そして次の謎
どういうことだろうか。何か隠された事情がある気がする。「懐かしい」ということは元ネタのことを夢ちゃん先生も知っているということだろうか。
元ネタについては、後で話すと深津は言っていたけど。
気がつくと、深津が僕の顔を見ていた。
「赤間、お前謎解きしたいだろ」
深津の言葉に田崎が期待感を隠すこともなく瞳を輝かせた。
一ノ瀬さんが、「どうします、時間がタイトになるけど。純文学志向の副部長としては一肌脱がないわけにはいかないかな」とまんざらではなさそうな表情をした。
夢ちゃん先生の解けない謎と、彼女の過去に隠された事情。どちらも僕の興味を引くものだった。僕は、腹を決めた。
「僕と田崎が中心になって、夢ちゃん先生の謎に取り組む。他の人は新年号の作品を優先する」と言って一ノ瀬さんの顔をうかがった。
「ってのはどうかな?」
「いいんじゃない? ネタに使えたら共同執筆にすれば」
一ノ瀬さんは満足そうに答えると、深津に向かって「で、元ネタっていうのはなんなの?」と聞いた。
深津が「埃がすごいかも」と言うので、皆で机の上の紅茶セットを片付けると、彼が脇の棚に置いてあった紙の束を机に置いた。分厚い紙の束から細かい埃が湧き上がった。
「学校新聞 一九九六ー二〇〇〇」と表紙の厚紙に書いてあった。
「昔の新聞を整理しながら見直していたらさ、こんなものを見つけたんだよ」
そう言いながら深津が付箋の貼ってあったところを開いた。一九九八年十二月号の新聞だった。
「このコラム」
深津が指をさしたのは、縦長にレイアウトされた月刊新聞の左下に設けられた「編集後記」というコラムだった。
そこにはこう書かれていた。
「年末を迎える諸氏に心よりの謎解きを送る。しばしの間、答えの文章に想いを馳せてみてはいかがだろう。
文字どおり、答えは文にある。
生み出すことは改善よりも無限に尊い。手を動かせ、考えて止まるのならば。真面目と真剣には違う。君の人生は君だけのもの。違うことは同じことより素晴らしい。時間だけは万人に平等に与えられ、そして平等に不足している
十夜」
それが記事だった。
「簡単ですね、今ならば」と田崎が控えめに言った言葉に、全員が頷いた。
深津が天を仰いで腕組みをした。
「俺は全然わからなかったんだけどなー」
「今ならば、わかるって意味。いきなりこれ見せられたらわからないかも」
野中さんがとりなすように言った。「深津くんはどうやって答えにたどり着いたの?」




