1つだけ分かった事がある。


――――あれには勝てない。2人がかりで挑んでも、確実に負ける。2人は魂の奥底で、そう理解した。


《全員、その場から離れないでください》


ミカエルから指示が下された直後、その人影の周りにステンドグラス模様の、虹色(・・)の光を発する剣が多数召喚される。


「な、何で」


そう、アルトが呟いた直後、光る剣達は一斉に帝都へ向かって飛んでいく。


――――ドオォォォォォォォォン!!!


轟音と共に帝都で爆発が起こり、それと同時に2000を超える先史種(エンシェント)の気配が1つ残らず消失した。


「「っ!!?」」


星すらも滅ぼせそうな軍勢が、たった1人の手によって、一撃でぜんめつする。アルトもスララも、目の前で起きている事が信じられなかった。


「何だアイツは? ミカエルさんの隠し玉か?」

「と言うか、ご本人じゃないっすか?」

《どちらも正解、と言えますね》

「「??」」


ミカエルが2人の疑問に答えるが、2人はいまいち彼女の言う事が理解できない。


《1つだけ、断言できる事が出来ます。もう我々に負けはありません。何故なら私の主様(相棒)は、最強ですから》


後手後手に回り逼迫していた戦場に、追い風が吹き始めた。

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