表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GDE  作者: ゆくえ知らず
PR
17/19

GDE

 

 夢ちゃん先生が、「何かしら、これ」と助けを求めるような表情で僕たちを見た。

 一ノ瀬さんが「Q.E.D、証明終了、ならこれで終わり、ということでしょうけど。そうでなくてGDE?」と首をかしげた。「文字ずらしとか、読み替えとかできないのかしら」

「前倒しならFCD、後ろならHEF、ですけれど、意味が通じないです。単語の頭文字を並べたものでしょうか。DとEの間が少し広いのは何か意味があるのかしら」と、田崎ゆみこも考え込んでいる。

 この手紙は、「冬也」さんから夢ちゃん先生への個人的なメッセージなのだから、夢ちゃん先生が見たらわかる、そういう文章のはずなのだ。コラムが解読キーになっていたり、読み替えが必要だったり、そういう複雑なものではないはずだ、と思った。 

 僕は、手紙が入っていた缶を見た。あるとすれば缶の模様だろうかと思ったが、サビに覆われた表面はどのような模様だったのか、何か描かれていたのかどうかもわからなかった。

 夢ちゃん先生は、便箋を広げてテーブルに置いた。シミだらけになってしまっていたが、上質の便箋のようで紙はまだしっかりしていた。きっと「冬也」さんが気合を入れて探してきたのだろう。横書き用に罫線が入った便箋には左側に渦巻き模様のような透かしが入っていた。

 当時の二人が記憶を共有している出来事や言葉で、「GDE」につながるものがあるだろうか。僕は昨晩ネットで調べた一九九八年の出来事を思い出してみたが、思い当たるものはなかった。

「これ、ト音記号じゃなくて?」

 野中さんが便箋を覗き込んで言った。言われてみると、和風の渦巻きだと思っていた透かし模様は、ト音記号の右半分のようにも見えた。

「私が、吹奏楽部だったから」

 夢ちゃん先生がつぶやいた。夢ちゃん先生が吹奏楽部だったから、音楽に関係のある便箋を使った、ということのようだった。

「音の名前かな」と一ノ瀬さんが言った。「Gはソで、Dはレ、Eはミ、になるわね」

「でも『それみ』では言葉にならないです。前倒しで『せらま』も、後ろ倒しでも『たろむ』」と田崎が小声で言った。

「コードじゃないかしら。Gコード、Dコード、Eコード。それぞれのコードの音の名前をつなげるとか」

 野中さんが考えながら、「ソシレ、レファ#」と唱え始めたところで止め、「シャープとか入る時点で違うわ」とため息をついた。皆がしばし考え込んで、沈黙が部室を満たした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ