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GDE  作者: ゆくえ知らず
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もうちょっとした謎

 

放課後に部室でその話をすると、一ノ瀬さんと野中さんが声を揃えて「私のクラスにも来た」と言った。

二人の話によると、一年生が二人で教室を訪れたが、どちらのクラスでも教室に入ることはなく、教室を覗いた途端にイーゼルとメトロノームに気がついて、「あったあった」とホッとした表情で言って去って行ったという。

 野中さんが「ね、これ何かあるよ」と目を輝かせた。一ノ瀬さんが笑みを浮かべて僕の顔を見た。

 二人の一年生が「何か」を探しているのは確かそうだった。

 僕は、牛田と田崎に彼らの教室に一年生は来たかと聞いた。

 二人は顔を見合わせて首を振った。

そうすると、探し物の現場は二年生の教室に限られると考えて良さそうだった。

ここは正直に自分の感想を述べるのが良いだろう。

「興味をそそられるね」

 僕がそう言うと、一ノ瀬さんの笑顔がさらに大きくなり、そして言った。

「今日のネタ出し会議は、教室捜査に変更ね」


二年生の教室は一組から八組まであり、すでに一組と三組に何があるかはわかっている。僕たちはそれ以外の教室を、まずざっと順番に見ることにした。

二組、四組、五組、六組と覗いていったが一見してわかるような変化はなかった。

しかし七組を覗いた時に教室後ろのロッカーの一番窓際の上に、何かがたたんで置いてあるのに気がついた。一ノ瀬さんが手にとって広げると赤いエプロンだった。随分古いようで色あせている。

「これかな」

 一ノ瀬さんが首をかしげた。個人の持ち物は基本的にロッカーに入れるから、外に出ているのは不自然といえば不自然だった。

意外と小さな目立たない変化を探さないといけないのかもしれない。

でも何のためにこんなものが置かれているのだろう?


 置かれているものは小さいものかもしれない、そういう目で八組を探索すると、教室の廊下側の一番後ろの壁に古いアナログのストップウオッチが掛けてあるのに気がついた。手にとって操作してみたが壊れていて動かなかった。

「もう一度最初から見直してみよう」

 僕には、いくつか確かめたいことがあった。戻って確認するとやはり、三組の教室の後ろに置いてあるイーゼルはカンバスを置く横板が割れていた。一組のメトロノームには重りがなく、ネジも壊れていた。

壊れていることに意味があるのだろうか。

もしくは万が一無くなってしまっても困らないものが何かの象徴としておかれているのだろうか。

今の段階ではわからなかった。

 僕たちは、二組をもう一度捜索することにした。

 教室の作りはどの教室も一緒だ。教室の前方に黒板、後ろには生徒のロッカー。黒板に向かって右側の壁が内廊下に面していて前と後ろの二箇所に出入り口がある。黒板に向かって左側は建物の外に面していて一面ガラス窓になっている。

僕はみんなに教室の前方、黒板から窓までの周辺を重点的に調べてもらうようお願いした。

黒板に向かって左手に黒板に並ぶスペースにはホワイドボードとコルクボードが縦に並び、その下にはフックがあって配布物などがかかっている。

そのコルクボードに奇妙なものがピン留めされていた。

手のひらに収まるくらいの細長い紙の箱だった。表面には楽器の絵が描かれている。

一組にあったメトロノームは教室前方右側の入り口横の小物置き場の上に、イーゼルは三組の教室後ろの窓際に、赤いエプロンは三組と同じ場所に、ストップウオッチは八組の教室後方の廊下側の壁に、それぞれあった。

つまり、教室の四隅のそれぞれに廊下側前方から反時計回りに物を置いてあると推測できた。だから二組に仕込まれた物が見つかるならばこの場所のはずだと、僕は思ったのだ。

「空き箱だ」と僕がつぶやくと「サックスのリードの空き箱ね」と一ノ瀬さんが付け加えた。

 そして、クエスチョンマークを顔に浮かべた僕のために説明をしてくれた。

「サクソフォーンくらい聞いたことあるでしょ。吹奏楽とかジャズとかで使われる楽器、この絵の楽器」

 そう言って空き箱を指差した。藍色の細長い箱の表面にはS字型の楽器が描かれている。

「リードっていうのは、楽器を演奏するときに口でくわえる場所に挟む薄い板みたいなもの。震えて音を出すのよ」

 一ノ瀬さんは博学だ。なるほど演奏する姿をテレビか何かで見たことがある気がする。でも口にくわえていたら、すぐにダメになって買い替えないといけないのでは? 楽器を演奏するというのもお金がかかりそうだ、と変な感想を抱いた。

 四組と五組では探すべき場所に雑多な物が置いてあり、捜索対象を特定できなかった。

僕たちは早々に諦めて六組に移り、二組と同様に教室左手の前方をチェックした。牛田が、黒板左手の掲示板のコルクボードに刺されたメモ類をしばらくチェックした後で「これかな」とつぶやいた。

 文芸部員が集まり、牛田が指差す先を見た。そこにピンで止められていたのは、写真だった。

何気ない教室の日常を切り取った写真。

しかし写っているのは、僕と同じクラスの深津和彦だった。ここは六組だ、なぜ五組の深津が写った写真がここにあるのだろうか。


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