謎は解いたが…
僕たちは部室に戻ると今日の探索の結果を確認した。紙に書き出したその内容は次のようなものだった。
一組 メトロノーム
二組 空き箱
三組 イーゼル
四組 不明
五組 不明
六組 写真
七組 エプロン
八組 ストップウオッチ
「何かしら、これ」
一ノ瀬さんが困ったように言った。「興味深いけど、部活もやらなくてはいけないし」
あまり時間をかけられないということなのだろう。
「頭文字の拾い読みでしょうか」と田崎が控えめに発言した。
「め・あ・い・○・○・し・え・す。これじゃ意味不明だろ」
牛田が言った。
「それでは一文字ずらしでしょうか。
後ろ倒しなら、も・い・う・○・○・す・お・せ、
前倒しなら、み・ん・あ・○・○・さ・う・し」
田崎が控えめに切り返し、そして「ダメですね」とため息をついた。
僕たちはそれぞれに品物が書き出された紙を眺め、考えた。
僕は置かれていたものがすべて壊れていたり、不要なもののように見えたのが、気になっていた。それが何を意味するのか。
一ノ瀬さんが、時間を気にしながら「今日はこのくらいにして、部活に戻ろうよ」と言った。
田崎が「あの、もう少し」と控えめに言った。田崎はこういうトリックが好きなようだ。
僕は、まだ考えていた。壊れていたということは、物そのものは重要ではなくてその言葉、つまり名前が重要だと考えられた。
であれば、田崎のアプローチは正しいはず。とすると、二組の空き箱は現物ではダメだから空き箱を置いた、ということになるだろうか。サクソフォーン、リード、どちらだろう。
そう考えていて、閃いた。
「なるほど、そういう言い換えか」
僕の言葉に皆の注目が集まった。
「田崎の考え方であっていると思う」と始めると、田崎の表情が明るくなった。
「頭文字の拾い読みで、答えは、メリークリスマス、だな」
皆が首をかしげながら書き出した紙に見入った。
やがて田崎が顔を上げ、表情を明るくして、控えめに言った。
「写真ではなくてスナップショット、エプロンではなくて前掛け、ですね。そうすると、め・り・い・○・○・す・ま・す。赤間先輩の言うように、メリークリスマス、が一番ぴったりします」
翌日、五組の教室の前の用具入れの上に置かれた物の間に、「リトマス試験紙」の束が置かれていたのを見つけた。
わかってから見るといかにもわざとらしい。
四組には「く」で始まる何かが後ろのロッカーの廊下側に置いてあるのだろう。
僕が興味深そうにリトマス試験紙の束を手にとって眺めていると、後ろから声をかけられた。
「悪い、赤間。それそのまま置いといてくれや」
振り返ると、深津だった。隣の六組の「スナップショット」に写っていた、深津和彦。
何か関係があるのだろうかと考えていると、深津が僕の手からリトマス試験紙を取って、元あった場所に置きなおした。
「六組の写真も深津が仕込んだのか?」
僕の声に深津が振り返った。
「な、」と言ったきり、深津は口を開けたまま僕を見ている。
「各教室にいろんなものが置かれてたからさ、なんだろうって文芸部で考えてたんだよね。メリ」
「シー」と、深津が慌てて口に指を当てた。
「なんで文芸部が解いてんだよ」
「解いてる?」
確かに、メッセージではある。
「誰かに送ったメッセージなのか」と聞いたところで始業のチャイムが鳴った。
「あとで説明する」と深津が言った。




