謎は謎を呼ぶ…のか?
深津が新聞の一部を指差した。
「このコラムに書かれた言葉はいかにも誰かの金言、って感じだろ。それで前後の号を調べたらさ、このコラムの言葉がどこから引用されたかわかったんだ。新聞のタイトルの横のこの囲み」
深津の言葉に皆が指差された部分に注目した。
そこには、「学校創立者宇手間吉次の言葉」という欄が設けられていた。
十二月号の言葉は「つまらないことには意外に大事なことが隠れている」だった。
深津がページをめくり、十一月号の言葉をみんなに見せた。
「手を動かせ、考えて止まるのならば」だった。
「で、このコラムの中の文章を見てさ。文頭の一文字をつなげると、う・て・ま・き・ち・じ、となる。創業者の名前が答えなんだ。『文字どおり、答えは文にある』ってそういうことか、と思ったよ。答えがわかってからみればなんてことないかもしれないけれど、俺は最初どうやって謎を解いたらいいのか全然わからなかった。それでそのアイデアをいただいて、今回の仕掛けを思いついたんだ」
深津は、「君たち、すごいね。簡単に解いちゃって」と続けた。
「でも、それと夢ちゃん先生の様子と、どう関係するわけ?」
一ノ瀬さんが首をかしげて聞いた。
「それは君たちで考えてもらわないと」
深津は素っ気なく答えると、残った紅茶を飲み干し、満足そうに「すごく美味しかったよ、ご馳走さん」と田崎にお礼を言って学校新聞の束に手を伸ばした。
深津が出て行った文芸部の部室には、しばらくの間紅茶の香りと少し重たい空気が漂っていた。
「さて、どうしようか」と一ノ瀬さんが全員に聞いた。
「ネタ出しのブレインストーミングに移るか、ってことですか」
牛田が聞いた。
「うーん、それもそうなんだけど。勇気」
そう言って一ノ瀬さんが僕を見た。
「何か引っかかっているみたい」
一ノ瀬さんの言葉に僕は頷いた。
「学校新聞の答えは確かに出たよね。でも、何か変なんだ。答えが出たことで、別の疑問が浮かんだ、って言っていい気がする」
「つまり?」
野中さんが首を傾げた。
「つまりね、『しばし答えの文章に想いを馳せてみてはいかがだろう』ってのはどういう意味なのか、ってこと」
みんなが顔を見合わせた。
「答えは、『宇手間吉次』なんだ。文章ではないよね」
「創業者の金言を心に刻もう、ってことじゃないんすか。師走だし、一年の締めくくりだし」
牛田が言った。そう言いながらも納得してない様子だ。
「確かにちょっと変ね」と一ノ瀬さんがつぶやいた。「文章の詰めが甘かったのか」
「何かもう一つ隠れたメッセージがあるのか」
僕の言葉にみんながもう一度顔を見合わせた。思ったよりもこの話は深いのかもしれない。




